デジブック 『ぶらドラ奈良・柳生』
昨日(10日)は、奈良公園内にある鹿苑で、恒例の「シカの角切り」が始まり、遷都1300年と相まって大変な賑わいとニュースで報道されていた。
大賑わいの奈良公園からほんの少し離れてみるとそこにはひっそりと歴史をきざんできた味わい深い所がある。秋の一日のんびりと車で巡ってきた。
般若寺:コスモス寺と銘打つだけあって、カメラでベストショットを狙っている人が多かった。白鳳秘仏公開中の宝蔵堂に行くと古びた銅鑼がかけてあり、「御用のある人は鳴らしてください」の掛札。「?」とたたいてみるといきなり引き戸があいたのには驚きとおかしみがあった。まさに人動ドアであった。特別拝観料を払うと「暗いですから」と小さな懐中電灯を渡されたのにも得もいわれぬ味があった。
コスモスを ゆったり見るのは 久しぶりと 日々の仕事に いそしむあなた
植村牧場:般若寺は観光バスが入れないほどの古い町並みの中にある。その前にある牧場。今時は臭いとか環境問題でのクレームを多く見聞きするが、明治17年創業のこの牧場、町の中に溶け込んでいる感じがした。
小さい時、伊勢に出かけると必ず昼は「山口屋」で伊勢うどんを食べた。そこにソフトクリームがあったのだが、当時はけっこう高級品だったので食べさせてもらえなっかた。4年に1度ぐらいのオリンピック並みの機会である。しかも、一人1個ではない。「いつかは」という思いがいまだに継続しているのかどこに行っても必ず食べる。スッキリとした甘さであった。
奈良奥山ドライブウェイ:好きな道である。普通は若草山との往復コースを選ぶ人が多いが、春日山原始林を走るコースに魅力を感じる。
若草山の頂上への散策路は、台風18号の風雨でひきちぎられた小枝や葉が落ちていた。倒れている木もあり、自然の力を感じた。その中で樹齢何百年と立ち続ける木の生命力に畏敬の念を持つ。
台風の 爪あと残る 森の中 よくぞ残った 古木にタッチ
鶯の滝:春日山原生林の道は、一方通行で未舗装である。車の窓をあけるとひんやりとした空気と木のかおりが心地よい。コースの中間地点に赤い橋がある。左折するとさらに細い側道がぐねぐねと続く、今回初めて寄り道をした。道の終点に車を置き5分ほど下ると「鶯の滝」がある。その昔、水滴が氷をたたき、まるで鶯が鳴いているように聞こえたところからその名がついたといわれている。西行法師の和歌にも歌われているらしい。もみじの木が多くあった。
もみじ葉の 赤より今の 緑が好きと 木漏れ日うけて ほほえむあなた
新薬師寺:ドライブウェイの出口から右折し高畑の町の細い道を進むと長い歴史を蔵する新薬師寺がある。19歳の時、名古屋から奈良を訪れた時、有名な「薬師寺」の前に「新」の字がついた寺をたまたま見つけ、予備知識もなく気楽な気持ちで立ち寄ったら、本堂に入って『十二神将』の迫力に圧倒され、それ以来奈良で一番好きな寺となった。「あたらしい」ではなく「あらたかな」薬師寺という意味である。国宝級の多くの像がケースにも入れられず、そのままポンと置かれている。生に仏像の気を感じることができる唯一のところだと思う。
仏像の 1つ1つの 表情が わが心に 宿る情念
円成寺(えんじょうじ):20歳の時、大学の友人達とJR奈良駅から柳生まで歩いた。予定では日帰りで名古屋に帰るつもりでいたが、思いのほか時間がかかり、峠の茶屋までは余裕があったが、それ以後は柳生を目指しひたすら歩いた。そのため途中にある円成寺は素通りした。それ以来行けてなかったので、今回は是非行きたかった。思っていたよりも落ち着きと品格のある良い寺であった。蓮の時期にまた行きたいと思った。
寺建てる ふさわしき場所 定めたる いにしえ人の 深き智恵見る
柳生の里:なぜ友人達と、柳生街道を歩いたのか。NHK大河ドラマ「春の坂道」だったかなぐらいの記憶であった。旧柳生藩家老屋敷に展示されている当時の台本を見ると昭和46年放映とあり、そうだったんだと確信した。今は当時の観光客で賑わった名残りはあるがひっそりとした里という感じ。その象徴的なのが十兵衛杉。寛永3年、独眼竜柳生十兵衛三厳が諸国漫遊に旅立つ際、先祖の墓に参り、この杉を植えたと伝えられ樹齢350年を超える老杉で、柳生下町の丘の麓にそびえていたが、昭和58年の落雷で枯れてしまった。葉はないが、枝と幹だけは今も倒れずすくっと立っている。
伝説の 剣豪の名を 受けし杉 枯れてもなお 気高く立てり
銭司聖天:笠置を抜ける国道163号線は年末年始と盆に志摩の田舎に帰る時、いつも使う道路である。大阪に住むようになり35年になった。その間いつも「銭司聖天」の横を通りながら一度も寄ることが出来ずにいた。どんなところか興味を持ち続けていたので、今回立ち寄った。想像以上におもしろい寺であった。
志摩からの帰り、ここを過ぎるとあと少しだとホットする地点。家に着くとたくさんの荷物を降ろしてというのをずい分長く繰り返してきたものだと境内を歩きながらふと思った。
ふるさとの 荷物をとけば なつかしい 志摩の香りが 我にとびこむ
この日の夕陽は格別美しく感じられた。心がHOTになった一日。
