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やっと読み終えました!「半島を出よ 上・下巻 村上龍」
2011年春、九人の北朝鮮の武装コマンドが、開幕ゲーム中の福岡ドームを占拠した。さらに二時間後に、約五百名の特殊部隊が来襲し、市中心部を制圧。彼らは北朝鮮の「反乱軍」を名乗った。慌てる日本政府を尻目に、福岡に潜伏する若者たちが動き出す。国際的孤立を深める日本に起こった奇蹟!話題をさらったベストセラー、ついに文庫化。 「BOOK」データベースより
モチロン!スッゴク!面白かったです!上下巻セットでしたので、とても読みごたえがありましたが、一気に読みました。
どなたかが「早く読みたいような、読み終わりたくないような・・・」と書いておられましたが、まさにその通りでした。
発刊当時から、ずっと読みたかったんですが、2冊で4,000円弱は、僕にとってもかなりの高額出費だったため我慢していたんですよ。
そしたら、僕の良く行く古本屋に2冊セットで1,200円、割り引きポイントが貯まっていたんで500円引きで、700円で買えました!スゴイお得でしょう?
以前、「海辺のカフカ・村上春樹」の頁で触れましたが、僕は、村上龍と村上春樹が大好物です。
その村上龍の、「希望の国のエクソダス 2002年5月発刊」が、閉塞した日本を未来を憂いた日本人の中学生が、「「この国には何でもある。…だが、希望だけがない」と発信し、それに共鳴した中学生30万人とともに、最終的には北海道で独立国家のようなものを作り上げるという内容でした。
この作品にも深い感銘をうけましたが、「半島を出よ」には、さらなる深い感銘を受けましたね。
この本が発刊されたのが2005年3月ですから、実際の執筆は、それより1年~2年は前に書かれているということですね。
「希望の国のエクソダス」を発行して、その直後から構想を練られたのか?もしかすると「希望の国を・・」を書きながら、「半島を出よ」という、外国の圧力によって日本に風穴をあけるストーリーを積み上げられたのかもしれません。
下巻の最後にある「参考文献」の量を見るだけでも、「ものすごい小説を書き上げられたんだなぁ~」と、あらためて、村上龍という著者の識見の高さはもちろんの事、人間的な深みを感じずにはいられません。
・・・・これ以降は、ストーリーの結末を示唆する内容もありますので、まだ読んでおられなくて、「読んでみたい」と思っておられる方は、読まないで下さいね。
村上龍の独特の世界観が如実に表現されていますが、いわゆるエログロな部分は非常にソフトに描かれており、女性の方にでも安心してオススメできます。
さて本編ですが、物語は2010年暮れからスタートします。
冒頭に、北朝鮮が日本を侵略する作戦を立てるのですが、その作戦を協議する北朝鮮高官達の会話の中で、ある高官が・・・
「日本の場合、金食い虫である官営組織の特殊法人をつぶすのが急務でしたが、それは結局できず、それよりはるかに簡単な憲法改正に向かおうとしてます。商工の会社に例えると、利益を上げられなくなった会社が利益を上げようとしないで社則を改正するのと同じです。日本は治療する勇気をを持てなかった死ににゆく巨象です。」
と、語ります。実に的を得た論理だと思いませんか? 現在の日本の政治の流れを見ているようです。あと3年もしたら日本の政治・経済のシステムは崩壊しているかもしれませんね。
「反乱軍であって反乱軍ではなく、反乱軍ではないが反乱軍でもある」というセリフが会議の中で出てきます。これが全てのキーワードで、ただの北朝鮮からの侵略者なら、北朝鮮という国家に対して国連や米国も抗議や攻撃ができるのですが、北朝鮮から逃げてきたという設定のために、誰も手が出せないんですね。
まず、Phase1として、9人の北朝鮮特殊戦部隊は、いとも簡単にプロ野球の試合中に福岡ドーム(現在のヤフードーム)を占拠し3万人の観客を人質に様々な要求をします。
日本の警察や自衛隊は、「人質」という言葉に大変弱いんですね。まだ記憶に新しい愛知県長久手町の立てこもり事件で、警官や機動隊員が撃たれているのにもかかわらず、「突入するでなし、犯人を狙撃するでなし」という、何ともだらしない面を露呈しました。
この事件に顕れているように、人質がとられていると、完全に動きが止まってしまう日本の体質ですね。
これを逆手に取り、まずドームの観客を人質に取ると、Phase2として、2時間後には500人の四個中隊が飛行機で上陸。さらに周辺地域を制圧し、最後のPhase3で特殊第八軍団12万人が大船団で博多港から上陸し、自分達の支配化の下で福岡を独立さすという作戦ですわ。
実に見事な作戦です!
