かつて、三鷹駅南口に『江ぐち』という名のラーメン店があった。
昭和24年の創業で、店内のカウンター席は、いつも大勢の客で賑わっていた。
こちらは、平成14年(2002年)発行のラーメン本に載っていた写真。
見た目はシンプルな醤油ラーメンという印象だろうが、「ラーメン400円」は、当時でもかなり安い部類に入る。
私が初めて訪問したのは、この本を買う前だから、たぶん今から20年以上前。
偶然だろうが、店員さんもお客さんもみなさん高齢の方で、自分を若造のヒヨッコに感じた記憶がある。
こちらは、麺をひと玉ずつ茹でられる、取っ手付きの網(テボ)を使わず、大きなザルでいっぺんに調理しており、
普通のラーメンを頼んだら、別の客が注文したワンタンメンのワンタンが混ざっていて、妙に得した気分になった。
江ぐちには熱狂的なファンが大勢いて、その内のひとりが、「孤独のグルメ」の原作者・久住昌之さん。
常連客だった久住さんは、お店の人たちを登場人物にした、写真の書籍を発表するほど江ぐちを愛していた。
※画像はamazonより拝借
お店は繁盛していたが、店主の江口さんがお亡くなりになったことで、平成22年の1月にやむなく閉店。
しかし、江口さんの弟子で、久住さん以上に江ぐちの大ファンだった橋本さんが、お店を引き継ぐことを決意。
数ヶ月後、『中華そば みたか』という店名で、再出発を果たすこととなった。
ネットやマスコミの評判は、「名店復活」「以前と変わらぬ味」と、おおむね好評のようだった。
私自身は、あまり三鷹駅で下車することがなく、なかなか行く機会に恵まれなかったのだが、
最近は、以前拙ブログで紹介した、天ぷらのウマい店『すーさんち』など、三鷹での飲み歩きも増えており、
先日の夕刻、ようやく待望の「みたか初訪問」を果たすこととなった。
ビルの階段を下りてお店の扉を開けると、「いらっしゃいませ!」と気持ちのいい挨拶で迎えられた。
店員は男性ふたりと女性ひとり。みなさん若く、そして勤務態度が素晴らしい!
自然な笑顔、快活な受け答え、キビキビとした動き、そして付かず離れずなお客さんとの絶妙な距離感。
これまでに私が入ったラーメン店では、間違いなく三本指に入る好接客だ。
店員が3人いれば、ひとりくらい怠惰なバカが混ざっていたり(立川の店では、3人ともバカの場合あり)、
調理にのみ専念し、客に注意を払わないヤツもいたりするのに、彼らは全員、調理も接客もしっかりこなす。
失礼ながら、先代『江ぐち』の接客は、さほどいい印象がなかったので(苦笑)、これは嬉しい誤算だった。
さて、肝心のラーメンの味だが、隣のおっさん客が食べているのをのぞいたら、見た目は以前と変わってなかった。
基本の「ラーメン」の価格は450円と、閉店時の江ぐちと同額で、8年たってもその値段をキープしていたが、
今年1月から、麺類を50円値上げしたそうだ。それでも、個人店でラーメン1杯500円は破格だ。
そもそも、消費税が8%になったときも、価格を維持して頑張ってきたのだから、50円くらいは上げてもいいでしょ。
なお、以降で紹介したラーメンは、私が食べたときの価格(=現在より50円安)なので、お間違えのないよう。
この日の私の注文は、「ワンタンメン」600円に「卵」50円をトッピング。
数人分のオーダーを受け、大釜で大量の麺を茹で終わったあと、同じ釜で私のワンタンを茹で始めた。
これなら、ワンタンが他人の麺に混ざる=横取りされる心配がなくていいぞ(←セコイよ)。
ワンタンと卵が盛り付けられ、店員3名からの「お待たせしました!」の掛け声とともに、丼が運ばれてきた。
ナルト、メンマ、ちっちゃいチャーシュー、そしてたっぷりのワンタンと半熟玉子。これで650円は安いでしょ。
「卵」は味玉でなく、ポンとお湯に落として茹でたもの。家庭で作るラーメンの具みたいで、妙に気に入った。
スープを吸って柔らかくなったワンタンは、12個くらい入っていたはず。中の具はかなり少ないが(笑)。
そして、こちらのラーメンの最大の特徴は、自家製の麺。
ラーメンの麺は黄色が主流だが、こちらの麺は写真のように、蕎麦粉を混ぜたような茶色をしており、
やや太めで四角く、歯応えがある。風味も独特で、こちらのお店でしか味わえない麺だ。
醤油味のスープも、よくあるオールドファッションな塩分きついタイプかと思いきや、そんなにしょっぱくない。
先代・江ぐちの味と、全然変わらないよ!