昨日(10日)は、奈良公園内にある鹿苑で、恒例の「シカの角切り」が始まり、遷都1300年と相まって大変な賑わいとニュースで報道されていた。
大賑わいの奈良公園からほんの少し離れてみるとそこにはひっそりと歴史をきざんできた味わい深い所がある。秋の一日のんびりと車で巡ってきた。
般若寺:コスモス寺と銘打つだけあって、カメラでベストショットを狙っている人が多かった。白鳳秘仏公開中の宝蔵堂に行くと古びた銅鑼がかけてあり、「御用のある人は鳴らしてください」の掛札。「?」とたたいてみるといきなり引き戸があいたのには驚きとおかしみがあった。まさに人動ドアであった。特別拝観料を払うと「暗いですから」と小さな懐中電灯を渡されたのにも得もいわれぬ味があった。
コスモスを ゆったり見るのは 久しぶりと 日々の仕事に いそしむあなた
植村牧場:般若寺は観光バスが入れないほどの古い町並みの中にある。その前にある牧場。今時は臭いとか環境問題でのクレームを多く見聞きするが、明治17年創業のこの牧場、町の中に溶け込んでいる感じがした。
小さい時、伊勢に出かけると必ず昼は「山口屋」で伊勢うどんを食べた。そこにソフトクリームがあったのだが、当時はけっこう高級品だったので食べさせてもらえなっかた。4年に1度ぐらいのオリンピック並みの機会である。しかも、一人1個ではない。「いつかは」という思いがいまだに継続しているのかどこに行っても必ず食べる。スッキリとした甘さであった。
奈良奥山ドライブウェイ:好きな道である。普通は若草山との往復コースを選ぶ人が多いが、春日山原始林を走るコースに魅力を感じる。
若草山の頂上への散策路は、台風18号の風雨でひきちぎられた小枝や葉が落ちていた。倒れている木もあり、自然の力を感じた。その中で樹齢何百年と立ち続ける木の生命力に畏敬の念を持つ。
台風の 爪あと残る 森の中 よくぞ残った 古木にタッチ
鶯の滝:春日山原生林の道は、一方通行で未舗装である。車の窓をあけるとひんやりとした空気と木のかおりが心地よい。コースの中間地点に赤い橋がある。左折するとさらに細い側道がぐねぐねと続く、今回初めて寄り道をした。道の終点に車を置き5分ほど下ると「鶯の滝」がある。その昔、水滴が氷をたたき、まるで鶯が鳴いているように聞こえたところからその名がついたといわれている。西行法師の和歌にも歌われているらしい。もみじの木が多くあった。
もみじ葉の 赤より今の 緑が好きと 木漏れ日うけて ほほえむあなた
新薬師寺:ドライブウェイの出口から右折し高畑の町の細い道を進むと長い歴史を蔵する新薬師寺がある。19歳の時、名古屋から奈良を訪れた時、有名な「薬師寺」の前に「新」の字がついた寺をたまたま見つけ、予備知識もなく気楽な気持ちで立ち寄ったら、本堂に入って『十二神将』の迫力に圧倒され、それ以来奈良で一番好きな寺となった。「あたらしい」ではなく「あらたかな」薬師寺という意味である。国宝級の多くの像がケースにも入れられず、そのままポンと置かれている。生に仏像の気を感じることができる唯一のところだと思う。
仏像の 1つ1つの 表情が わが心に 宿る情念
円成寺(えんじょうじ):20歳の時、大学の友人達とJR奈良駅から柳生まで歩いた。予定では日帰りで名古屋に帰るつもりでいたが、思いのほか時間がかかり、峠の茶屋までは余裕があったが、それ以後は柳生を目指しひたすら歩いた。そのため途中にある円成寺は素通りした。それ以来行けてなかったので、今回は是非行きたかった。思っていたよりも落ち着きと品格のある良い寺であった。蓮の時期にまた行きたいと思った。
寺建てる ふさわしき場所 定めたる いにしえ人の 深き智恵見る
柳生の里:なぜ友人達と、柳生街道を歩いたのか。NHK大河ドラマ「春の坂道」だったかなぐらいの記憶であった。旧柳生藩家老屋敷に展示されている当時の台本を見ると昭和46年放映とあり、そうだったんだと確信した。今は当時の観光客で賑わった名残りはあるがひっそりとした里という感じ。その象徴的なのが十兵衛杉。寛永3年、独眼竜柳生十兵衛三厳が諸国漫遊に旅立つ際、先祖の墓に参り、この杉を植えたと伝えられ樹齢350年を超える老杉で、柳生下町の丘の麓にそびえていたが、昭和58年の落雷で枯れてしまった。葉はないが、枝と幹だけは今も倒れずすくっと立っている。
伝説の 剣豪の名を 受けし杉 枯れてもなお 気高く立てり
銭司聖天:笠置を抜ける国道163号線は年末年始と盆に志摩の田舎に帰る時、いつも使う道路である。大阪に住むようになり35年になった。その間いつも「銭司聖天」の横を通りながら一度も寄ることが出来ずにいた。どんなところか興味を持ち続けていたので、今回立ち寄った。想像以上におもしろい寺であった。
志摩からの帰り、ここを過ぎるとあと少しだとホットする地点。家に着くとたくさんの荷物を降ろしてというのをずい分長く繰り返してきたものだと境内を歩きながらふと思った。
ふるさとの 荷物をとけば なつかしい 志摩の香りが 我にとびこむ
この日の夕陽は格別美しく感じられた。心がHOTになった一日。