『マグロは縄文人も食べていたという。万葉集にはその古名「しび」の漁に材をとった歌がある。』という書き出しの今日の「余録」、メインテーマはマグロの漁獲枠拡大の決定のことだが、まくらの部分に目が留まってしまった。
「今日は、しびか」と食卓の刺身を見てしかめっ面する父の顔を思い浮かべた。漁師町浜島で育った父は肉類は苦手で、おかずはもっぱら魚。刺身は「カツオ」で「しび」は嫌った。当時の私の周りには「マグロ」という言葉はなかった。しびはカツオより劣る魚ということが焼きついてしまった。
大阪で暮らすようになって40数年、刺身はもっぱら「マグロ」である。妻が苦手ということもあって「カツオ」は実家に帰った時ぐらい。「しび」という単語はお目にかからなくなった。今日、初めて「しび」=「マグロ」と結びついた次第。
「しび」=「マグロ」の食卓での地位向上には歴史があることも「余録」で知った。冒頭の続きである。
『そんな古くからの食材だが、江戸時代前期には「下魚なり。賞(しょう)翫(がん)(味わうこと)に用いず」とさげすまれた▲一つには古名が「死日」に通じて不吉なのが武家に嫌われたらしい。だが江戸時代も後期の本ではこうなっている。「昔は食べたのを人に語るのも耳のそばでひそかに話したが、今は身分の高い家の料理にまで出るのがおもしろい」▲マグロ人気盛り上がりの大きなきっかけは文化年間の関東で連日1万匹が水揚げされた大漁という。今一つは関東風のしょうゆの普及とすしの人気があった(世界大博物図鑑)。今日にいたるマグロ食文化が作られたこの時期である▲近海をふくむ太平洋のクロマグロは今や人気の高級すしねただが、その漁獲枠(大型魚)が来年は15%増えるという。・・・・・』志摩では、スーパーの鮮魚売り場を見ると、やはりカツオが主役である。
万葉集には巻第六(938)と巻第十九(4218)に鮪(しび)が出てくる。
鮪(しび)衝(つ)くと 海人(あま)の燭(とも)せる 漁火(いさりび)の ほにか出でなむ わが下思(したも)ひを
(鮪を突くとて漁師がともす漁火のように、人目についてしまうだろうか。わが下心の思いは。)
「今日は、しびか」と食卓の刺身を見てしかめっ面する父の顔を思い浮かべた。漁師町浜島で育った父は肉類は苦手で、おかずはもっぱら魚。刺身は「カツオ」で「しび」は嫌った。当時の私の周りには「マグロ」という言葉はなかった。しびはカツオより劣る魚ということが焼きついてしまった。
大阪で暮らすようになって40数年、刺身はもっぱら「マグロ」である。妻が苦手ということもあって「カツオ」は実家に帰った時ぐらい。「しび」という単語はお目にかからなくなった。今日、初めて「しび」=「マグロ」と結びついた次第。
「しび」=「マグロ」の食卓での地位向上には歴史があることも「余録」で知った。冒頭の続きである。
『そんな古くからの食材だが、江戸時代前期には「下魚なり。賞(しょう)翫(がん)(味わうこと)に用いず」とさげすまれた▲一つには古名が「死日」に通じて不吉なのが武家に嫌われたらしい。だが江戸時代も後期の本ではこうなっている。「昔は食べたのを人に語るのも耳のそばでひそかに話したが、今は身分の高い家の料理にまで出るのがおもしろい」▲マグロ人気盛り上がりの大きなきっかけは文化年間の関東で連日1万匹が水揚げされた大漁という。今一つは関東風のしょうゆの普及とすしの人気があった(世界大博物図鑑)。今日にいたるマグロ食文化が作られたこの時期である▲近海をふくむ太平洋のクロマグロは今や人気の高級すしねただが、その漁獲枠(大型魚)が来年は15%増えるという。・・・・・』志摩では、スーパーの鮮魚売り場を見ると、やはりカツオが主役である。
万葉集には巻第六(938)と巻第十九(4218)に鮪(しび)が出てくる。
鮪(しび)衝(つ)くと 海人(あま)の燭(とも)せる 漁火(いさりび)の ほにか出でなむ わが下思(したも)ひを
(鮪を突くとて漁師がともす漁火のように、人目についてしまうだろうか。わが下心の思いは。)