会計後、店主の橋本さんが顔を出した。店主不在でも、ラーメンの味や部下の態度が変わらないのには感動した。
数日後、シラフ&空腹で再訪。
江ぐち時代から常連さんがやっていたらしい、「ビールとつまみ、最後にラーメン」をやってみることに。
まずは「ビール中」500円と「焼豚(チャーシュー)」400円を注文。
すぐに冷えたキリンラガーの中ビンと、ネギとタレをまぶした焼豚皿が登場。
おつまみは「竹の子(メンマ)」200円もあるが、焼豚皿にもメンマが混ざっているので、両方頼まなくて済むよ。
ほろ酔いになったところで、シメの「五目そば」650円を追加。それにしても、どのメニューも安いよなあ。
ゆで卵、ハム、ピーマン、もやし、そしてナルト、メンマ、チャーシューが増量される、色鮮やかな五目そばだ。
ピーマンとハムはラーメンには珍しい具だけど、このスープと麺には合っているから不思議。
しっかり茹でられ薄黄色に仕上がった、ハードボイルド玉子も、懐かしくていいかんじ。
全部たいらげたところで御会計。相変わらずいい接客で、ハシゴ酒の1軒目としては最高だった。
お店を出て、階段を上っていると、写真のビル看板を発見。隣の店の「カレーライス500円」も安いね。
旨味が過剰な最近のラーメンに慣れちゃった人には、みたかの味はちょっと物足りないかもしれないが、
前回の『天下一品』もそうだけど、ここのラーメンも他では食べられない、まさにオンリーワンの味だ。
歴史を誇る安くて美味しいラーメン、未食の方はぜひ1度お試しを。
中華そば みたか
東京都三鷹市下連雀3-27-9 B1F
三鷹駅南口から徒歩約3分
営業時間 11時~14時、17時~20時半
定休日 月曜、第1第3火曜
※すぐ近くに、橋本氏の実家が営む『割烹 はしもと』がある
昭和24年の創業で、店内のカウンター席は、いつも大勢の客で賑わっていた。
こちらは、平成14年(2002年)発行のラーメン本に載っていた写真。
見た目はシンプルな醤油ラーメンという印象だろうが、「ラーメン400円」は、当時でもかなり安い部類に入る。
私が初めて訪問したのは、この本を買う前だから、たぶん今から20年以上前。
偶然だろうが、店員さんもお客さんもみなさん高齢の方で、自分を若造のヒヨッコに感じた記憶がある。
こちらは、麺をひと玉ずつ茹でられる、取っ手付きの網(テボ)を使わず、大きなザルでいっぺんに調理しており、
普通のラーメンを頼んだら、別の客が注文したワンタンメンのワンタンが混ざっていて、妙に得した気分になった。
江ぐちには熱狂的なファンが大勢いて、その内のひとりが、「孤独のグルメ」の原作者・久住昌之さん。
常連客だった久住さんは、お店の人たちを登場人物にした、写真の書籍を発表するほど江ぐちを愛していた。
※画像はamazonより拝借
お店は繁盛していたが、店主の江口さんがお亡くなりになったことで、平成22年の1月にやむなく閉店。
しかし、江口さんの弟子で、久住さん以上に江ぐちの大ファンだった橋本さんが、お店を引き継ぐことを決意。
数ヶ月後、『中華そば みたか』という店名で、再出発を果たすこととなった。
ネットやマスコミの評判は、「名店復活」「以前と変わらぬ味」と、おおむね好評のようだった。
私自身は、あまり三鷹駅で下車することがなく、なかなか行く機会に恵まれなかったのだが、
最近は、以前拙ブログで紹介した、天ぷらのウマい店『すーさんち』など、三鷹での飲み歩きも増えており、
先日の夕刻、ようやく待望の「みたか初訪問」を果たすこととなった。
ビルの階段を下りてお店の扉を開けると、「いらっしゃいませ!」と気持ちのいい挨拶で迎えられた。
店員は男性ふたりと女性ひとり。みなさん若く、そして勤務態度が素晴らしい!
