『i(アイ)』by西加奈子
~「この世界にアイは存在しません。」入学式の翌日、数学教師は言った。
ひとりだけ、え、と声を出した。ワイルド曽田アイ。
その言葉は、アイに衝撃を与え、彼女の胸に居座り続けることになる。ある「奇跡」が起こるまでは―。
「想うこと」で生まれる圧倒的な強さと優しさ―直木賞作家・西加奈子の渾身の「叫び」に心揺さぶられる傑作長編!「BOOK」データベースより
西加奈子さんの作品は、かれこれ5作目ですが、当たりハズレがあって、なかなか評価がし辛い作家さんですね。もちろん『漁港の肉子ちゃん』は最高ですよ。でもそれ以外は、なかなかねぇ~。
話題作の『サラバ!(上下巻)』は、未読ですので、いつか読んでみたいと思っています。
さて、本作ですが、これは中々読みづらい作品でしたね。
皆さんも、ブラット・ピットとアンジェリーナ・ジョリーが、全く二人に似ていない子どもを連れて歩いている映像を見たことがあると思います。
本作のヒロインの『アイ』も、幼い頃に、アメリカ人の父と日本人の母のもとへ、養子としてシリアからやってきたんです。もちろん両親のどちらとも似ておらず、小さい頃から心に傷をおって、それをひた隠しに隠して生きて行きます。
小学校や中学校でも、同級生たちに心を開くことは出来ず、とても苦しい学生生活を送るアイ。ここまでの作品の雰囲気は、『アイ』が頭の中で巡らせている内容がほとんどで、しかもその考え方がネガティブで暗くて・・・。
全体的に物語の構成も明るい要素が少なく、アイのネガティブ思考に汚染されて、どんよりとした気持ちのまま読み続けました。
アイが高校に進学して初めて、『ミナ』というかけがえの無い親友と出会うことが出来ます。そこで少し光明が射すのですが、なかなかスッキリとせず、その後、出逢った運命の男性『ユウ』と夫婦になり、新たな人生がスタートします。
なんとかハッピーエンドをと望むのですが、これもなかなか叶わず・・・。
読み終えた後も「これはあんまりオススメできひんね」と落胆しながらブログを書き始めたのですが、ふと、西加奈子さんのインタビュー記事をネットで発見して呼んで見ると・・・。
~西加奈子さん最新作『i』。多様性を織り込んだ物語の誕生秘話。~
~主人公アイと、彼女の親友、ミナ。 そして、大切な男性、ユウ。この3人のことについて、西加奈子さんは、こんなことを話してくれました。
「あのミナちゃんっていう親友は、私自身がミナちゃんになりたいし、そういう世界、ミナってAllのミナでもあるので、そういう世界の一員でありたいなという想いを込めて書きました。すごく今、Iっていう個人が、Allがいるから存在しているっていう状況になっている気がするんです。例えば、国があるからあなたがいます、ってそれってこわいなと思って。もっとIとAllはイーブンでいいし、平等な関係でいいし、ミナも、Allも失敗することもあるし、Iも失敗することがあるから、それを支え合っていけるのが、一番いい世界と個人の関係なんじゃないかなと思って。そういう世界でありたいし、そういう個人でもありたいです。だから、ミナとアイの関係、あとは、ユウとアイ、ユウも他者なので、自分もそういう関係性を築きたいと願いを込めて書きました。だからやさしいでしょ、ミナとユウって。そうでありたいんです、自分が。個人がアイデンティティでさまよっているときとか苦しんでいるときに、浜辺で待ってあげられるような世界側の人間でありたいとすごく思いました。できてないので、自分が。」
アイとオール、アイとユウ。
すなわち、わたしと世界、わたしとあなた。
「理解できなくても愛することができるっていうことを言ってくれるような世界であってほしいですよね。いまは逆に行ってるから。ほんとにえらそうなことは言えないんですけど、こわがるよりは、理解できなくても愛せる世界でありたいなと思います。自分自身もほんとすぐに殻を作って、ボーダーを作ってしまう人間なので、だから、いつだって小説のほうが私より勇敢で、こうでありたいということを書いています。」
誰かが苦しんでいるときに、浜辺でそっと待ってあげられるような世界。
そんな世界であってほしい。
西加奈子さんは静かに、でも力強く、そう語ってくれました。
とのことでした。最近、よく巷で語られる「多様性(ダイバーシティ)」ですが、西加奈子さんは、世間ではまだまだ理解が進んでいない社会的少数派のことについて、深く考察され、小説として巧みに表現されていたんですね!
