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ストーカーの努力って?「消えない月」by畑野智美

2018年09月06日 | 小説レビュー
出版社に勤務する松原とマッサージ師のさくら。二人は付き合いはじめ、やがて別れる。それで終わりのはずだった。
婚約までした男と女の関係は、はじめから狂っていたのかもしれない。
加害者と被害者、ふたつの視点から「ストーカー」に斬り込んだ、残酷にして無垢な衝撃作!!「BOOK」データベースより


実際にストーカー被害に遭われた方にとっては、読むのも辛い作品だと思います。畑野智美さんの作品は『海の見える街』以来で、人物描写の上手な作家さんですね。

しかし、今回のヒロインのさくらについては、心理状態の移り変わりに少し首を傾げる部分が多くありましたし、「もっとしっかりせいよ!」と思ったりしましたが、ストーカー被害に遭われる女性というのは、やはり相手に付け入られる隙というか弱い考え方を持ってしまうもんなんでしょうかね?

また、同僚の池田さんや受付の女の子など、脇役のセリフや行動にも疑問を感じる点が多々あります。

もちろんストーカーの松原の独善的で病的な考え方については、共感も納得も全く出来ません。育った環境というのを考慮しても酷すぎますね。

キャラクターに共感は出来なくても、ストーリーとしては非常におもしろく、「動と静」というか「緊張と緩和」、「都会と田舎」みたいに、少し息抜きの場面がありますが、「こんな平穏な時間が続くわけがないわ・・・(-_-;) いよいよヤツが・・・(@Д@;)」と、思いながらページを捲りました。

現実に充分起こりえる事件で、ネット社会の怖さと、ストーカーの執念深さを思い知らされます。

文中に「ストーカーは一瞬の隙を突いてきます!」、「ストーカーは警察よりも被害者よりも努力します」など、真に迫ったセリフが現実のものとなって被害者に襲い掛かります。

最後に犯人の独白で終わり、後味の悪い作品でしたが、読み物としては、なかなかの出来だと思います。

★★★3つです。


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