郡上八幡から国道156号を北上、大和町に入り徳永の信号を超えると、左側に長良川鉄道郡上大和駅に向かう旧街道への分かれ道があります。今回は旧街道沿いに建つ鶴来医院(大正14年)が目的で大和町を訪れたのですが、地図上では橋を渡りすぐ左手にあるはずの医院は影も形もありませんでした。医院跡地にはまだ重機が置いてあり、更地にしている最中で、本当につい最近取り壊されたばかりという感じです。
鶴来医院は近代建築関係の本には必ず紹介される有名な物件で、木造下見板張りのレトロな外観は、山下清をモデルにしたTVドラマ「裸の大将」の撮影でも使われたそうです。郡上八幡楽藝館の管理人さんの話によると、旧林療院と鶴来医院がロケ地の候補に挙がり、そのレトロな雰囲気から鶴来医院が舞台として選ばれたとのことです。
今まで大和町はなかなか訪れる機会がなく、今回初めて鶴来医院を訪れたのですが、ほんの少しの差で名建築を見ることができず、非常に残念な思いをしました。やっぱり近代建築はとりあえず現地に行き、目で見てカメラに収めるのが鉄則。「いつまでもあると思うな親と近代建築」の思いを新たにした一日でした。
ところで取り壊された鶴来医院のすぐ脇に小さな橋があるのですが、これがちょっと気になりました。欄干はアルミ製のピカピカの新しいものですが、親柱だけは石造りでやけに古いので、そこに刻まれた文字を読んでみると、鶴来橋という橋の名前と大正13年1月10日竣工の銘がしっかり入っていました。
現在このあたりの地名は大和町剣(ツルギ)と言いますが、同音の鶴来という名称を残すのは、現在この親柱だけになってしまい、当時の様子を伝える唯一の存在になってしまいました。
■縣道第四拾四號 八幡福井線 鶴来橋の銘が入る親柱
◆鶴来橋親柱/岐阜県郡上市大和町剣
竣工:大正13年(1924)
構造:石造
撮影:2012/09/15