「心ゆたかな暮らしを」  ~Shu’s Page

小説のレビュー、家族の出来事、趣味の事、スポーツ全般など、日々の出来事をつづりながら、一日一日を心豊かに過ごせれば・・・

綺麗に騙されました『女王はかえらない』by降田天

2020年08月27日 | 小説レビュー

『女王はかえらない』by降田天

 

~片田舎の小学校に、東京から美しい転校生・エリカがやってきた。エリカは、クラスの“女王”として君臨していたマキの座を脅かすようになり、クラスメイトを巻き込んで、教室内で激しい権力闘争を引き起こす。

スクール・カーストのバランスは崩れ、物語は背筋も凍る、まさかの展開に―。二度読み必至!伏線の張りめぐらされた学園ミステリー。2015年第13回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作。「BOOK」データベースより

 

著者の降田 天(ふるた てん)氏は、作家の鮎川 颯さんと萩野 瑛さんの女性作家二人からなるユニットとのこと。萩野氏が大筋を書き、2人で登場人物の心情などを話し合った後で、鮎川氏が執筆している形だそうです。

『このミス大賞』というのは、今までにも、数十冊読みましたが、当たり外れが大きいんです。

しかしながら、この『女王はかえらない』は、『イニシエーションラブ』や、『アヒルと鴨のコインロッカー』のような、あっと驚く大どんでん返しがあります。

スクールカースト』という恐ろしい言葉があります。

学校のクラスの中にある、イケてるグループとイケてないグループ、さらにその下層に置かれているいじめられっ子ということです。自分自身の子どもの頃を思い出しても、大なり小なりありましたよね。

本書『女王はかえらない』は、三つの章にわかれており、第一章は子ども目線のクラスでの権力争いを描き、第二章では教師目線の学級崩壊寸前になっている苦悩、そして第三章で真相が明らかになるという展開です。

ライトノベル界では名の知れた作家さん二人の描く世界&文章ですので、とても読みやすく、わかりやすい内容で、一気読みの作品でした。

何の先入観もなしに読み始めたので、大どんでん返しがあるとかないとか考えることもなく、物語に没入していました。

第二章で少し違和感を感じ、「んっ?」と思いながら、第三章の真相が明らかになったときに、「はっはぁ~ん、見事に騙されたね」と痛快な気分になりました。

イニシエーションラブ』のように、「さぁ騙してやるぞ!」という仕掛けが、そこかしこに仕掛けられており、巻末の解説文にもあるように、一つのトラップが発動すると、あちこちで地雷が連鎖、的に爆発していくような様は見事です。

レビューでは「使い古された手法」などと酷評されている部分もありますし、ミステリーを読みまくっている愛好者の方なら「はいはい」という感じなのでしょうが、僕はいつも『先入観無し』のクリアな頭で入っていきますので、イヤミスですが、気持ちよく騙されました。

★★★☆3.5です。

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短い章立てで読みやすい『金色機械』by恒川光太郎

2020年08月26日 | 小説レビュー

『金色機械』by恒川光太郎

~触れるだけで相手の命を奪う恐ろしい手を持って生まれてきた少女、自分を殺そうとする父から逃げ、山賊に拾われた男、幼き日に犯した罪を贖おうとするかのように必死に悪を糺す同心、人々の哀しい運命が、謎の存在・金色様を介して交錯する。人にとって善とは何か、悪とは何か。「BOOK」データベースより

なかなかのホラーミステリー『夜市』by恒川光太郎一気に読ませる空想科学小説『滅びの園』by恒川光太郎につぐ、三作目です。

本作を読み始めたころは、「熊悟朗の立身出世物語か?」と思ったり、「紅葉との恋物語?」などと思うほど、ストーリーの全体像が見えにくく、興味がそそられます。

登場人物が巧みに交錯し、時系列も組み直されている上に、各章節が短めで、読んでいて楽しかったです。※しかしながら、本が分厚くて重いので持ち運びには不向きな本です

厳信が彫った仏像が笑い出した時には、「これはすごい小説かも!?」と期待しましたが、ストーリーの根拠となる「金色様」の正体の謎が解明されませんし、予想されるエンディングに向かって然したる障害もなく淡々と事が進んでいき、クライマックスの盛り上がりも今ひとつで、静かにエンドロールが流れるようなラストを迎えてしまったのが少し残念ですね。

