獅子風蓮のつぶやきブログ

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佐藤優『日米開戦の真実』を読む(その33)

2024-12-15 01:33:44 | 佐藤優

創価学会の「内在的論理」を理解するためといって、創価学会側の文献のみを読み込み、創価学会べったりの論文を多数発表する佐藤優氏ですが、彼を批判するためには、それこそ彼の「内在的論理」を理解しなくてはならないと私は考えます。

というわけで、こんな本を読んでみました。

佐藤優/大川周明「日米開戦の真実-大川周明著『米英東亜侵略史』を読み解く」


今回は「文庫版あとがき」を引用したいと思います。

日米開戦の真実
――大川周明著『米英東亜侵略史』を読み解く

■文庫版あとがき


文庫版 あとがき   佐藤優

本書は、私が職業作家になる過程でとても大きな意味をもった本である。
私のデビュー作は、2005年3月に新潮社から上梓した『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』(その後、新潮文庫)だった。2002年5月14日、私は当時吹き荒れていた鈴木宗男バッシングの嵐に呑まれ、東京地方検察庁特別捜査部によって逮捕、起訴され、512日間の独房生活を送ることになった。当初、刑事被告人が書いた本が日本社会に受け入れられることは絶対にないと私は考えていた。しかし、私が見た鈴木宗男事件の真実について、私を信頼して北方領土交渉に取り組んだ外務省の同僚や後輩に手記を書き残しておくべきと思った。幸い、『国家の罠』は世間に受け入れられ、当時、法曹関係者の業界用語でしかなかった「国策捜査」が市民権を得るようになった。
『国家の罠』の刊行から5年経って、検察の正義が揺らぎ始めている。障害者団体向け割引郵便料金を巡る不正事件に関して大阪地方検察庁特別捜査部の主任検事が証拠を改竄した事実が明らかになった。この主任検事は逮捕された。さらにこの主任検事が改竄を行ったときの上司だった特捜部長と副部長も犯人隠避の容疑で逮捕、起訴された。そしてこの事件の責任をとって検事総長が辞任するという前代未聞の事態に発展した。

検察官出身の弁護士や司法記者から、「佐藤さんの『国家の罠』が今回の事態をもたらす発端になったんです」という感想をよく言われる。それに対して私はこう答えることにしている。
「そういう話をときどき聞くのですがどうもピンとこないのです。『国家の罠』を注意深く読んでいただけばわかると思いますが、僕は国策捜査について、善いとか悪いとかいう判断を一切していません。時代の転換点に国策捜査は起きるという認識を述べただけです。今回逮捕された大阪特捜の大坪弘道前部長、佐賀元明元副部長も国策捜査の犠牲になったと見ています。僕は大坪さん、佐賀さんが犯人隠避という犯罪を犯したとは思っていません。検察庁という官僚組織が生き残るために大坪さん、佐賀さんを国策捜査の生け贄に差し出したのです。他の人には見えないかも知れませんが、僕にはそれが見えるのです。そもそも僕が国策捜査を発見したのではありません。ユング心理学の言葉を用いるならば、特捜検察官の集合的無意識となっている国策捜査を言語化しただけです。別の言い方をすれば、確実に存在するのであるが、見えないものを見えるようにしただけです。僕は検察庁は公益を擁護するために重要な機関と思っています。特捜検察も断固残すべきと考えます。特捜検察を廃止しても、今度は警察が国策捜査を行うことになるだけです。検察が行政から一定の距離をもっているのに対して、警察は時の内閣の指示に従う純粋な行政機関です。それだから今よりももっと恣意的に政治的思惑の事件が作られることになる。戦前、戦中の特高警察の再来になります。それだから僕は特捜擁護の論陣を張っているのです」

実は、私は逮捕直後から大阪拘置所の独房に勾留されている大坪、佐賀両氏と文通をしている。2人とも人格的に優れた人で、淡々と無罪主張を貫いている。もちろん検察組織の不条理な対応に対しては憤り、悲しんでいる。しかし、それ故に検察憎しという感情的対応をしているのではない。2人は想定外の状況下で「なぜこのようなことが起きたのか」ということを自分の頭で考え、品格のある闘いを展開しようとしている。

このあとがきを書いている2011年1月3日時点で、大坪、佐賀両氏は大阪拘置所の暖房のないかび臭い独房に収容されている。この2人にも、かつて大川周明が見たのと同じ国家の暴力性が見えていると思う。この暴力性が見えると、だいたいの人は反国家、反体制という気分を持つようになる。しかし、大川はそうならなかった。この大川の国家観から私は多くを学んだ。レーニンは「監獄は革命のための学校」と述べたが、大川にとって「監獄は国家について考えるための学校」だったのである。その意味で、私は大川の同窓生だ。そして、この同窓生名簿には、村上正邦氏(元労働大臣)、鈴木宗男氏(前衆議院議員、新党大地代表。現在、喜連川社会復帰促進センター[民営刑務所]に収監)、石川知裕衆議院議員などが連なっている。大阪拘置所に「入学」した大坪弘道、佐賀元明両氏も、近く私たちの仲間になると思う。私たちは、日本国家を過剰なほどに愛したが故に「国家の罠」にとらわれてしまったのだ。

(つづく)


解説
大坪、佐賀両氏は大阪拘置所の暖房のないかび臭い独房に収容されている。この2人にも、かつて大川周明が見たのと同じ国家の暴力性が見えていると思う。この暴力性が見えると、だいたいの人は反国家、反体制という気分を持つようになる。しかし、大川はそうならなかった。この大川の国家観から私は多くを学んだ。レーニンは「監獄は革命のための学校」と述べたが、大川にとって「監獄は国家について考えるための学校」だったのである。その意味で、私は大川の同窓生だ。

池田大作氏の場合は大阪で拘置所に収容されたとき、どのような風景が見えていたのだろうか。
そのことから氏は反国家、反体制という気分を持つようになったのだろうか。
むしろ、権力の恐ろしさが身に染みて、この屈辱を二度と味わうことのないように、創価学会員の中から検事・裁判官・弁護士などの法曹関係者を多く生み出そうと決意したのだろう。
今後、このへんのことも検証してみたいと思います。

 

獅子風蓮