これに翻弄される日本政府・警察・自衛隊・マスコミ、そして国民の大多数・・・
しかし、この完璧とも思える作戦を阻止するのが、イシハラというリーダーのもとに集まってきた、過去に凶悪犯罪を犯し、暗い過去を持つ少年たちです。
この少年たちが実に奇怪で、超個性派ぞろいです。
人と一緒に何かをするというのが苦手で、バラバラの個性を尊重し、たがいに干渉しあうことなく、自由に暮らしています。
しかし、この侵略を目の当たりにして少年たちの心は躍ります。
福岡ドーム占拠のテレビ中継を見ながら、「これまで自分達を制圧したり処罰してきた一般社会が力を奪われるのが爽快だった」と、武装ゲリラに拍手を送り、一度は「応援に行こう!協力しよう!」と盛り上がりますが、最終的にイシハラが「こいつらは敵だ」と宣言します。
まぁそれから、右往左往する日本政府を尻目に、北朝鮮ゲリラは自ら「高麗(コリョ)遠征軍」と名乗り、「福岡を共存統治」する作戦を展開していきます。
その最中、大濠公園での事件が起こり・・・下巻へ続く・・・となります。
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下巻は、12万人の第八軍団が日本に迫り、福岡ではソフト・ハードの両面で占領政策が着々と進む中、日本政府も自衛隊も何も出来ないままでいるのに、全くの個人の集合体であるイシハラグループが反撃に出ます。
イシハラグループの「微妙な頼りがいの無さ」と、「オタクの域を超えたその道のプロ」が、完全無欠のコリョ軍団を相手に戦いを挑む姿は、爽快で感動すら覚えます。(涙が出る感動ではないが・・・。)
ものすごいスピードでエンディングに向かっていく訳ですが、楽しいストーリー展開ですよ。
小説を読み終えて、「もう一度読み返したい!」と思ったのは久しぶりですね。
なんせ、登場人物が多いし、その人物の人生模様が複雑で覚えるのが大変。(^_^;)
イシハラグループもコリョ遠征軍も・・・(゜Д゜;≡;゜Д゜)
その上、舞台がイロイロ入れ替わる(基本的に北朝鮮と福岡と東京)し、ロケーションがコロコロ変わるので大変ですわ。
(゜Д゜;≡;゜Д゜)
福岡ドーム周辺の地理やシーホークホテル・ホークスタウンに何度も足を運ばれている方には、よく理解できるでしょうがね。
とりあえず1回目はストーリーを追いかけるのに必死だったので、2回目は、登場人物や背景にも気を配って、より深く読み解いていきたいと思います。
ネットで情報を拾っていると、「映画化の予定」とのことですので、是非とも映画化してもらって、今の日本の各階各層のトップリーダー達に観てもらって、現実と比較しながら、「こういうことも起こりえる!」ということを認識し、今後の対策の糧にしてもらったらいかがでしょう?
総理の諮問機関である「●○●○会議」などに、変な学者や評論家や経営者ばかりでなく、是非とも村上龍氏を入れてもらいたいものです。
★★★★★5つです!!