恒川氏は多くのホラーミステリー作品を世に出されているので、今後も色々と読んでいきたい作家さんです。
★★★3つです。

 

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心に響く言葉 by茨木のり子さん

2020年08月25日 | 雑感・日記的な

「感受性を磨く(養う、伸ばす)」とか、「感受性が豊か」とか、人の能力とかイメージを表現するときによく使いますよね。

その感受性について、グッとくる詩を見つけました。あまりにも有名な詩ですね。

 

『自分の感受性くらい』

ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて

気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか

苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし

初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志しにすぎなかった

駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄

自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ

――茨木のり子『自分の感受性くらい』より

 

朝日新聞の本のサイト「好書好日」内でお届けする「じんぶん堂」ウエブサイトより抜粋

~別冊太陽『茨木のり子 自分の感受性くらい』凛としてあり続けた詩人の生涯を読み解く

 

「そうそう、そうやんなぁ~・・・」って、思いながら読んでいて、最後の「ばかものよ」で、冷水をぶっかけられたような気持ちになります

心して人生を歩んでいきたいと思います。

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凄まじい漂流譚『漂流』by吉村昭

2020年08月24日 | 小説レビュー

『漂流』by吉村昭

~江戸・天明年間、シケに遭って黒潮に乗ってしまった男たちは、不気味な沈黙をたもつ絶海の火山島に漂着した。
水も湧かず、生活の手段とてない無人の島で、仲間の男たちは次次と倒れて行ったが、土佐の船乗り長平はただひとり生き残って、12年に及ぶ苦闘の末、ついに生還する。
その生存の秘密と、壮絶な生きざまを巨細に描いて圧倒的感動を呼ぶ、長編ドキュメンタリー小説。「BOOK」データベースより

吉村昭氏の作品は、「自然VS人間の凄まじい攻防『高熱隧道』」に次ぐ2作目です。

高熱隧道』は、岩盤最高温度165度という高熱地帯に、隧道(トンネル)を掘鑿する難工事に挑んだ人々の「熱との闘い」でしたが、この『漂流』は、江戸時代に絶海の無人島に漂着した若者が厳しい自然、また孤独と闘い、新しい仲間を得てからは、無人島脱出に一丸となって取り組み、12年にも及ぶ無人島での生活から奇跡的に生還したという実話に基づいた小説です。

主人公の長平が、何にもない無人島で必死に生き抜いていくあたりで、ずいぶん前に読んだ漫画、さいとうたかを氏の『サバイバル』を少し思い出しました。

ちなみに『鳥島』の位置を調べてみると・・・、
まさに絶海の孤島!とんでもないところに漂着したもんですね。

また調べてみると、高知県の香南市香我美町岸本というところに、「野村長平」の銅像と碑が立っているようです。

こうして今でこそ、顕彰されるような偉人として奉られている長平ですが、12年ぶりに故郷に帰った当時の生活は、村人たちからも少し距離を置かれていたようで、「長平さん!無事帰還おめでとう!」みたいな雰囲気でなかったみたいです

巻末の解説にもありますが、吉村昭氏の筆致というのは、「自身が見聞してきたかのうような描写」がすごいところですね。実際に鳥島に足を運ばれたり、漂流した人に取材したり、「まさに現地現場主義」を徹底されている作家さんです。
さて、物語としては、どうやって無人島から脱出するのか?という点に興味を持ちながら話を追いましたが、まぁ結局は「それしかないわな」ということでした。

それにしても、作中にも度々登場する「神仏からの授かりもの」が奇跡的に漂着し、ツギハギだらけの船が完成していく様は、自分自身が何かを作り上げたかのような高揚感と達成感に満たされています。

ご都合主義なところもありますが、実際に帰還された方のお話なんですから、それはそうだたんでしょう。
吉村氏の作品をもっと読んでみたくなりましたね。
★★★3つです。