自分の浅はかさにガッカリすると同時に、西加奈子さんの才能の素晴らしさに感動しました。
が、小説のおもしろさとしては、やはり評価を下げざるを得ず・・・、
★★★3つです。
~「この世界にアイは存在しません。」入学式の翌日、数学教師は言った。
ひとりだけ、え、と声を出した。ワイルド曽田アイ。
その言葉は、アイに衝撃を与え、彼女の胸に居座り続けることになる。ある「奇跡」が起こるまでは―。
「想うこと」で生まれる圧倒的な強さと優しさ―直木賞作家・西加奈子の渾身の「叫び」に心揺さぶられる傑作長編!「BOOK」データベースより
西加奈子さんの作品は、かれこれ5作目ですが、当たりハズレがあって、なかなか評価がし辛い作家さんですね。もちろん『漁港の肉子ちゃん』は最高ですよ。でもそれ以外は、なかなかねぇ~。
話題作の『サラバ!(上下巻)』は、未読ですので、いつか読んでみたいと思っています。
さて、本作ですが、これは中々読みづらい作品でしたね。
皆さんも、ブラット・ピットとアンジェリーナ・ジョリーが、全く二人に似ていない子どもを連れて歩いている映像を見たことがあると思います。
本作のヒロインの『アイ』も、幼い頃に、アメリカ人の父と日本人の母のもとへ、養子としてシリアからやってきたんです。もちろん両親のどちらとも似ておらず、小さい頃から心に傷をおって、それをひた隠しに隠して生きて行きます。
小学校や中学校でも、同級生たちに心を開くことは出来ず、とても苦しい学生生活を送るアイ。ここまでの作品の雰囲気は、『アイ』が頭の中で巡らせている内容がほとんどで、しかもその考え方がネガティブで暗くて・・・。
全体的に物語の構成も明るい要素が少なく、アイのネガティブ思考に汚染されて、どんよりとした気持ちのまま読み続けました。
アイが高校に進学して初めて、『ミナ』というかけがえの無い親友と出会うことが出来ます。そこで少し光明が射すのですが、なかなかスッキリとせず、その後、出逢った運命の男性『ユウ』と夫婦になり、新たな人生がスタートします。
なんとかハッピーエンドをと望むのですが、これもなかなか叶わず・・・。
読み終えた後も「これはあんまりオススメできひんね」と落胆しながらブログを書き始めたのですが、ふと、西加奈子さんのインタビュー記事をネットで発見して呼んで見ると・・・。
~西加奈子さん最新作『i』。多様性を織り込んだ物語の誕生秘話。~
~主人公アイと、彼女の親友、ミナ。 そして、大切な男性、ユウ。この3人のことについて、西加奈子さんは、こんなことを話してくれました。
「あのミナちゃんっていう親友は、私自身がミナちゃんになりたいし、そういう世界、ミナってAllのミナでもあるので、そういう世界の一員でありたいなという想いを込めて書きました。すごく今、Iっていう個人が、Allがいるから存在しているっていう状況になっている気がするんです。例えば、国があるからあなたがいます、ってそれってこわいなと思って。もっとIとAllはイーブンでいいし、平等な関係でいいし、ミナも、Allも失敗することもあるし、Iも失敗することがあるから、それを支え合っていけるのが、一番いい世界と個人の関係なんじゃないかなと思って。そういう世界でありたいし、そういう個人でもありたいです。だから、ミナとアイの関係、あとは、ユウとアイ、ユウも他者なので、自分もそういう関係性を築きたいと願いを込めて書きました。だからやさしいでしょ、ミナとユウって。そうでありたいんです、自分が。個人がアイデンティティでさまよっているときとか苦しんでいるときに、浜辺で待ってあげられるような世界側の人間でありたいとすごく思いました。できてないので、自分が。」
アイとオール、アイとユウ。
すなわち、わたしと世界、わたしとあなた。
「理解できなくても愛することができるっていうことを言ってくれるような世界であってほしいですよね。いまは逆に行ってるから。ほんとにえらそうなことは言えないんですけど、こわがるよりは、理解できなくても愛せる世界でありたいなと思います。自分自身もほんとすぐに殻を作って、ボーダーを作ってしまう人間なので、だから、いつだって小説のほうが私より勇敢で、こうでありたいということを書いています。」
誰かが苦しんでいるときに、浜辺でそっと待ってあげられるような世界。
そんな世界であってほしい。
西加奈子さんは静かに、でも力強く、そう語ってくれました。
とのことでした。最近、よく巷で語られる「多様性(ダイバーシティ)」ですが、西加奈子さんは、世間ではまだまだ理解が進んでいない社会的少数派のことについて、深く考察され、小説として巧みに表現されていたんですね!
自分の浅はかさにガッカリすると同時に、西加奈子さんの才能の素晴らしさに感動しました。
が、小説のおもしろさとしては、やはり評価を下げざるを得ず・・・、
★★★3つです。
これが、【 i(アイ) 】と深く関わっているようだ。
読書百遍意自ずからから通ずで捉えると、数学用語などの【素数】【完全数】【一周期】(ワンサイクル)などを彷彿させる。
この情景は、大和言葉の【ひ・ふ・み・よ・い・む・な・や・こ・と】をを賛歌する昭和歌謡の本歌取り[i(アイ)のさざなみ]にある。