獅子風蓮のつぶやきブログ

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乙骨正生『怪死―東村山女性市議転落死事件』Ⅴ章 その2

2023-03-21 01:19:40 | 東村山女性市議転落死事件

乙骨正生『怪死―東村山女性市議転落死事件』(教育史料出版会1996年5月)
より、引用しました。
できるだけ多くの人に読んでいただく価値がある本だと思いますので、本の内容を忠実に再現しています。
なお、漢数字などは読みやすいように算用数字に直しました。

なお、乙骨さんにはメールで著書を引用している件をご報告したところ、快諾していただきました。
ありがとうございます。

(目次)
□まえがき
□Ⅰ章 怪死のミステリー
□Ⅱ章 疑惑への道のり
□Ⅲ章 対立の構図
□Ⅳ章 たたかいの軌跡
■Ⅴ章 真相を明らかにすることは民主主義を守ること
□あとがき


◆怒りの記者会見
だが、12月22日に発表された捜査結果は、事件発生直後の9月2日時点で東村山署の千葉副署長が、報道陣に説明した内容とほぼ同一のものであり、「犯罪性」の有無を証明するよりも、東村山署の捜査のずさんさを証明するような代物なのである。
というのも、第一には、今回の捜査結果には「犯罪性がない」ことを証明する新事実がなにも示されていない。そして、第二には、9月2日の時点で「事件性は薄い。自殺と見られる」と説明していた千葉副署長の示した根拠に対し、関係者およびマスコミがした疑問になにひとつ答えていないからである。
9月2日の記者会見の席上、「事件性は薄い。自殺と見られる」と発表した千葉副署長は、その根拠として「垂直に落ちている」「手すりに指の跡がある」「争った跡がない」「不審者の目撃情報がない」などをあげていた。しかし、そうした発表に対し、マスコミの間から、「なぜ、靴がないのか」「指紋はあったのか」「裸足で歩いたにもかかわらず、なぜ、臭跡が出ないのか」、さらには、朝木さんの最後の電話の声が、「大韓航空機撃墜事件の機長が、ミサイルを打ち込まれたときと同じ、極度の緊張状態を示す周波数」であることなど、多くの疑問が提示されたのだった。
「事件性なし」と判断した東村山署には、こうした疑問に答えて「他殺説」を否定するだけの新事実を示す義務と責任がある。にもかかわらず今回の発表ではこうした点についてはなにも触れていない。今回の捜査結果は、9月2日の時点で明らかにした「事件性は薄い。自殺と見られる」との判断の根拠を、ただオウムのようにくり返しただけの 、説得力のまるでないお粗末な内容なのである。
それだけに、この警察の捜査結果に遺族や関係者は「とうてい納得できない」と猛反発。捜査結果の発表から一夜明けた23日、直子さんと矢野氏は記者会見を開き東村山署の対応を次のように批判した。
「事件発生から3ヶ月余、警察の対応を見守っていましたが、警察は、連れ去られた可能性のある自宅の捜査も行わなかったように、なんら満足な捜査をしていません。捜査をしなかったばかりか、第一発見者に、警察のシナリオに沿った口裏合わせや、「マスコミや遺族に接触しないように」と口止め工作まで行っています。それでいて捜査結果として「犯罪がなく自殺」だという。とても納得できるものではありません」(直子さん)
「まともな捜査もしないで、自殺と結論づけるとは言語道断。しかも自殺の根拠となっている理由は、事件発生当時、警察が示していた見解となんら変わりがなく、国民世論やマスコミの疑問になにひとつ答えていない。はじめに自殺ありきのシナリオであり、まるで靴にあわせて足を削るがごとき内容だ」(矢野氏)
事件後、直子さんは知人の紹介で、第一発見者のアルバイト店員と接触しているが、 その際、アルバイト店員は、警察が自らの捜査結果と符合するよう供述を誘導したこと、また、遺族やマスコミと接触しないよう強要したことを聞いたという。
実際、私をはじめとするマスコミ陣も、第一発見者のアルバイト店員および第二発見者である「モスバーガー」店長に直接取材を試みたが、いずれも拒否され、第二発見者の店長に対する取材は、「モスバーガー」オーナーが取り次ぐという形で行われた。アルバイト店員は接触したマスコミ関係者に対し、取材に応じられない理由を「警察になにもいうなといわれていますので」と答えており、マスコミの接触に極度に脅えていた。遺体を朝木さんだと確認した東村山署の須田係長は、防衛医大病院の滝野医師に対し、マスコミの取材に応じないよう口止めしているが、警察は、第一発見者、第二発見者にも、同様に口止めをしているようなのである。