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理想的な生き方とは『手紙屋』by喜多川泰

2020年08月22日 | 小説レビュー

『手紙屋』by喜多川泰

就職活動に出遅れ、将来を思い悩む大学四年生の「僕」は、とあるカフェで奇妙な広告と出会う。その名も『手紙屋』。10通の手紙をやりとりすれば、夢を実現させてくれるというのだが…。
主人公といっしょに働くことの意味を見つめ直す本。ロングセラー「賢者の書」「君と会えたから…」で読者を感動の渦に巻き込んだ著者が贈るメッセージ。自分らしく生きたいあなたへ―明日を変える10の教え。「BOOK」データベースより

 

喜多川泰氏の作品は、最低限を超えれば幸せが『ソバニイルヨ』by喜多川泰運に良いも悪いもない!『運転者 未来を変える過去からの使者』by喜多川泰、に続く、3作目です。

喜多川氏の作品は、物事の見方や出来事に対する捉え方、考え方を変えるアドバイスをくれます。

本書は、何となく平坦な人生を歩んできた大学4回生の主人公が、ふとしたきっかけで手紙屋と出会い、文通を通じて人としての生き方を根本から見つめ直すという内容です。

以前にブログで書いた儒教の経書である「大学」に出てくる言葉、

「格物、致知、誠意、正心、 修身、斉家、治国、平天下」

まさに物事の本質をとらえて、さらに知識を深めることによって、誠の意思が生まれ、正しい心、行いが身につく。そうすれば家(会社)がととのい、国が治まって、平和な世界が築かれる。という真理がわかりやすく書かれています。

自己啓発本と一言で片づけてしまえばそれまでですが、こういう本は定期的に読んでおいて、「こういう考え方を持つことは大切やね」と気付くことだけでも、人生を歩んでいくことに力強いサジェスチョンを与えてくれることでしょう。

うちの長女が大学3回生で、来年には就職活動期を迎えます。長女に薦めたところ「うん、読んでみるわ」と、読んでくれています。

しかしながら、人生50年を歩んできた私にとってみれば、「そりゃ理想はそうですが」と、冷めた目線で読んでしまいました

これから社会に出ていく若者には、是非とも読んでもらいたい作品ですが、私にとっては、「?」って思う点もしばしばあったので、評価は高くありません。
★★★3つどまりですかね。

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日本における西洋美術の夜明け『美しき愚かものたちのタブロー』by原田マハ

2020年08月17日 | 小説レビュー

『美しき愚かものたちのタブロー』by原田マハ

すべては一枚の絵画(タブロー)から始まった。あのモネが、ルノワールが、ゴッホが!国立西洋美術館の誕生に隠された奇跡の物語。「BOOK」データベースより

ちょうど1年前の8月15日、東京の先輩の家を訪問したついでに、当時、原田マハさんの影響を受けていて美術に目覚めてかけていた僕は、上野の国立西洋美術館を訪ねました。
「国立西洋美術館でホッコリ『松方コレクション展』」

松方といえば『松方弘樹』しか知らなかった僕は、その時は、松方幸次郎氏という人物について、もちろん全く知りませんでした。
美術館内に松方幸次郎氏の紹介パネルが展示してあったんですが、「ふ~ん、偉い人がいはったんやなぁ~」と、思ったぐらいでした。

さて、本作ですが、ほぼ実話に基づいて描かれており、松方氏が、フランスの一流の美術品を蒐集していった際の鮮やかな交渉術や戦争や不況によって美術品を手放すことになる苦悩などが描かれております。
その傍らで、美術史家の田代雄一氏(実際は矢代幸雄氏)や、フランス文学者の成瀬正一氏の目線を通して、まさにフランス美術界での印象派による革命と、日本における文化の目覚めが起こる様を描いています。

