名古屋市には戦前に建てられた配水塔が現在も2つ残っています。千種区にある旧東山配水塔(昭和5年)と中村区の稲葉地公園にある旧稲葉地配水塔です。
旧東山配水塔は、現在災害時の応急給水施設、東山給水塔として再利用されていますが、旧稲葉地配水塔は、演劇練習館という非常にユニークな形で生まれ変わり市民に活用されています。
稲葉地配水塔は、名古屋市西部への配水を目的として昭和12年に竣工しましたが、昭和19年に大治浄水場が完成し、給水がポンプ圧送に変わったため、わずか7年で配水塔としての役目を終えました。その後は昭和40年に中村図書館に転用されましたが、平成7年名古屋市演劇練習館として二度目の再生を果たしました。
◆名古屋市演劇練習館アクテノン(旧稲葉地配水塔)/愛知県名古屋市中村区稲葉地町1-7
竣工:昭和12年(1937)
設計:名古屋市水道局
構造: RC造地下1階、地上5階建
撮影:2012/09/22
※名古屋市都市景観重要建築物
■建物北側正面~古代ギリシャの円形神殿を思わせるスケール感のある外観は、地域のランドマークとして抜群の存在感
■水槽の周縁部を16本の円柱で支える
■建物入口
■建物南側
旧稲葉地配水塔は、配水塔としてはわずか7年の命でした。
70年以上の時を経た現在、「演劇練習館アクテノン」という新たな命を吹き込まれた配水塔は、地域のランドマークとして多くの人々に親しまれ、幸せな余生を送っています。
これからも時代を超えて、人々の記憶に残る建物として、末永く愛されていくことでしょう。