獅子風蓮のつぶやきブログ

日記風に、日々感じたこと、思ったことを不定期につぶやいていきます。

『居場所を探して』を読む その46

2024-12-19 01:46:08 | 犯罪、社会、その他のできごと

友岡さんが次の本を紹介していました。

『居場所を探して-累犯障害者たち』(長崎新聞社、2012.11)

出所しても居場所がなく犯罪を繰り返す累犯障害者たち。彼らを福祉の手で更生させようと活動する社会福祉事業施設の協力で、現状と解決の道筋を探った。日本新聞協会賞を受賞した長崎新聞の長期連載をまとめた一冊。

さっそく図書館で借りて読んでみました。

一部、引用します。

□第1章 居場所を探して―累犯障害者たち
■第2章 変わる
 □変わる刑事司法と福祉~南高愛隣会の挑戦をめぐって
 ■山本譲司さんインタビュー
□おわりに 


第2章 変わる

山本譲司さんインタビュー

――ここ数年で累犯障害者に対する社会の支援が進んだように映る。『獄窓記』でこの問題を初めて社会に問うた者として、この変化をどのように見ているのか。

この問題はまだ緒に就いたばかりだ。とはいえ隔世の感がある。2003年の12月に『獄窓記』を出版したが、当時は、福祉関係者や障害者団体から猛烈な抗議を受けた。「被害者になる障害者のことならいざ知らず、加害者となる障害者のことを取り上げるとは何事か」という批判だ。さらには06年、『累犯障害者』を出版したときには、「とにかく、その題名がけしからん」「障害者は罪を犯しやすいと思われてしまう」など、まさに非難の嵐だった。「障害者への誤解や偏見を助長しかねない人権問題であり、あなたには福祉を語る資格はない」という言葉すら突き付けられた。
しかし、それでもこの問題を取り上げることをやめなかった。その原点は、言うまでもなく自分自身の受刑経験だ。01年から02年までの服役期間、私は多くの障害者の人と寝食をともにする中で、日々反省させられた。議員在職中、「障害者福祉の問題についてはライフワークとして取り組んでいる」と自負していたものの、本当のところ、福祉の現実がまったく見えていなかったことを思い知らされた。
彼ら障害のある受刑者は、福祉が機能していれば、あるいはきちんとした居場所があれば、刑事司法の世話になる人ではなかった。多くのケースは軽微な罪であるだけに、福祉関係者や家族としっかりとつながっていることが分かれば、たぶん警察も、彼らを立件しようとすら思わなかったのではないか。そんな人ばかりだった。
刑事司法で裁かれる障害者となると、どうしてもモンスター的なイメージがつきまとうが、決してそうではない。彼らの場合は、矯正施設が居場所をつくってあげないとまた同じ事を繰り返す、もっと言えば、「このまま社会にいても食べていけない、生きていけない」という、そんな生存権に関わる問題を抱えている人がほとんどだ。 本人たちからすれば、刑務所という場所への「避難」である。社会にいたときは厄介者扱いされ、虐待やネグレクトを受け、「変わり者」「生産性がない」などと言われ差別され続けてきた。そういう人がたくさん刑務所に保護されている。それが塀の中の実態だ。
私自身、服役するときは、刑務所の中にはどんな悪党がいるのかと戦々恐々としていたが、実際は障害のある人であふれていた。刑務所が福祉の代替施設になってしまっていたのだ。『獄窓記』や『累犯障害者』を出版するたび、福祉関係者から「まずは被害者になる障害者のことを書きなさい」と言われたが、もしかしたら彼ら塀の中の障害者は、「社会に居場所がないがゆえに受刑者に成り果ててしまった」という意味で、世の中における最大の被害者かもしれない。社会からもっとも排除される人たちだ。
そこで、ここに焦点を当てて考えれば、福祉のさまざまな問題点が見えてくるのではないかと思い、この問題を訴え始めた。すると、すぐに田島良昭さんという福祉のオーソリティーが現れ、この問題を理解してもらい、動き出してくれた。04年の春ごろのことだ。それでも福祉全体としては、厚労省も含め、しばらくは様子見といった状況だった。一方で同じ行政機関でも、法務省は、もっと切実な問題としてとらえていたように思う。「果たして、こういう人たちを刑務所が抱え込むのがいいことなのか」と。
そうした中、05年に田島さんが呼び掛け人となり、私もメンバーになって私的勉強会「触法・虞犯障害者の法的整備のあり方検討会」を発足させた。田島さんが厚労省に、私が法務省に働き掛けた結果、それぞれの役所の担当者も加わってもらうことになり、約1年間にわたり勉強会を重ねた。過去こうした問題について、厚労省と法務省との間にまったく情報の共有がなかったらしく、厚労省からすれば、驚きの連続のようだった。そして06年、この勉強会が「罪を犯した障がい者の地域生活支援に関する研究」として厚労省の正式な研究班となる。この研究班が、「地域生活定着支援センター」の設立をはじめ、国に対しさまざまな提案をしてきた。
その後の動きは、思っていたよりも速かった。ただしスピードが速い分、問題点がたくさんあることも事実だ。地域生活定着支援センターにしても、矯正施設や更生保護施設におけるソーシャルワーカーの働きについても、多くの課題を抱えていると思う。
しかしいずれもスタートしたばかりなので、それも仕方ない。今後よりよい施策となるために、今は失敗を恐れず果敢な取り組みをしてほしい。

(つづく)


解説

私は別のところ(獅子風蓮の青空ブログ)で、山本譲司氏の『獄窓記』の読書感想文の連載をしています。

長い前置きが終わってやっと「塀の中の掃き溜め」と言われる累犯障害者の収容されている寮内工場の章が始まりました。

併せてお読みくだされば幸いです。

 

獅子風蓮