きのうの続きです。
ピーク・ディストリクトの地理学の神秘!
ブルー・ラグーン・オブ・バクストン Blue Lagoon of Buxton。
この美しい「ラグーン」の正体は石灰(ライム・ストーン)を採掘したあとの深い穴(ピット)。
底の石灰の結晶が 空の青を反射して たまった雨水がターコイズブルーから群青まで多彩なグラデーションの青に見える、稀有な自然現象!
白い砂浜のように見える、水をかぶっていない部分は、すべて石灰です。
この場所の正式名は Far Hill Quarry だそうです。帰宅して、グーグル・マップを見て知りました。(Quarry というのは鉱石や石の採掘場です)
バクストン Buxton 郊外の、広大な緑の丘陵地に工場や倉庫などが点在する Harpur Hill Industorial Estate という産業工業地区にあります。
ドブネズミ色の「屏風岩」を背にした側が、☝の写真。もっと後ろに引いて、いびつな四角の「ラグーン」の全貌が見えるところまで移動して....
上の写真の右側あたりに落ち着いて、持参したサンドウィッチとサラダのお弁当でピクニック。
後ろはこんな風。
地面がすべて、じゃりじゃりした石灰でできています。
私たちが30分以上座っていた場所からの眺めです☝。
私たちが腰を落ち着けたのとほぼ同じころ、写真右手にある住宅街のあたりからやってきた 若い女性の3人連れが、白い突き出た岩に座って同じくピクニックを始めました。(実は真ん中あたりに小さく写っているのですが)
遠くに離れているこの人たちの声がけっこうよく響いて聞きとれたのが不思議です。
ポーランド人のようでした。(いえ、ウクライナ人か、ロシア人かもしれませんが言葉が判別できません)横の岩でロッククライミングをしている人の声もよく聞こえました!
前回も書いたように、この美しいたまり水はアルカリ度が漂白剤原液やアンモニアと同じぐらい高く、水に入ると大変危険なのです。
天然の汚染水なのです!
それでもあまりの水の色の美しさにひかれて、考えなしに水に入る(飛び込む、泳ぐ、浅い場所で水に浸かる、水しぶきを立てる)人たちが毎年後を絶たないんだそうです!
そのため、過去に夏に市当局が水を黒に染めたことがあったのです。
水に入る気が失せるような、不気味な黒い水の効果はばっちり!
☝の2012年の黒染め写真は地元の新聞のウェッブサイトから勝手に転載しました。
ただし、雨が何回か降った数週間のうちに染料が薄れ、もとのターコイズ・ブルーに逆戻り。
費用と手間がかかりすぎて、それ以後このまま放置されているそうです。
柵も囲いも設けないのが不思議ですよね!
ね?
しかも、ここに実際に来るまで気が付かなかったのですが、
ピットのまわりにただのひとつも、警告看板がないのです!!!!!!
(昼食がすんで、一休みしたあと、ぐるっとピットの周りをまわって、反対側から丘を下りることにします)
(☝滑り台のように水面に滑り下りる道がつけてあります!撮った写真を見て気が付きました。斜面になったピットの内側のがけにモーターバイクで乗り回したタイヤの跡があります!!)
やはり警告看板は見渡す限り、どこにもありません!
これでは、「水が危険」だということを知らずに水に入る人がいても不思議ではありませんよね!?
ピットのある丘に続く遊歩道(昨日の記事参照)と、帰り道の通りかかった反対側の囲いの入り口には警告看板がありましたが.....
水に飛び込みたくなる、かんじんのスポットにないなんて!
すり鉢状の穴で、(場所にもよりますが)断崖絶壁のスリルは感じないのですが、片目が見えないうちの夫は足元の段差がよくわからないらしく、うっかり踏み外してじゃりじゃり石灰とともに一気に滑り落ちて漂白剤だまりにドボン、という事態をおそれ、穴のふちには決して近寄りませんでした。
私がそばによってのぞき込むのも ものすごく嫌がりました。
柵がないのが
ほんとうに不思議、でしょう?
