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旅行記、世相独言

中世のテーマパーク -チェスター-(異文化体験24 LNG-11の旅3)

2012年07月21日 12時57分26秒 | 異文化体験_西欧
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中世のテーマパーク -チェスター-  1995.7.4

      
(左)「チェスター」の案内書             (右)「チェスターの街(絵葉書)」

 私の右腕のOマネジャーはかつて英国留学の経験者。彼のお薦めで「チェスター」というリバプールに近い街を、パリで荷物が飛行機に乗り遅れたT氏と共に訪れることになった。車で約1時間半のドライブである。

 商売柄セントラルヒーティングや厨房等の資料図書は即購入

 今から1900年ほど前、古代ローマ人がウェールズ人制圧のためにディー川周辺の砂岩質台地に砦を築き、要塞都市としてスタートしたチェスターには、イングランド最大の円形劇場等、今も多くの遺跡が残されている。驚くことにハイポ・コーストと呼ばれる床下暖房が復元されており、これはローマ時代の基本的なセントラル・ヒーテイング・システムであったとか。

 城壁で囲まれた旧市街、その入口の一つ

 ローマ人撤退後、アングロ・サクソン人が侵攻し、教会や競馬場(最古の競馬場の一つと言われている)、更には港も栄え始めた。中世のチェスターは1175年に初のロイヤル・チャーター(王の勅許)を受けアイルランドとの貿易権が認められ、沿岸貿易が発達すると共に、王位継承者がチェスター伯となる習慣が根づく等、その後の発展の基礎が築かれた。

 「チェスター」の市街略図(旧市街は750×500mの狭い空間)

 チューダー朝、アチュアート朝、ジョージ朝、ヴィクトリア朝、そして現代に続く歴史の中で様々な建築様式の建物が、その伝統を今に伝えている。チェスターはコンサベーション・オフィサー(建物保護を担当する役職)を英国で初めて設けた街でもある。

 
(左)チューダー様式の綺麗な建物とロウズと呼ばれる連結歩行モール (右)典型的な建築様式(案内書より)

 中世にタイムスリップしたかのような白壁に黒い木枠の美しい建物が連なる街並みは、まるでテーマパークに迷い込んだような錯覚を受ける。最初に訪れたチェスター大聖堂は、時々の信仰の中心地として幾度か建替えられ、現在の大聖堂は1250年に着工し250年余の歳月を費やして建てられた重厚な教会である。

        
(左)1250年に着工、250年を経て完成した現チェスター大聖堂   (右)大聖堂の案内書

 賑やかなストリートは、中世の外観を持つ近代的ショッピング・モール「ロウズ」がのびており、バラエティ豊かな店やレストラン、居酒屋が軒を連ねている。一見分かり難いが2階部分が連なっているため車や雨を気にせずにショッピングや食事を楽しめる。
 簡単な昼食を取ろうと「ロウズ」をうろうろとレストランを探すが、いずこも満席でやっとの思いでありつけた次第。

 街の中心部「ザ・クロス」での布告のデモンストレーション

 街の中心部の四つ角「ザ・クロス」は、何世紀にもわたって商業と行政の中心であり、布告を触れ回る役人のオフィスを復元し、当時の衣装を着た役人が大きな声で実際にデモンストレーションをやっている。

      
(左)イーストゲート・ストリートを跨ぐ「イーストゲート・クロック」 (右)クロックの拡大

 イーストゲート・ストリートを跨ぐ橋の上には、今や街の象徴ともなったイーストゲート・クロックが目を引き付ける。ヴィクトリア女王即位60周年を記念して1899年に設置された時計である。

 旧市街地は南北750m、東西500m程度の小さな街であるが、多くの観光客で賑わっている。午後3時頃、名残惜しくバーミンガムに向けて車を走らせる。

 今夕はシェルのレセプションが待っている。