その後、吉田茂首相の尽力で、フランスをはじめ、世界に散逸してしまった松方コレクションを日本に取り戻すための交渉の経緯などが克明に描かれております。

実際に起こった様々な出来事は充分にドラマチックなんですが、実在の人物を基に描かれている為に、物語の盛り上がりとしては、やや平坦で、少し控えめになっています。

日本の美術界の礎を築き、日本人が本物の芸術に触れる機会を作ってくれた松方幸次郎氏の生き様と、それに関わった日本人、フランス人たちとの交流の歴史書としては、読むべき一冊でしょう。

松方コレクション展を観に行く前に読みたかった小説です
★★★3つです。

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さよならジーノ(T_T)

2020年08月10日 | 車・バイク

2018年9月に、現在の家に引っ越しをしてきたんですが、車庫の高さが148cmしかなくて、入る車が限られているんです。

そして、決めたのが画像の「ミラジーノ」です。

緑色のかわいいやつで、事故もなく大きな故障もなく、なんと14年間乗り続けました

色んなところに行きましたし、色んな人を乗せました。ぷりんが噛んでしまったボロボロのフェンダー、ぷりんがひっかいた傷、そんな傷の一つ一つも良い思い出です。

明日、新しい車が納車されるので、ジーノとはお別れになりますから、今日は洗車に行って、室内も掃除機をかけて、それなりに綺麗になりました。

今まで家族の足として立派に役目を果たしてくれたジーノに感謝感謝です。

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ゾワゾワする小説です『あひる』by今村夏子

2020年08月05日 | 小説レビュー

『あひる』by今村夏子

~あひるを飼い始めてから子供がうちによく遊びにくるようになった。あひるの名前はのりたまといって、前に飼っていた人が付けたので、名前の由来をわたしは知らない―。わたしの生活に入り込んできたあひると子供たち。だがあひるが病気になり病院へ運ばれると、子供は姿を見せなくなる。2週間後、帰ってきたあひるは以前よりも小さくなっていて…。日常に潜む不安と恐怖をユーモアで切り取った、河合隼雄物語賞受賞作。「BOOK」データベースより

何かの小説ランキングで「おもしろい!」とあったので、図書館で借りてきました。

一言で感想を言うと「ぞわぞわする小説」です。「ゾクゾク」ではなく「ゾワゾワ」です。カタカナ表記すると似ていますが、似て非なるものです。

死都日本』を読んで、緊張感と緊迫感、そして長編小説を読み終えた疲れから、次に読む作品を『あひる』か、原田マハさんの『美しき愚かものたちのタブロー』か迷いましたが、「『あひる』なら、何となくほのぼのしたエッセイ的な家族の風景が描かれているんやろうし、ちょっと一息つけるんちゃう?」と安易な気持ちで開きました。

ところがどっこい!この小説は怖いですよ!恐怖という怖さではないんですが、セリフの端々や情景描写、登場人物なんかが、少しずつ不気味なんですよ。

イメージとしては、道尾秀介氏の『向日葵の咲かない夏』をソフトにした怖さですかね?ちょっと言葉では説明できないような、まさに『ゾワゾワ』する雰囲気の物語です。

今村夏子という作家さんは・・・、

2010年「あたらしい娘」で太宰治賞を受賞。同作を改題した「こちらあみ子」と新作中篇「ピクニック」を収めた『こちらあみ子』(筑摩書房)で、2011年に第24回三島由紀夫賞受賞。2016年に本作「あひる」が第155回芥川龍之介賞候補に挙がった。同作を収録した短篇集『あひる』で、第5回河合隼雄物語賞受賞。2017年、「星の子」で第157回芥川賞候補、第39回野間文芸新人賞受賞。2019年、『むらさきのスカートの女』で第161回芥川賞を受賞。2019年度咲くやこの花賞受賞。

とのことで、デビュー以来、華々しい受賞歴をお持ちの女流作家さんです。

今村さんの作品は、この『あひる』が初読だったんですが、この世界観は好きです!次回は『こちらあみ子』と、『むらさきのスカートの女』を読んでみたいです。

話はそれましたが、この『あひる』は、読み手の好みが分かれる作品ですが、176頁で行間も広く読みやすい文章なので、1時間ほどで読めるかも知れません。

まず、手に取って一読していただき、気になる部分や読み返したい衝動にかられたらとしたら、あなたも「今村夏子ワールド」に引きずり込まれることでしょう。

いずれにしても、私の評価は低くないです!