◆警察発表への反論
23日の記者会見の席上、直子さんおよび矢野氏は、東村山署が「事件性はない」とした根拠についても逐条的に、次のように反論している。

「●警察発表【結論】
『他人が介在した状況はなく、犯罪性はない』
○朝木遺族側・反論
全く新事実もなく、決定的な根拠もないまま、9月の事件発生直後と全く同様で、無理に『自殺説』の理由付けを試みようとした稚拙な推理以下でしかない。
初動捜査でミスをおかし、カギの指紋さえ保全しないで、朝木議員の靴さえ発見できす(ママ)、事件に蓋をしようとする意図がありありで、全国の市民、国会や報道機関が指摘した多くの疑問や疑惑に対して何の説得力もない結論に過ぎず、疑惑を持たれている創価学会に配慮を加えたかのような印象さえあり、警察自体のあり方に疑問を感じる。
●警察発表 【動機】
『万引き事件で地検に出頭を求められたのを苦に自殺したのではないか』
○朝木道族側・反論
 ①遺書がなく、動機もないから、他殺。
 ②8月半ばに支持者に、万引きデッチ上げの真相糾明に断固闘うという残暑見舞いを出していること。
 ③地検には4月からの一連の嫌がらせ事件について事情を話すため同僚の矢野議員と9月上旬に出向くことが8月初めには弁護士と地検の間で、決まっていた。
以上から、『万引きを苦にして自殺』説は、警察作シナリオにすぎない。
●警察発表 【自殺説の根拠】
1、ビル周辺の聞き込みによると、事件発生当時、『キャー』という悲鳴と落ちる音以外に、争ったり、助けを求めたりする声がなく、第三者が介在したといえず、他殺ではない。
○遺族側の反論・他殺の根拠
 ①覚悟を決めて自殺しようとする者が、『キャー』という悲鳴はあげない。警察は、事件直後の初動捜査では、朝木議員があげた『キャー』という悲鳴をマンション住人が聞いた事実さえ無視しており、報道陣から指摘されて初めて事情聴取するという捜査方法であって、事件当初から自殺説以外の他殺につながる事実は全て捨象した。従って、他殺の結論は出てくる余地がない。
 ②催眠ガスなどで抵抗を奪われるなどして、意識が朦朧としている場合は『キャー』という悲鳴をあげるのが精一杯ということもあり、事件現場まで正常な状態で拉致されたと考える方が不自然。
 ③事務所の鍵が、翌日極めて不自然な形で発見された他、靴がなお発見されておらず第三者が事件に介在している以外にない事実があり他殺である。
●警察発表
2、①防護壁(手すり)は0・9メートルから1・3メートルで、身長160センチメートルの朝木議員には越えられる。
 ②手のこすった跡が、防護壁の階段側に向いてついており、突き落とされた痕跡はない。
○遺族側の反論
 ①指紋が出ていない以上、朝木議員の指の跡がどうか不明。
 ②乗り越えられるかどうかが問題ではなく、仮に、乗り越えられるとしても、手形や指の跡が全くないのは不自然。警察の主張は理由がなく他殺は否定できない。
 ③仮に、防護壁の階段側に向いてついていた手のこすった跡が、朝木議員のものだとしても、朦朧とした中で落とされながらも、朝木議員が必死に助かろうとした証拠であるという見方もできる。
●警察発表
3、朝木議員は、裸足で歩いて現場の5階に昇った。根拠はストッキングが破れていたからだ。
○遺族側の反論
 ①現場付近または自宅付近から現場までの道路で、通行人や顔見知りの住む地域で『ハダシで歩いている朝木議員』を見たという目撃証言がない。この事実は、自由を奪われて箱詰めにされ外部から見えない状態で殺害現場まで運ばれた以外にない。
 ②朝木議員が『ハダシで歩いている』状態は、すでに異常なノイローゼ状態というほかなく、 そのような事態を想定すること自体が常軌を逸している。
 ③ストッキングは、すでに現場で血糊で汚れており、防衛医大病院での救急救命措置の際に、体からハサミなどで剥されており、破れていたかどうか不明。
 ④警察は当初、『朝木議員の足の裏が汚れていた』と発表したが、その事実もなかった、これと同様の論理」

