一年と5カ月ぶりぐらいに、映画館に行って映画を見ました!
去年の3月に最初のロックダウンが始まって以来閉鎖されていた劇場、コンサート・ホール、映画館などの屋内パフォーミング施設が先月やっと再開したのです。
息子の招待で見た映画は「鬼滅の刃 無限列車編」Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba the Movie: Mugen Train。
上映回数が少ないという英語字幕付き日本語版を息子が選んでオンラインでチケットを購入してくれました。
1年と6カ月ぶりに見た映画が人気アニメの映画版、というのがちょっと悲しい気がしないでもありませんが。
2018年に連合王国で一番見苦しい建築物に授与される栄えあるカーバンクル杯を受賞した、ストックポートタウンセンターにある総合レジャ―施設、レッド・ロック Red Rock の複合スクリーンシネマ・シアター、ライト・シネマ Light Cinema 。
すぐわきを走る高速道路や、鉄道から見える真っ赤な鱗のような外壁装飾が受賞の決め手になったようですが、タウンセンター側に向いたガラスの壁面や内部の装飾は
なかなかオシャレだと思えるのですが。
Demon Slayer は息子にアメリカ英語に翻訳されたコミック本を借りて8巻まで読みました。
右から左へ横書きの大文字のみで書かれた吹き出しを読み進むのは根気が必要です。
やたらに出てくる「アクション音」の変形アルファベットはただでさえ少年漫画を読みなれていない私には読みこなすのに一苦労、ローマ字書きの聞きなれない日本語の固有名詞は何回読んでも覚えられません(漢字がわかれば一発で頭に入るのですが!)
ネットフリックスでテレビアニメを息子といっしょに見てからは次のエピソードが楽しみになる程度には「ハマり」ました。
剣術の型の名前をおぼえたり気に入ったキャラクターの性格について論じたりするほどの思い入れは全くありません。
「鬼滅の刃 無限列車編」はスピンオフ(番外編)の類ではなく、見終わったアニメの第1シリーズの
続きだというではありませんか!
お金を払って映画館に見に行かなくてはアニメシリーズの続きが見られないという商業的あざとさ!
息子はコミック本を12巻まで所有して読み込んでいるのでストーリーを知っているようです。
根気のいる英訳漫画は敬遠することにした私はこれを見なければ、そのうち放送されるらしい次のアニメシリーズの話についていけないらしいのです。
感染拡大防止対策のため、入場者数制限があるらしいのですが間隔を置いて十分な観客数でした。
観客はすべて大人です。
オタクっぽい若者がほとんどでした。
オシャレな若い中国人女性のグループもいました。
まあ、ざっと見渡した限り私が一番の年上と見受けましたが。
ティーンエイジャーの息子が母親の私とアニメ映画を見に行くというのはけっこう恥ずかしいことだったのかもしれませんが、いっしょに行きたがるファンは友達に1人もいないそうです。
オンラインでオタクっぽいゲームをする仲間たちのほとんどは日本のアニメ放映時の翌週に最新エピソードが見られるオンライン・アニメ愛好クラブ(有料)に入っているらしいのですがみんな遠隔地(カナダ、ドイツ等)に住んでいます。
通なアニメファンはアメリカで吹き込まれた吹き替えアニメを嫌悪して字幕入りオリジナル日本語版で見るのが最低限のたしなみらしいです(息子談)。
ええ、まあ、楽しんでしまいました。
美しいアートワークに、ドラマチックな音楽、秀逸なサウンドシステムによる効果音で充分楽しめたことを認めないわけにはいきません。
「泣かせる演出がクサいな」と思えるシーンでも素直に泣いてしまいました。
まわりの若者たちのすすり泣きも聞こえました。
ところで、「鬼滅の刃」はネットフリックスのテレビアニメも劇場版も「15 rating / certificste 15」です。
15歳未満は見てはいけないことになっています。
「スパイダーマン」や「スターウォーズ」などの12歳以下に見せるかどうか保護者が判断してもよい「12-A」よりも強い制限がかかっています。
日本では少年ジャンプに連載されていた(大人も楽しめる)子供向きのストーリーですのにね。
欧米では暴力描写と血なまぐさいシーンが子供に見せてはいけないと判断される大きな理由です。
日本では少年たちをワクワクさせるアクション、戦闘シーンが欧米では「暴力」とみなされ、問題視されています。
「鬼滅の刃」の漫画の冒頭からタンジロウの一家がむごたらしく惨殺される強烈なシーンに衝撃を受けました。
これ、イギリスで子供に読ませたら精神的虐待にあたるんじゃないか、と思えるほどです。
イギリスでは特に子供が死ぬシーン(あるいは死んだ子供のイメージ)を子供に見せてはいけないという不文律があるのです!
暴力描写(特に銃がらみの)にとりわけ敏感らしいアメリカでも同様なはずです。
一家皆殺しのシーンにドキドキしていたら、それどころではなく、全編戦いのシーンで手足を切り落としたり、鬼の首を切って勝負がついたりもう欧米の感覚ではグロいシーン満載の鬼退治少年漫画!
まあ、鬼の手足は切っても切ってもまたニョキニョキと生えてくるのですが。
「鬼滅の刃」に出てくる鬼 Demon の軍団はとにかく不愉快になるほど悪い連中ですね。
「桃太郎」に出てくるトラのパンツをはいて「宝物は差し上げます。お許しください」と言って頭を下げる赤鬼、青鬼とは全く違います。
この暴力表現は強烈だな、と気になっていたのがだんだんと慣れていっちゃうんですね。
主人公がやさしい心の持ち主で鬼を殺す時にも心をいためる心理描写が上手に挿入されているところも視聴者(読者)の暴力シーンへの抵抗をなくしていくうえで効果があると思います。
少年剣士が鬼退治をしながら人間として成長していく過程も日本人の感覚では少年漫画にとてもふさわしいテーマに思えますよね。
その点は欧米でもじゅうぶん支持されているはずです。
ただ描写(あるいは残忍なセリフが)が小さな子供に見せるにはちょっと....
アニメファンの内気な息子は日本語が全く話せません。
生まれてからこのかた、私はいつもいつも日本語だけで話しかけてきたのですが!
そのせいか私のいうことはほとんどわかるようです。
息子は英語で、私は日本語でたいていの会話が成立しています。
(通じなければかなり気持ちが悪いのですが英語の単語を混ぜて話します)
「鬼滅の刃」で話される日本語はむやみに難しいのです。
日本語学習者に「こんな言葉は覚えなくてもいい」と言いたくなる表現が連発されます。
例;いま父親を「父上」なんて呼ぶ人はいない
息子は映画館で英語の字幕を一切読まなかったと胸を張りました。
原作の、私にはやっかいだったコミック本の英訳セリフを一言一句漏らすことなく暗記していたので映画のセリフはすべて理解した(気になった)そうです!
アメリカでは銃による殺人が日常茶飯事ですし、一時ほどではありませんがイギリスではナイフを使った若者どうしの殺傷事件が社会問題になっています。
これほど暴力描写に敏感な国柄なのに!
一方、暴力表現がアートやエンターテイメントとして非常に多彩で、子供にも抵抗なく見せている日本では若者による暴力事件が欧米に比べて極端に少ないらしいですね。
少なくとも日本刀を振り回して人を殺傷したという話は全く聞きません。
興味深いです。