★★★☆3.5です。

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火山に対する思いが変わります『死都日本』by石黒耀

2020年08月04日 | 小説レビュー

『死都日本』by石黒耀

~西暦二〇XX年、有史以来初めての、しかし地球誕生以降、幾たびも繰り返されてきた“破局噴火”が日本に襲いかかる。
噴火は霧島火山帯で始まり、南九州は壊滅、さらに噴煙は国境を越え北半球を覆う。
日本は死の都となってしまうのか?火山学者をも震撼、熱狂させたメフィスト賞、宮沢賢治賞奨励賞受賞作。「BOOK」データベース


644頁の大作で、読むのに大変時間がかかりました。と言っても、決して読みづらい内容ではなく、大変興味深く読ませてもらいました。
日本は「地震大国」と言われておりますし、地震に対しての防災意識・減災意識は高いほうだと思います。もちろん記憶に新しい、「東日本大震災」や「阪神淡路大震災」などがあり、「東海地震」、「東南海地震」、「南海地震」などは、いつ起こっても不思議でなく、150年周期といわれておりますから、突然巨大地震が襲ってきてもおかしくはありません。

しかし、地震に比べて、日本国民の危機意識、防災意識が低いのが「火山被害」だと思います。
あまり知られていませんが、日本では全国に活火山が111個もあります。←これで見ると、「近畿地方や四国には活火山が無いんだよね」なんて、安心してはいられません! 地球上の陸地の0.25%しかない日本の国土の中に世界の活火山の7.1%が存在しているんですよ!まさに「火山列島」ですよ

時折目にするニュース等でも、鹿児島県の桜島は噴煙を上げ続けていますし、1991年に雲仙普賢岳が噴火し、人々に「火砕流」の凄まじさを知らしめました。
2000年(平成12年)には三宅島が噴火し、相次いで北海道の洞爺湖付近にある有珠山が噴火しました。2014年には御嶽山が噴火し、噴石によって登山客の方々の命が奪われました。
少し思い起こすだけで、これだけの火山噴火が思い出されます。しかしながら、いずれも局地的な噴火で、周辺こそ大きな被害が出ましたが、全国的な被害はなく、「大変なことが起こったんやな」とニュース映像を眺めていた程度でした。

さて、この『死都日本』に対する評価は以下の通りです。
「著者の石黒が、現在も未来もこの大火山列島に住む日本人のすべてに届けと鳴らした警鐘である。まちがいなく本書『死都日本』は、小松左京『日本沈没』(1973年)以来の国民的大災害小説(ディザスター・ノベル)として永く記憶されることになるだろう。」――<佳多山大地(文芸評論家) 解説より>
各紙誌絶賛の超弩級クライシスノベル!

・「精密予測 うなる専門家」――朝日新聞

・「学者たちが舌を巻くリアルな描写」――毎日新聞

・「破局を超えて、日本再生の道を示しているところがいい」――AERA、
とのことです。

これ以上あらすじについて転用するのも野暮ですので終わりますが、ひとたび、日本列島の地下に眠る火山マグマが膨張し出すと、連鎖的、破局的な噴火が起こり、日本列島を地獄に叩き落し、世界的な恐慌を引き起こす恐ろしさを秘めていることに改めて気付かされました。日本で暮らす人々には、是非とも読んでいただきたい作品であり、防災意識の高揚には、必ず役立つ本だといえます。

ストーリー的には、全体を通して緊迫感のある場面が続きますが、何となく「主人公は大丈夫やろ」という安心感がありますし、破局的噴火を乗り越えて、日本が再生の道を目指して大きな賭けに出る(作中では『神の手作戦」と言われている』あたりから、なんとなく「そんなうまいこといくか?」と、やや懐疑的になり若干興ざめしましたが、エンターテインメントとして考えれば、こういうエンディングもいいかも知れません。

いずれにしても、これだけの作品を書き上げた石黒耀氏に拍手を送りたいと思います。
★★★☆3.5です。

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