松山選手のマスターズ制覇に思う グリーンジャケットとダブルボギー
2021年度第85回マスターズは、日本のゴルフプレイヤーたちにとって忘れられない大会となった。過去、日本のゴルファーたちが挑み続け誰もがなしえなかったゴルフトーナメントの最高峰「マスターズ」に、ついに日本人の名前が刻まれた。
4月11日、松山英樹選手の快挙を見届けようと、多くのファンが深夜から早朝にかけてのテレビ中継に一喜一憂しながら固唾をのんで見守った。
2打差をもって臨んだ最終18番、第1打で喜び、第2打で憂慮し、第3打で勝利を確信し、1打差で勝利を手中に収めた瞬間に、自然と涙する人も多かったであろう。
ダブルボギーのない素晴らしいラウンドは、誰もが認める彼の並々ならぬ練習によるテクニックとオーガストという難コースのマネージメント戦略の習得によるものだろう。そして10度目の挑戦にして、ついにオーガスタの女神を呼び寄せ、認めさせることが出来たのであろう。
松山選手の素晴らしいプレイとチーム松山の総合力がグリーンジャケットを手中にしたように思う。心からの敬意と祝意を送りたい。
ただ一つ、個人的に残念であったのは、全72ホールを3イーグル、13バーディ、9ボギーという、ダブルボギーのない素晴らしい成績で回ったのだが、場外で1つのダブルボギーがあったように思う。
それは、表彰式でのこと。あのシャイな松山選手が前回優勝のジョンソン選手からグリーンジャケットをかけてもらい、小躍りして両手を突き上げ喜びを爆発させたのは、普段決して見ることのできないほほえましい光景であったのだが、その直後、主催者から優勝スピーチを要請された彼のスピーチは、残念ながら私は唯一のダブルボギーであったと思う。
彼のスピーチは、優勝できたことを喜ぶとともに、ファンへの感謝の言葉であった。通常、こういった大きな大会での公式スピーチでは、まず主催者はじめ多くの大会運営の関係者への謝意があるべきで、特に今回はコロナ禍での大会で運営関係者の努力は並大抵のものではなかったはず。見かねた通訳からナショナルオーガスタへの謝意を述べなさいと耳打ちされたのは、やはりダブルボギーと言わざるを得ない。
もう一つ残念なのは、部分的でも英語でのスピーチが欲しかったが、サンキューの一言であった。10年間、米国でプレイしてきた人間として、また日本の最高学府を出た選手として少し寂しい思いをしたのは、私だけではないであろう。
ただ、早藤将太キャディのとった行為が、松山選手のこのダブルボギーをボギー程度に軽減したかも知れない、素晴らしい行為であった。
マスターズの覇者は、次回以降もこの大会への出場権が与えられる。松山選手にはぜひ次回優勝への宿題として、頑張ってほしい。