前回まで、サカナの話ばっかりで、ちょっと飽き飽きしたところなのですが...

英国で最も多く消費されているサカナ、コッド cod (タラの一種)を調理しました。
賞味期限当日の午後に半額近くで売られていたコッドのフィレット(切り身)を買って帰ってすぐに冷凍しました。
もとの値段の2切れ3ポンド90ペンス(635円)はけっこう高いですね。
コッドのフィレットは、軽く小麦粉をはたいて熱くしたフライパンに溶かしたバターでジュっと焼くものすごく簡単なサカナ料理にぴったりです。刻んだパセリを散らしてレモンを添えればちょっとしたごちそうに見えます。
半額落ちで冷凍2週間の落ちぶれコッドの末路は「カレーの具」、ちょっともったいないですが。
「FAVORITE VW CAMPER RECIPES キャンピングカーの定番料理」というお土産レシピ本の、「Coastal Fish Curry 海岸のサカナのカレー」レシピを使いました。
キャンパー・バン camper van (キャンピングカー)でのキャンプホリデーにぴったりの、缶詰やインスタント食材を上手に利用して簡易コンロで調理できる簡単な料理を集めた秀逸レシピ本です。

海辺のキャンプにおススメだと思われるこの「海岸のサカナカレー」には釣ったサカナを使うところがポイントなのでしょう。

「VWキャンパー」はキャンピングカーの代名詞です。英国では、日本ではおなじみの「フォルクス・ワーゲン」通じません。
英国の家庭で作るカレー一般と言えば、これ!

トマト・ベースの赤いカレーです。
刻んだタマネギ1個をよく炒め、しんなりしてきたら大さじ1杯のカレー粉と具をくわえてさらに炒め、缶詰のトマト(標準の400g)と砕いた固形のストック(具がサカナならフィッシュ・ストック)を加え、煮たてた後弱火でさらに2~3分。
今さら、レシピを見なくても誰もが知っているかんたんな標準レシピです。
カレー粉は赤い缶のS&Bカレー粉を、ストックの代りに「コンソメスープの素」を使えば日本でも同じ英国家庭の標準版カレーが作れます。
ひさしぶりのこのカレー、夫にも好評でした。(レシピにはない、黄色いピーマンもいれました)

日本風に、ライスを添えて盛り付けましたが、このライスは日本の白米ではありません。
インド産のバスマッティという長めの粘り気のないライスを使いました。火加減など気にせず簡単にやわらかく美味しく炊ける便利なライスです。キャンピングカー向きかもしれません。
(日本米はスーシー・ライス sushi rice といわれ、カリフォルニア産のものが手に入ります)
このキャンピングカー料理のレシピ本には見ていて楽しいレトロな写真がたくさん使われています。
調理された料理の写真は1枚もありません。

(☝冷蔵庫、あけっぱなし)
見ていてたしかに楽しいのですが、強烈な違和感を覚えるのも事実です。
強烈な違和感の出どころは明らかです。
調理しているのはすべて女性!

家族の息抜きホリデーなのにやっぱり主婦は料理している!

現在、英国のテレビのコマーシャルや新聞雑誌などの宣伝写真で家事をしているのはほとんどが男性です。料理シーンに至ってはほぼ100%が男性と言ってもいいかもしれません。
例外的に料理している女性は(おしゃれな)1人暮らしか、明るい母子家庭であることが想定できるようになっています。
いつもコマーシャルにきれいな女性が登場する充電式の小型掃除機は「女性でも片手で持って階段を上がれる」驚きの軽さが宣伝ポイントの一つだったり。
「家事は女性がやるもの」というジェンダー・ステレオタイプを打破するために少なくともこの10年の間に一般的になってきた社会意識の改革キャンペーンの一環のはずです。企業イメージも上がるはずです。
今や女性が家族のために料理している場面をコマーシャルに使えば批判が殺到しそうな風潮ですが、啓蒙運動なので多少オーバーな方が効果的でいいと思います。
2020年の Black Lives Matter 運動以降、テレビのコマーシャルに登場する人物の過半数が非白人(黒人が圧倒的に多いの)です。家族の場面に登場するのは黒人家庭か黒人と白人のミックス家族が80%ぐらいを占めています。
現実の英国社会を反映していない(黒人の人口は全人口の3%)という批判もありますが、私はいい傾向だと思っています。啓蒙ですからとにかくオーバーに!!英国社会を形成しているのは大多数を占める白人だけではない、ということをいくら言っても絶対に言い足りないはずですから!!!!
そしてテレビのコマーシャルへの非白人のアンバランスな比率の登場が顕著になってから、「コマーシャルに出てくる家庭シーンで家事をやるのは男性に限る」傾向も以前よりもさらに強くなっている気がします。
「女性は運転がヘタ、女性はコンピューター/政治経済 のことが分らないのでしょっちゅう夫に聞く」という宣伝コンセプトとしても有効だったというジェンダー・ステレオタイプは女性からの批判を受けてずいぶん前に廃れたそうです。
それなのに、それに対応する「男性が洗濯すると洗濯物が縮む、男性が料理をすると焦がす」などという家事にまつわるジェンダー・ステレオタイプはかなり根強くのこったようです。
夫に洗濯を任せても失敗がない、パパが料理してもママと同じようにおいしくできる...などが有効な宣伝コンセプトのいい例です。それが男性の能力を差別していることと、家事を女性に押し付ける正当化につながると大勢の意識が一致するまでにちょっと時間がかかったみたいですね。
家電製品や食材を買う時の決定権を主に持つ女性が嫌がらなかったから、かもしれません。
2000年頃には撤廃するよう広告業界で申し合わせたようです。
話が大きくそれました!
その頃(日本でいえば昭和ですね)の明るく楽しいファミリーレジャーのシーンが郷愁をさそうレトロなレシピ本、2009年の出版でした。