自然な笑顔、快活な受け答え、キビキビとした動き、そして付かず離れずなお客さんとの絶妙な距離感。
これまでに私が入ったラーメン店では、間違いなく三本指に入る好接客だ。
店員が3人いれば、ひとりくらい怠惰なバカが混ざっていたり(立川の店では、3人ともバカの場合あり)、
調理にのみ専念し、客に注意を払わないヤツもいたりするのに、彼らは全員、調理も接客もしっかりこなす。
失礼ながら、先代『江ぐち』の接客は、さほどいい印象がなかったので(苦笑)、これは嬉しい誤算だった。
さて、肝心のラーメンの味だが、隣のおっさん客が食べているのをのぞいたら、見た目は以前と変わってなかった。
基本の「ラーメン」の価格は450円と、閉店時の江ぐちと同額で、8年たってもその値段をキープしていたが、
今年1月から、麺類を50円値上げしたそうだ。それでも、個人店でラーメン1杯500円は破格だ。
そもそも、消費税が8%になったときも、価格を維持して頑張ってきたのだから、50円くらいは上げてもいいでしょ。
なお、以降で紹介したラーメンは、私が食べたときの価格(=現在より50円安)なので、お間違えのないよう。
この日の私の注文は、「ワンタンメン」600円に「卵」50円をトッピング。
数人分のオーダーを受け、大釜で大量の麺を茹で終わったあと、同じ釜で私のワンタンを茹で始めた。
これなら、ワンタンが他人の麺に混ざる=横取りされる心配がなくていいぞ(←セコイよ)。
ワンタンと卵が盛り付けられ、店員3名からの「お待たせしました!」の掛け声とともに、丼が運ばれてきた。
ナルト、メンマ、ちっちゃいチャーシュー、そしてたっぷりのワンタンと半熟玉子。これで650円は安いでしょ。
「卵」は味玉でなく、ポンとお湯に落として茹でたもの。家庭で作るラーメンの具みたいで、妙に気に入った。
スープを吸って柔らかくなったワンタンは、12個くらい入っていたはず。中の具はかなり少ないが(笑)。
そして、こちらのラーメンの最大の特徴は、自家製の麺。
ラーメンの麺は黄色が主流だが、こちらの麺は写真のように、蕎麦粉を混ぜたような茶色をしており、
やや太めで四角く、歯応えがある。風味も独特で、こちらのお店でしか味わえない麺だ。
醤油味のスープも、よくあるオールドファッションな塩分きついタイプかと思いきや、そんなにしょっぱくない。
先代・江ぐちの味と、全然変わらないよ!
会計後、店主の橋本さんが顔を出した。店主不在でも、ラーメンの味や部下の態度が変わらないのには感動した。
数日後、シラフ&空腹で再訪。
江ぐち時代から常連さんがやっていたらしい、「ビールとつまみ、最後にラーメン」をやってみることに。
まずは「ビール中」500円と「焼豚(チャーシュー)」400円を注文。
すぐに冷えたキリンラガーの中ビンと、ネギとタレをまぶした焼豚皿が登場。
おつまみは「竹の子(メンマ)」200円もあるが、焼豚皿にもメンマが混ざっているので、両方頼まなくて済むよ。
ほろ酔いになったところで、シメの「五目そば」650円を追加。それにしても、どのメニューも安いよなあ。
ゆで卵、ハム、ピーマン、もやし、そしてナルト、メンマ、チャーシューが増量される、色鮮やかな五目そばだ。
ピーマンとハムはラーメンには珍しい具だけど、このスープと麺には合っているから不思議。
しっかり茹でられ薄黄色に仕上がった、ハードボイルド玉子も、懐かしくていいかんじ。
全部たいらげたところで御会計。相変わらずいい接客で、ハシゴ酒の1軒目としては最高だった。
お店を出て、階段を上っていると、写真のビル看板を発見。隣の店の「カレーライス500円」も安いね。
旨味が過剰な最近のラーメンに慣れちゃった人には、みたかの味はちょっと物足りないかもしれないが、
前回の『天下一品』もそうだけど、ここのラーメンも他では食べられない、まさにオンリーワンの味だ。
歴史を誇る安くて美味しいラーメン、未食の方はぜひ1度お試しを。
中華そば みたか
東京都三鷹市下連雀3-27-9 B1F
三鷹駅南口から徒歩約3分
営業時間 11時~14時、17時~20時半
定休日 月曜、第1第3火曜
※すぐ近くに、橋本氏の実家が営む『割烹 はしもと』がある