今日の話題はいかげんしつこいエリザベス女王の戴冠70周年 記念祝祭 Platinum Jubilee Celebration ではありません。
...と言っても、上の写真はやっぱりユニオン・フラッグ(連合応国旗)をあしらった愛国的な戴冠70周年記念を盛り上げる飾りつけですが。
金曜日に行ったマンチェスターの、セント・ピーターズ・スクエア St.Peter's Square に面したオフィスビルの入り口です。
ちり紙の花で飾った日本の小学校の運動会の入退場門の豪華版みたいですね。
王室の紋章でもある国花のバラではなく、藤、ボタン、アスター(?)、フリージア、ストックそれにポピーの造花で飾られています。
そう、ポピー。
近所の集会所の、10年ほど前は花壇にぎっしりと咲きそろっていたフランダース・ポピーが抜かれたあと、場所を少し移して歩道と花壇のすき間にけなげに自生しています。
わき道をはさんだとなりの家の門の下で一輪、風に揺れる可憐なポピー、横にも数本自生しています。
話がひょいひょい飛びますが、先週の水曜日に娘と寄った水辺の近未来都市、マンチェスターのそばのサルフォード・キィズ Salford Quays の...埠頭の向こうのこの...
奇抜な建築物の筆頭、帝国戦争博物館北館 IWM Northの...
屋内の吹きさらしの一角によびもののポピーのカスケード(滝)のディスプレイが設置されていました。
食事のあと、1人で映画を見てから徒歩の距離の学生寮に戻る娘と一緒に時間つぶしに入った入館無料の博物館です。
ポピーのディスプレイは入館受付で、まず最初に見ていくようにかなり熱心にすすめられました。
英国人にとって、赤いポピー(フランダース・ポピー)とは何か?
第一次世界大戦終了後、戦場だったフランダースの野原に一面に咲いた赤いポピーが戦没した兵士の犠牲を悼む象徴として認識され始めました。ポピーの赤は戦場に斃れた兵士の血の色だそうです。
多くの英国民が第一次大戦の休戦記念日のある11月になると、第一次、第二次両大戦での戦没者の死を悼み、また彼らの犠牲に感謝の意をあらわすために紙製の赤いポピーを胸につけるのです。
第一次大戦開戦100周年の2014年に、英国陸軍の軍事要塞でもあるロンドンの観光名所、ロンドン塔 The Tower of London のお堀を陶器製の紅いポピーで埋め尽くすインスタレーション・アートが展開されました。
マンチェスターの地方紙から勝手に借りた写真です。
インスタレーションが終わった後、一部をこっちにちょっと移してきた永久展示らしいのです。
私たちにはそれほど興味が持てない展示内容をだらだら見ている途中にとつぜん電気が消えて(まあ、上映予告と暗くなることへの警告は入場時にきいていましたが)...
10年ぐらい前に来館した時にはなかった、戦死者についての感傷的なドキュメンタリー短編映画を(ほぼ強制的に)見せられることになりました。
英国の軍隊はそういえば第二次大戦が終わった後もかなりたくさんの国際紛争に派兵しているんですよね、フォークランド、湾岸戦争、ボスニア、アフガニスタン、イラク...私と同世代の兵士も過去に実際の戦闘に巻き込まれて戦死しているのはもちろん知っていましたが、あらためて「遺族が語る故人の思い出」なんかを聞かされるとたしかに、しんみりとします。
...がしかし、徴兵されたわけではなく自分から好き好んで軍務についた人たちです。死の危険を承知で職業の選択をした人たちに起こった最悪の事態を「国家のためになしうる、最も貴い最大の犠牲」なんて美談にしてしまって本当に良いのでしょうか。
若い人たちが亡くなれば誰だって本当に悲しいですよ、兵士の死が決して特別ではないはずだ...と何となく割り切れない思いで「飽きた」という娘といっしょに博物館を出ました。
娘は映画の後半涙ぐんだそうですが、やっぱり映画にも「飽きた」そうです。
日本でも人気のプレミア・リーグサッカーチームのマンチェスター・ユナイテッドの本拠地が近いサルフォード・キィズに関する情報は、日本語のウェッブサイトでも充実していることを以前にも書きました。
IWM Northは、とりわけイチオシ観光スポットだということですが、私は日本人にはお勧めしません。
ずら~っと展示されている広範囲にわたる分野の戦争に関する貴重な遺物を見て何かを学ぶのは、けっこう困難です!
学校の先生に引率されてすでに学校で学んだことに関する実物を見に行こう!とかしっかりした目的があるのなら話は別ですし、戦争や近代史にすっごく興味がある人などは楽しめるのでしょうけど、普通の人には飽きます!
というより...「ずら~っと展示されている貴重な遺物」を見てまわるだけだった10年前より「軍人の犠牲を尊ぼう」アッピールがより一層強まっちゃってましたから。よりどころのない不安な抵抗感を覚える日本人は少なからずいるでしょう。
軍隊は大嫌いだけどなぜか子供の頃から戦車が好きだといううちの夫も、赤いポピーがらみの最近のこの博物館はカンベンね、と言っています。戦車はありませんし、男性が好む武器の展示も貧弱です。
赤いポピーって愛国的なんですよね。
再び、セント・ピーターズ・スクエアの戴冠70周年記念盛り上げ飾り、背景はマンチェスター中央図書館に市庁舎新館です。
マンチェスターが最も誇るべき(私見)郷土の偉人、エメリン・パンカースト Emmeline Pankhurst 像です。
ミセス・パンカーストは世界で初めて声を上げた女性参政権獲得運動の活動家です。
世界で初めて普通選挙を実施した英国は世界で初めて女性の選挙権も認めています。
アートの一部分である、銅像を囲む低いピンクの石の壁に座って一休みしているとミセス・パンカーストの演説を聞いているような気分に本当になれます!