そして、様々な書評も記されていますので、興味のある方は、ご一読を・・・
・池内 恵(国際政治学者・日文研助教授)「横溢する危機意識」
う~~~~ん!という感じ。
・book review 純文学系小説の書評・紹介
「ここまで分析するか!」というほど、ある意味「龍マニア」でもある。よくわかる内容です。
2011年春、九人の北朝鮮の武装コマンドが、開幕ゲーム中の福岡ドームを占拠した。さらに二時間後に、約五百名の特殊部隊が来襲し、市中心部を制圧。彼らは北朝鮮の「反乱軍」を名乗った。慌てる日本政府を尻目に、福岡に潜伏する若者たちが動き出す。国際的孤立を深める日本に起こった奇蹟!話題をさらったベストセラー、ついに文庫化。 「BOOK」データベースより
モチロン!スッゴク!面白かったです!上下巻セットでしたので、とても読みごたえがありましたが、一気に読みました。
どなたかが「早く読みたいような、読み終わりたくないような・・・」と書いておられましたが、まさにその通りでした。
発刊当時から、ずっと読みたかったんですが、2冊で4,000円弱は、僕にとってもかなりの高額出費だったため我慢していたんですよ。
そしたら、僕の良く行く古本屋に2冊セットで1,200円、割り引きポイントが貯まっていたんで500円引きで、700円で買えました!スゴイお得でしょう?
以前、「海辺のカフカ・村上春樹」の頁で触れましたが、僕は、村上龍と村上春樹が大好物です。
その村上龍の、「希望の国のエクソダス 2002年5月発刊」が、閉塞した日本を未来を憂いた日本人の中学生が、「「この国には何でもある。…だが、希望だけがない」と発信し、それに共鳴した中学生30万人とともに、最終的には北海道で独立国家のようなものを作り上げるという内容でした。
この作品にも深い感銘をうけましたが、「半島を出よ」には、さらなる深い感銘を受けましたね。
この本が発刊されたのが2005年3月ですから、実際の執筆は、それより1年~2年は前に書かれているということですね。
「希望の国のエクソダス」を発行して、その直後から構想を練られたのか?もしかすると「希望の国を・・」を書きながら、「半島を出よ」という、外国の圧力によって日本に風穴をあけるストーリーを積み上げられたのかもしれません。
下巻の最後にある「参考文献」の量を見るだけでも、「ものすごい小説を書き上げられたんだなぁ~」と、あらためて、村上龍という著者の識見の高さはもちろんの事、人間的な深みを感じずにはいられません。
・・・・これ以降は、ストーリーの結末を示唆する内容もありますので、まだ読んでおられなくて、「読んでみたい」と思っておられる方は、読まないで下さいね。
村上龍の独特の世界観が如実に表現されていますが、いわゆるエログロな部分は非常にソフトに描かれており、女性の方にでも安心してオススメできます。
さて本編ですが、物語は2010年暮れからスタートします。
冒頭に、北朝鮮が日本を侵略する作戦を立てるのですが、その作戦を協議する北朝鮮高官達の会話の中で、ある高官が・・・
「日本の場合、金食い虫である官営組織の特殊法人をつぶすのが急務でしたが、それは結局できず、それよりはるかに簡単な憲法改正に向かおうとしてます。商工の会社に例えると、利益を上げられなくなった会社が利益を上げようとしないで社則を改正するのと同じです。日本は治療する勇気をを持てなかった死ににゆく巨象です。」
と、語ります。実に的を得た論理だと思いませんか? 現在の日本の政治の流れを見ているようです。あと3年もしたら日本の政治・経済のシステムは崩壊しているかもしれませんね。
「反乱軍であって反乱軍ではなく、反乱軍ではないが反乱軍でもある」というセリフが会議の中で出てきます。これが全てのキーワードで、ただの北朝鮮からの侵略者なら、北朝鮮という国家に対して国連や米国も抗議や攻撃ができるのですが、北朝鮮から逃げてきたという設定のために、誰も手が出せないんですね。
まず、Phase1として、9人の北朝鮮特殊戦部隊は、いとも簡単にプロ野球の試合中に福岡ドーム(現在のヤフードーム)を占拠し3万人の観客を人質に様々な要求をします。
日本の警察や自衛隊は、「人質」という言葉に大変弱いんですね。まだ記憶に新しい愛知県長久手町の立てこもり事件で、警官や機動隊員が撃たれているのにもかかわらず、「突入するでなし、犯人を狙撃するでなし」という、何ともだらしない面を露呈しました。
この事件に顕れているように、人質がとられていると、完全に動きが止まってしまう日本の体質ですね。
これを逆手に取り、まずドームの観客を人質に取ると、Phase2として、2時間後には500人の四個中隊が飛行機で上陸。さらに周辺地域を制圧し、最後のPhase3で特殊第八軍団12万人が大船団で博多港から上陸し、自分達の支配化の下で福岡を独立さすという作戦ですわ。
実に見事な作戦です!
