先週末、(1週間前です)夫の妹の結婚式に出席しました。
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シビル・セレモニー civil ceremony 、あるいは登記結婚式 registry wedding とも呼ばれる、市の結婚登記所の係官がとりおこなう宗教色抜きの結婚を法的に承認する手短かな儀式です。
ここ2年間で2人の姪につづいて3回目の、夫の親族のシビル・セレモニー挙式です。
儀式は宿泊したロイヤル・ウートン・バセットから6㎞ほど離れたマームスベリー Malmsburry 郊外の、イベント会場のような場所でとりおこなわれました。マームスベリーは、コッツウォルズの市場町です。
12世紀建造の古い僧院に隣接した、築後300年は経っていそうなこの建物は内装全体がサファリのテーマで統一されていました。
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動物の頭部のはく製(トロフィー=狩りの獲物)を模したリアルなぬいぐるみの頭部がところどころ壁を飾っていました。(大はしゃぎでいっしょに記念撮影をした私と娘がうつっているのでお見せできません)
併設のバーでは黒白のサルが電球を手に持っていました。もと中庭だったらしいこの場所にはガラスで覆われた不気味な古井戸もありました。
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「写真のSNS投稿は明日の朝までお控えください」という主催者からのお願いは、2人の姪の結婚式の時とおなじです。昨今のエチケットのようです。「花嫁より先に不特定多数の人が挙式写真を見るのはよくないからだ」そうです。
「儀式の途中の撮影はご遠慮ください」はもちろん常識です。立ってパチパチは失礼ですものね。(雇われたプロの写真家がー部始終を撮影していました)
それとは別に気がついたことがあります。「この結婚に異議のある人は今、申し出てください」という、決まり文句の恒例のステージをクリアした時点で、「ハイ、写真撮っていいですよ」と言われました。
シャーロット・ブロンテの「ジェーン・エア」では、ロチェスター氏が結婚していることをわざわざジャマイカからやってきた妻の弟が教会でぶちかまして結婚が中止になりましたよね。...結婚の遂行に万がーにもジャマが入る可能性が完全になくなるまで待って、ということもあるのでしょう。
英国では、日本のように「籍だけ入れる」書類結婚はあり得ません。式の予約後、結婚の「告知 Giving Notice」をー定期間登記所 registry office /教会の壁に貼りだし、式当日は登記所/教会で証人2人をたてて係官/牧師の前で宣誓、署名しなければ婚姻は成り立ちません。
「重婚」防止の意味があるのでしょう。どこに住んでいても婚姻、離婚が必ず戸籍にさかのぼって記載される日本と違って、英国では登記所や教会を別の場所/宗派等にしさえすれば「重婚」できるようです。
新郎新婦は50代と40代の再婚どうしでしたが、三つ揃いの礼服とセリーヌ・ディオンがステージで着るようなゴージャスなオフ・ホワイトのロングドレスで華やかでした。
夫の弟(花嫁の兄)と未婚のパートナーと彼らの十代の息子と娘はバカンスっぽい普段着でした。(イヌも連れてきてたし!)
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男性の招待客の多くはスーツ、女性は華やかなお出かけの装いです。
写真撮影のために移動した庭園です☟。奥に見えるのが式場です。
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夫は冠婚葬祭に着まわしている濃い青のスーツで、長兄として17歳下の妹を式場にエスコートする「花嫁の父」の役をつとめました。私は同じメンバーが多数同席する3回の親戚の挙式用に3着の違うワンピースを購入しています。すべて15ポンド前後(3,000円以下)のチャリティショップの古着ですが!
ドレスコードはかなりゆるいです。
先をクルリンと巻き上げた口ひげに、ウェストコート(チョッキ)がついた三つ揃いスーツの、名探偵ポアロのような身なりのロンドン紳士は、ブライドメイド(花嫁の介添え)のご主人です。
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ステッキと、ウェストコートのボタンに銀鎖でつないだ銀の懐中時計、口ひげを整えるためのワックスと、口ひげがドリンクで濡れないようグラスのふちに載せるシリコン製のムスタッシュ・ガードを常時携帯しています。老眼鏡も鼻に掛けるツルのない鼻眼鏡でした。タバコを吸わないにもかかわらず、便利なので持っているという葉巻用のナイフも見せてくれました。
外出時はいつもこの服装だそうです。
冬はボーラーハット、夏はパナマ帽をかぶり、襟に生花のバラもつけたこの服装でロンドンにお買い物などに出かけて浴びる観光客の視線がうれしいそうです。京都の舞妓さんのようなことを自主的にやっているようですね。「日本人の若い女性グループにバッキンガム宮殿に行く道を聞かれ、連れて行ってあげたらいっぱい写真を撮られた」と嬉しそうに話していました。
式の終了後、シャンパンで乾杯したあと場所をマームスベリー・アビー Malmsburry Abbey 横の夏の終わりの花壇が美しい庭園に移しました。記念写真を撮るためです。
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マームスベリー・アビーは12世紀建造の僧院です。第ー級保存指定建築、アルフレッド大王の息子、アゼルスタン(初のイングランド統ー王)が埋葬されていることで知られます。見学できなくてちょっと残念。
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本来この庭園で式を挙げる予定だったのが、登記所の係官に出張してきてもらう手続きが不備で、となりのイベント会場(公式の登記出張所)に式場を変更したそうです。
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夫は、花嫁のエスコートの時に襟につけられた生花のバラがじゃまなので式後、捨てたがっていましたが「写真撮影終了までつけておくように」と私が厳命しました。...その実、なぜか出席者の集合写真撮影はありませんでした。
バラは結局胸ポケットに入れて持ち帰り、滞在先のホテルで捨てました。
この庭園で、新郎新婦がプロのカメラマンにいろいろなポーズで写真を撮られていました。私たちはそれを見つつ、庭園と歓談を楽しみました。(出席者の記念撮影がなかった理由は、今もって謎です)
もちろん、各自でバシバシと撮りまくったカップル、家族写真が翌日のインスタグラムに数多く投稿されました。私は見るだけで投稿はしません。
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僧院はヘンリー八世による国教会令で解散させられたあと、部分的に廃墟になっていますがー部は国教会の礼拝場所として現在も使われています。
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ちなみに花婿は、6年前にストックポート日報に詳しく載せた、パリ滞在記に登場する夫の妹のパリのアパートメントで同居していた婚約者(当時)とは違う人です。