以下、警察が「犯罪性なし」と断定する根拠としてあげた4から7についても1から3同様、具体的に反論しており、その6と7には次のようにある。

「●警察発表
6、①争った時にできる『破れ』や『ボタンが飛んでいる』など衣服に争った跡がない。
 ②体に皮膚の剥離など、争った時にできる傷がなく、争った跡がないなどから、他殺ではない。
○遺族側反論
 ①睡眠ガス等で、体の自由を奪われていた可能性が高く、争うこと自体が不可能な状態だったと考えられる。
 ②ズボンには通常の方法で歩いた場合につくはずのない傷(TBS『ニュースの森』指摘)がついており、拉致された証拠と考えられるが、警察は一切捜査の対象にはしていない。
 ③録音された最後の電話の音声には、生命を奪われる危険を前にした異常な周波数変化が見られるが、全く警察は無視している。
 ④NTT発信記録から拉致現場は諏訪町の自宅と考えられるが、警察は電話を事務所に最後にかけた自宅の室内など拉致現場の捜査を、一切していない。
以上から、捜査は全く不十分で、他殺は否定できない。
●警察発表
7、事件の現場で、事件の前後には、不審な人物や不審な車両の目撃証言がない。
○遺族側反論
 ①事件発生頃、現場直近の西側住民が、現場駐車場に不審車両と不審者二、三人がいてボソボソ話しているのを目撃した事実を、聞き込みにきた刑事に伝えたが、無視しており、警察発表は事実に反する。
 ②事件の現場で、事件の直後には、不審な人物や不審な車両の目撃証言がないということは、朝木議員が『ハダシ』で歩いているという極めて異常な状態を、午後9時から10時の間に、路上で見かけた市民が一人もいないことを示している。目撃証言がない以上、警察の『ハダシ』で歩いて5階まであがり自殺したとの『推理』には根拠がない」
記者会見の席上、矢野氏は、東村山署の捜査結果の発表を「はじめに自殺ありきのシナリオであり、まるで靴にあわせて足を削るがごとき内容だ」と批判しているが、私も同感である。
おそらく東村山署は、事件発生直後の9月2日時点で、朝木さんの死を自殺として処理したかったのだ。鶴見刑事課長が、遺族に対し、「これは自殺なんだ」とくり返し主張したこと、また、解剖を行おうとしなかった事実がそのことを端的に物語っている。だが、それでは、他殺を主張し、多くの疑問点を指摘する遺族、関係者、マスコミから激しい反発や批判を浴びることが予想される。そこで、「捜査をする」との発言で時間稼ぎをし、自殺説に疑問を呈する“ウルサイ”週刊誌が、年末年始の休みに入って後追いができなくなるタイミングを狙って、幕引きを図ったというのが、今回の捜査結果発表の背景とも考えられる。

 


解説
矢野氏は、東村山署の捜査結果の発表を「はじめに自殺ありきのシナリオであり、まるで靴にあわせて足を削るがごとき内容だ」と批判しているが、私も同感である。

とありますが、私も同感です。
東村山署は、なぜか事件発生直後から朝木さんの死を自殺として処理したかったようです。

獅子風蓮



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