「危険な場所には、柵、囲い、警告立て看板を立て巡らせる」日本の状況になれていれば まず信じられない安全管理のずさんさです!
ええっと、ずさんと言ってもいいのか?
もしかしたら、日本でいう「自己責任」、安全管理はあえて危険を冒す人の良識、判断に任せる「大人の社会」のあらわれと言ってもよいのかも....?
警告しても、水に入る人は入るのでは? 柵があっても、どうしても入りたい人は乗り越える?
えっ、日本人はそんなことしない?
日本でおなじみの景観、眺望ぶち壊しの、柵囲い、警告、注意書き、禁止事項看板も、やはりそれなりの効果があるのでしょうか。
おりやすいスポットを見つけて、一人で水のそばまで行ってみました。
ドブネズミ色の岩がゴロゴロ地帯です。
水に浸っている部分の岩は白く漂白されています!
水位が下がって水面上に出てきた岩に漂白された色の境目がくっきり!
ピクニックをした場所が対岸に見えている、草に覆われた快適な平らなスポットを見つけたので、また一休み。
水面がけっこうそばに見下ろせます。
漂白剤だまり!アンモニア!
実は、においはまったくしません。
プールみたいな においがするのかと思ってたのですが。
イギリスでは 特に夏に環境問題になる、池や湖の水面を覆う 抹茶のような水藻が ここではまったく発生する気配がありません。
魚も昆虫も、羽を休める水鳥もいません。
すぐ下は、住宅街。
屏風岩の反対側は低くなっています。
岩を超えて、石垣の内側、崖沿いをしばらく歩きます。
住宅地側から入るゲートに、上に写真を載せた警告看板がありました。
金網の内側をそのまま10分ほど歩くと住宅街が途切れ、眺望の利く丘陵地に。
一回りして、出発点の小道に合流、道を渡って、ゴーカート・センターに戻ります。
危険なピットまわりの柵の有無の是非についての考察;続きです。
車を停めさせてもらった、ゴーカート・センターのカフェの男性スタッフは、「柵なんて意味ない」という意見です。
うちの夫は「柵は越えるためにあるんだよ」という意見です。
たしかに、柵や囲いが ある種の人たちの反抗心を掻き立てるということもあるのかもしれません。あ、イギリスでは、です。
このピット=「バクストンのブルー・ラグーン」について書かれたウェッブサイトによると、真ん中の深い場所には、動物の死体、廃車、産業廃棄物などが沈められているということです。
その旨書かれた警告看板の写真もウェッブサイトには載っていたのですが、現地に行ってみたら見かけませんでした。
(かえって もっと投げ込みたくなる人が出てくるのを防ぐために、撤廃したのかもしれません)
カフェのスタッフも、「ウシやヒツジや車やコンテナなんかがいっぱい沈んでるのは 地元民なら みんな知ってる」と言っていました。
実は行ってみてびっくり、ピットは岩に囲まれた丘の上の台地にあるのです。その岩を含むボコボコの広大な丘陵地は柵や石壁に囲われています。
トラックなんかで入るわけにはいきません。どうやって、ウシやヒツジや車やコンテナなんかをもっていって捨てたのでしょうか!(ヒツジぐらいなら担いでいけるかもしれませんが)
カフェのスタッフは「やる人は何としてもやるんだよ」うちの夫は「ゲーム感覚で困難なことをやり遂げるのが楽しいんだよ」と答えてくれました。
......ただ粗大ごみをこっそり廃棄したいのなら、そこら中にある山の中の空き地にでもほっぽっておいた方がラクだと思えます。わざわざ、「ブルー・ラグーン」に困難をのりこえて捨てに来る意義は!?(確かに一度沈めれば もう誰にも見つかりませんが)
イギリスと日本の国民性の違い、謎がまた一つ増えた?
ゴーカートセンターの招き犬、デクスターと.....
ジャック。
(背後に守護霊のようにバクスターが立っています)