これに翻弄される日本政府・警察・自衛隊・マスコミ、そして国民の大多数・・・
しかし、この完璧とも思える作戦を阻止するのが、イシハラというリーダーのもとに集まってきた、過去に凶悪犯罪を犯し、暗い過去を持つ少年たちです。
この少年たちが実に奇怪で、超個性派ぞろいです。
人と一緒に何かをするというのが苦手で、バラバラの個性を尊重し、たがいに干渉しあうことなく、自由に暮らしています。
しかし、この侵略を目の当たりにして少年たちの心は躍ります。
福岡ドーム占拠のテレビ中継を見ながら、「これまで自分達を制圧したり処罰してきた一般社会が力を奪われるのが爽快だった」と、武装ゲリラに拍手を送り、一度は「応援に行こう!協力しよう!」と盛り上がりますが、最終的にイシハラが「こいつらは敵だ」と宣言します。
まぁそれから、右往左往する日本政府を尻目に、北朝鮮ゲリラは自ら「高麗(コリョ)遠征軍」と名乗り、「福岡を共存統治」する作戦を展開していきます。
その最中、大濠公園での事件が起こり・・・下巻へ続く・・・となります。
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下巻は、12万人の第八軍団が日本に迫り、福岡ではソフト・ハードの両面で占領政策が着々と進む中、日本政府も自衛隊も何も出来ないままでいるのに、全くの個人の集合体であるイシハラグループが反撃に出ます。
イシハラグループの「微妙な頼りがいの無さ」と、「オタクの域を超えたその道のプロ」が、完全無欠のコリョ軍団を相手に戦いを挑む姿は、爽快で感動すら覚えます。(涙が出る感動ではないが・・・。)
ものすごいスピードでエンディングに向かっていく訳ですが、楽しいストーリー展開ですよ。
小説を読み終えて、「もう一度読み返したい!」と思ったのは久しぶりですね。
なんせ、登場人物が多いし、その人物の人生模様が複雑で覚えるのが大変。(^_^;)
イシハラグループもコリョ遠征軍も・・・(゜Д゜;≡;゜Д゜)
その上、舞台がイロイロ入れ替わる(基本的に北朝鮮と福岡と東京)し、ロケーションがコロコロ変わるので大変ですわ。
(゜Д゜;≡;゜Д゜)
福岡ドーム周辺の地理やシーホークホテル・ホークスタウンに何度も足を運ばれている方には、よく理解できるでしょうがね。
とりあえず1回目はストーリーを追いかけるのに必死だったので、2回目は、登場人物や背景にも気を配って、より深く読み解いていきたいと思います。
ネットで情報を拾っていると、「映画化の予定」とのことですので、是非とも映画化してもらって、今の日本の各階各層のトップリーダー達に観てもらって、現実と比較しながら、「こういうことも起こりえる!」ということを認識し、今後の対策の糧にしてもらったらいかがでしょう?
総理の諮問機関である「●○●○会議」などに、変な学者や評論家や経営者ばかりでなく、是非とも村上龍氏を入れてもらいたいものです。
★★★★★5つです!!
そして、様々な書評も記されていますので、興味のある方は、ご一読を・・・
・池内 恵(国際政治学者・日文研助教授)「横溢する危機意識」
う~~~~ん!という感じ。
・book review 純文学系小説の書評・紹介
「ここまで分析するか!」というほど、ある意味「龍マニア」でもある。よくわかる内容です。
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