先週2月24日、朝起きてテレビのニュースをつけて、唖然としました。
まさかのロシアによるウクライナ侵略が夜半のうちに始まっていたのです。
前日のストックポート日報に「ウクライナ/ロシアをめぐる緊張もあり、『今すぐ辞任だ』という事態にはなりにくいと思われます」なんて書いたその翌日です。
当然、ロックダウン期間中に重大な規則違反を重ね、バレたとみればしらじらしい言い訳やウソを並べて辞任を迫られていたボリス(嘘つき・ジョンソン首相)への追及はすっかり宙に飛んでしまいました。
ここヨーロッパが戦争に巻き込まれる可能性もある一大事です。
政情の安定しない(中東やアフリカなどの)非民主国家で時々おこっている、正規の軍隊ではない武装した集団が暴力で主張をとおすようなレベルの扮装とはわけが違います。
ヨーロッパの、独立した民主国家であるウクライナに、西欧自由主義に対抗する最大の国家、核兵器保有国でもあるロシアの軍隊が攻め込んできたのです。
ウクライナの首都キエフの胸が痛むような映像を見ていて、ふと思いついたことは...
「そうだ、チキン・キエフが食べたい」というのん気な衝動でした。
いちばん上の写真が、そういうわけでロシアのキエフ侵攻の日にうちの食卓に上ったチキン・キエフ Chiken Kievです。
ウクライナの首都、キエフの名を冠したチキンカツです。
「キエフ Kiev」は英語としても定着したロシア語だったようですね。
現在防弾チョッキを着てキエフから実況中継する英国のニュース特派員はすべて現地読みらしい「キーフKyiv」と発音しています。
ロシア(ソビエト連邦)から独立した後も長く「キエフ」として定着していたウクライナの首都名が、今回のロシア軍による侵攻事件をきっかけに「キーフ」に統一されたのは独立国家であるウクライナへの支援と敬意の意味もあると思われます。
英国での料理の名前は依然として「チキン・キエフ」です。
薄いチキンのフィレでパセリがたっぷり刻み込まれたガーリックバターを巻いて、パン粉のコロモをつけてオーブンローストしてあります。
切るととろーんと溶けたガーリックバターがお皿全体に滲みだして薫り高いソースの代りになります。
(うちの食卓に出したチキンキエフではなく、オンライン新聞のレシピ写真を勝手に借りて載せたのが上の写真です)
日本でも「キエフ風カツレツ」という名前で紹介されたこともあるそうですが、たぶんそれほど知られていないのではないでしょうか。
英国(それとアメリカ合衆国でも、だそうです)では大人気の家庭で食べられる定番料理です。
「tvディナー(冷凍食品)」やオーブンに入れて焼くだけの半分調理済み食品として出回っています。
日本でいえばエビフライみたいなものでしょうか。
ガーリックバターと、ガーリックバターを巻いた状態のチキンを半冷凍するという過程があって手作りするのはちょっとめんどくさそうです。
オンラインレシピがたくさん見つかったので手作りする人もいるのでしょう。
上の写真を勝手に使わせてもらったBBC Food のレシピサイトでは、厚い胸肉を切り開いて断面に包丁の先を突っ込んでポケットを作り、冷凍したガーリックバターを押し込むというこれまたややこしい独創的な調理法が紹介されています。
半冷凍しなくていいので時短にはなるでしょうけど。(切れ目からバターが流れ出さないのでしょうか)
チキン・キエフは私にとって、思い出深い「イギリスの料理」なのです。
30年ぐらい前、マンチェスターの大学に留学していた時知り合った友人のご両親がクルマで40分ぐらいのリバプール郊外にある実家の夕食に招待してくれました。
外国からの留学生なら英国の家庭料理でおもてなししなきゃ、という気負いはなさそうなご家庭で出てきたのがこのチキン・キエフでした。
すっごく美味しくて、しかも日本人好み!
「キエフって何ですか?」
「ソ連のどっかの都市の名前でしょ、ほら原発事故のあったチェノーウィルのあるあたり...」
「(原発事故?あぁ、チェルノブイリ!)あ、あのあたり(見当はつきませんでしたが)、じゃあこれはロシア料理なんですか」
「そうだと思うけど、イギリスではすごく一般的よ」
...というような会話をした覚えがたしかにあります。
冷凍食品だったか手作りだったか明かされた記憶は全くありません(もちろんそんな失礼なことは聞いていません)。
(今から思えば)ソビエト連邦はすでに崩壊後でウクライナは独立国家になっていた時です。
その後、何回か冷凍食品を買ってきて、オーブンでローストして食べたことがあります。
たいていおいしく食べているのですが、友人の実家でごちそうになった時の衝撃的なおいしさはそれ以来味わうことができません。
今回食べたい!と思って買ってきた、スーパーマーケット、アスダの格安自社製品(右)と、ベジタリアンの夫のために探して、何とか見つけた似たような冷凍出来合い、ガーリック風味の大豆たんぱく製ニセ・チキン・グリル(左)
これがうちの食卓に出したチキン・キエフ。
出来上がりを切ったところです。
調理時間が長すぎたためか、とろ~んと流れ出てくるはずのガーリックバターが見当たりません。
チキンとコロモにガーリックバター風味はすっかりすいとられ、それはそれで香ばしく美味しく食べられたのですが本来のサクサクトロ~ンが全く味わえませんでした。
「チキン胸肉100%」の箱書きに偽りはないはずですが、よく見たらチキンを砕いて攪拌して練って形作ったリコンスティチュート食品でした。(継ぎ目も切れ目もない一体成型の大量生産版)
料理の起源ははっきりとしないそうですが、ウィッキピーディアその他には「帝政ロシア時代のキエフのホテルで供された記録が初出の、フランス料理の「コートレット」(日本語のカツレツの語源)のバリエーション」...みたいな説明があります。
ロシア革命時に亡命したロシア人がシカゴのロシア料理レストランで出していたとも書かれています。
けっきょく、ロシア料理なのかウクライナ料理なのかはどこにも明記されていませんが、ロシア、ウクライナを含む東欧の全地域で広く食されている料理だそうです。
その名前にかかわらず、ウクライナのロシア、ソビエト連邦の併合時代に広まった料理なので「ロシア料理だ」と決めつけているアメリカ人、西欧人は多いのじゃないかと想像がつきます。
1976年に英国のデパート、マークス&スペンサー(現 M&S)が初めて製造販売した冷凍食品がチキン・キエフだったそうです。
以来、チキン・キエフと冷凍食品の人気は絶え間なく続いています。
ちなみに...
夫が食べたガーリック風味のニセ・チキンのカツレツはボソボソですごく不味かったそうです。
チキン・キエフについて検索してわかったことの一つは、現在英国で販売されているベジタリアン/ビーガン対応の出来合い料理で最も人気なのがチキン・キエフだということ...
どこのスーパーマーケットでも全商品を扱っているわけではないので検索してみたら、ザックザク出てきたものの一つが、これ。
(宅配専門の食材販売オンラインサイトから勝手に借りた写真です)
鶏肉部分はキノコ類でできているそうです。
写真を見るかぎりサクサクトロ~ン...おいしそう!(調理時間を間違えなければの話ですが)
興味津々、私が買って食べてみたくなりました。
最後になりましたが、ウクライナに平和が戻り人々が心穏やかに暮らせますように。
ロシア、撤退しろ!
各国の経済制裁がプーティンを圧迫して功を奏すればよいのですが。