マンチェスターのはずれにある、お洒落で評判なカフェに入りました。
窓際の席にいる、常連らしい女性客の飼い犬が、飼い主のコートを着せられて、外で待っています。
地元の特約農家から新鮮な食材を仕入れ、サワー・ドウで膨らました 手作りのパンも販売している、近ごろ流行りの こだわりのカフェらしいのです。
〈本日のスペシャル〉で見つけた、「ライスとマカレル、緑の野菜」というメニューに心を惹かれました。
席に着く前に、しばらく会っていない友達にばったり会って、立ち話。その間に席を確保した夫が、私のマカレル料理を注文してくれました。
(ウェイターにどんな料理か、質問することができなかったのです)
*
マカレル mackerel (サバの一種だそうです。模様がきれい)*
出てきたのが、これ。
イギリスの中華料理に使われる、粘り気の少ないライスにのっているのは.....。
カブのお漬物とたくあん、たっぷりみりん醤油が絡めてあるマカレルの辛みのある燻製。
ゴマまでまぶしてあり「日本のどんぶりもの」を意識したとしか思えません。
マカレルの味が濃いのは想像通り。
で下のライス、これが、あろうことかボウルの底に2センチほどの深さに溜まるほどタップリの醤油が混ぜ込まれた
「醤油かけ飯」だったのです。
煮崩したブロッコリーがまぜてあり、ネコめしというより残飯にしか見えませんでした。
三~四口ほど食べて残しました。
うちで 日本料理を出した時に「ご飯に醤油や味噌汁や煮物の汁をかけて食べないでほしい」と私がガミガミ言うのを聞き続けている夫は苦笑。
「西洋人はうなぎの蒲焼きだけを食べてから、下の味のないごはんに醤油をかけて食べる」と日本にいた時 きいたことがあります。
うな丼を食べるイギリス人をまだ見たことはありませんが、この時出された「マカレル丼」でナットクです。
イギリス人というより
西洋人は ご飯を食べながら おかずを食べることが先天的にできない、ということは以前にもかなりくどくど書きました。
どうやら、この味の濃いマカレルを単独で食べた後、下のご飯はたっぷりのお醤油味で食べるように考えてあるようです。
夫がエッグスベネディクトを食べ終わって私たちが席を立つ頃に、お皿を下げにやって来た店長らしい若い男に「お気に召さなかったか」と聞かれました。
夫は、気に入らない点を説明するつもりの私をとどめ、「日本人には僕たちと全然違う食文化があって…」とすまなそうに話し始めたのに…ちょっとムッとしました。
「我々とは食に対する常識が違う日本人の妻のことは気にしないでやってくれたまえ」の意の(不要な!)店に対する心遣い。
違う食文化のある妻が イギリスでの料理の出し方に意見を言うのが恥ずかしかったのかもしれません。
私も 追及はしませんでした。
(まさか私もネコめしとか残飯とか 失礼なことを言うつもりはありませんでしたよ)
日本人は、マカレルにかかった甘辛いタレが少し滲みた、味付けされてない白いご飯でマカレルの濃い味を緩和しながら食べるはずですが、イギリスでイギリス人のやり方にとやかく言うつもりはもちろんありません。
ただ、あの強烈に濃いタレのついたマカレルは、イギリスの定石どおり、厚く切ったサワードゥ・ブレッドに載せて、あるいはあっさり茹でたポテトをそえてディナー・プレートで出したほうがいい、といいたかったのです。
こっちはお金を払っている客なんだから料理に対する苦情を言ってもよかったはずです。
どこにも「日本(風)料理」とも「ジャパニーズ・フュージョン」とも書かれていなかったので、日本人が「これは違う」と文句を言ってもいいかどうか、微妙なところですね。
よく知らないながらも、おしゃれな日本料理を出してみたかったのでしょうか。
醤油さえかければなんでも日本料理として通用していた20年前までと違って、最近は日本に行ったことのある人もけっこういるイギリスです。
「こだわりのカフェ」でこれをやられるとは意外なショックです。
もしかして かんちがい ではなく、イギリス人向けの綿密なマーケティング!?
あのマカレル丼はイギリス人にも辛すぎるはずですよ。
でも、これが「たぶん日本料理なのだろう」と解釈して何も言えない人が多いと思います。
正統派日本流だろうとなかろうと、まずいものはまずいんです。
以前にも書いた、イギリス人のご飯(炊いた白米)の食べ方です。
日本人がやる、おかずとご飯を口の中で混ぜて楽しむ「口中調味」(読者の方に教えていただいた言葉です)ができないので;
汁気のあるおかずが出るとご飯を混ぜこんでベチョベチョにして食べます。
汁気のあるおかずがないと お醤油をかけて食べたがります。
ご飯を味噌汁に入れたり、ご飯に味噌汁をかけることもあります。
うちではそれを嫌がる私に気を使ってやりたいのに我慢してくれている夫と息子たちは、中華料理屋に行くと、必ずご飯のべちょべちょ食べを楽しみます。
「イギリス人と日本料理」については、
概論 が一冊の本にまとまるほど書くことがあります。
そのうち折を見て、続きを書くつもりです。
ちなみに、私たちは、ほとんど手をつけていない「マカレル丼」に7ポンド80ペンス(1158円)の料金を払いました。
その代わりというか、ケーキをひときれずつ、持ち帰り用の箱に入れて持たせてもらいました。
トリ―クル・タート
買えば、3ポンド50ペンスもしたと思います。
夫は「感心なサービスだ、また来たい」と喜んでいました。
家に帰って、口の中にいつまでも残るマカレルのくどさを除くために飲んだ大量の水といっしょに食べました。
タートのケース(ペーストリー)がボロボロで、あまりおいしくありませんでした。
夫が息子のために選んだ、キャロットケーキはとても好評でした。
どちらもカフェのホームメードです。
2年前に交通事故で亡くなった、うちのマカレル・タビーネコ、ブーツ。
キジネコは英語でmackerel tabby cat といいます。
納得できますね。
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