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やはり好きです!「夫婦茶碗」by町田康

2017年10月03日 | 小説レビュー
~金がない、仕事もない、うるおいすらない無為の日々を一発逆転する最後の秘策。それはメルヘン執筆。こんなわたしに人生の茶柱は立つのか?!あまりにも過激な堕落の美学に大反響を呼んだ「夫婦茶碗」。
金とドラッグと女に翻弄される元パンクロッカー(愛猫家)の大逃避行「人間の屑」。
すべてを失った時にこそ、新世界の福音が鳴り響く!日本文芸最強の堕天使の傑作二編。
「BOOK」データベースより


「告白」に続く、町田康作品の2作目です。

「夫婦茶碗」と「人間の屑」という短編が2作収録されているのですが、相変わらず町田康氏の「思弁的な主人公」は健在です。

頭の中で考えていることが「ぐるぐる~、ぐるぐる~」と回ったり、突然「パッ!」っと花火が上がるように、とんでもない考えが閃いたりする様は楽しいです・・・。

が、読んでいる自分の精神状態が安定していないと、とてもしんどい文章でもあります(^_^;)

『夫婦茶碗』の方は、旦那と奥さんの意思疎通が図れなさ過ぎて「結局なんやったん?」と、いう終わり方ですが、『人間の屑』は、なかなか良作でした。

自宅の庭に出入りする猫たちの生態を観察し、家系図まで作り上げてしまうあたりは、やはり町田康氏一流の動物との絡みで、ニコニコしながら読みました。こういうところは本当に大好きです。

さて、まさに『人間の屑』な主人公ですが、行動も考え方も『屑』です(^_^;)。

でもどこか憎めない男で、最後のビデオ撮りのシーンは、なかなか感慨深いものがありますよ。
娘を想う、父親の不器用で深い愛情がリアルに表現されていて、もう少し別の書き方をすれば、涙涙のシーンになったかも知れません。

巻末にある筒井康隆氏の解説が秀逸で、「文学とは!」と、思い知らされます。


町田康氏の発想力、展開力は一級品で、とても興味深い方だと思います。

ある意味では、ハートフルな恋愛小説とも呼べる、この2作品、特に「人間の屑」は、なかなか良い出来だと思います。
★★★3つです。


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