猛暑が続く中、我が現場も毎日が大変である。
暑さばかりが原因とは思わないが、接触や破損などの事故に加えて出荷間違いが連続して起きるなどしたため、いつもは朝礼に出てこないトップが出てくる事態となった。
朝から一喝を食らってその後は平和平穏になったかといえばそうでもなく、ある日には、とある先から「届いた箱が汚い」と苦情が来たという報告があった。
対象の製品は私自身前の担当でよく触っていたもので、保管場所によりホコリで真っ黒けになっているものは作業場に置いてあるブラシで払って荷姿を仕上げていたものである。
それが真っ黒けのまま取引先に行ったというのは明らかな手抜きであって、ミスあるいはヒューマンエラーとは次元が違う。
手抜きが苦情につながるというのは恥ずかしいことであると同時に仕事としてはゴミである。
私が担当の時に出なかった苦情が私が外れてからひと月もしないうちに出るというのは、つまるところ他のメンバーのレベルの問題と言わざるを得ない。
さて、いまだによく分からない社内ルールにより7月に4回ある土曜日は3回出勤することになった。
3回目であった昨日は月曜日のための準備を午前中には終わらせ、後は空き棚の状況調査と整理整頓をしていたがいよいよやることがなくなった。
先週に大人数をかけてこなした手作業もまだ完全には終わっていないようで、どこか他に手伝いに行ける現場がないか上の人に申し出た。
まだ本現場が完全には片付いていなかったのでいったんは手伝いを命じられて入ろうとしたところ、まるでイヌでも追い払うかのようなしぐさで拒否されたので、アホくさ、となって階上に上がって休憩していた。
するとしばらくして上の人がわざわざ階上まで上がってきて、別の現場でやってほしいことがあると言ってきた。
私自身行ったことがない場所ではなく道に迷うことはないと思ったが、カギを開けてひとりで作業をしてほしいという。
手伝いで手作業をしに行ったことはあるが、そこにあるフォークリフトを触ったこともなければ状況など見てみないと分からない。
ひとりの手作業でできることなど多寡が知れている中であえてひとりで、と言うからには命じられたのは作業そのものではなくその現場での「経験」ということであったろう。
カギを開けることから始めて中を見渡し状況を把握して何をどう動かしてどこに置くか、などなど、ひと通りの段取りをしてできる限りのことを時間までやって来いということであったろう。
いきなりだろうが、ひとりだろうが、数時間でもその現場を任されたわけなので、誰の監視もない中でも適度に休みながらしかしサボることはなく、差し当たりの目標の数量をこなすといい時間になっていた。
土曜日が勤務の週は週明けから気が重いのは確かだが、平日とは違った経験をすることも多い。
本現場にいてつれなく追い払われるくらいなら今日のような経験を申し出てでもしたいと思う。
少なくとも我が社にあって「本現場に置いておくしかない」と思われるようでは作業者としては物足りない。
フォークリフトにも立ち乗り式と着座式があって、本現場は立ち乗りだが昨日行った現場は着座であった。
免状を持っているものとして、立ち乗りしか乗れないなどというふうには間違っても思われたくない。
普段本現場で指図を出している層も着座式は経験がほとんどないようで、いきなり乗れと言われて乗れるようには見えないが、立ち乗り式を私の目から見ても異次元クラスで乗りこなす人が着座式に乗れないはずがない。
立ち乗りも着座も動く原理は同じだから「触りさえすれば絶対に」乗れる。
免許講習でしか乗ったことがないからと言って仕事の場で触ろうともしないのは逃げているのと同じであって、それなら着座式のリフトがある現場には出したくても出せないとなり本現場にいるしかない人になってしまう。
それを言うなら私も経験時間としては立ち乗りと着座は9割1割である。
1割しかない経験でも、いきなり命じられた現場に行ってとりあえず事故も起こさずに作業を終えて帰ってくることができるのだから、本来なら申し出てでも経験時間の少ない方式に触る努力は必要だしそうするべきだ。
今の現場に来て一年近く、少なくとも普段を過ごす本現場は、文字通り「本現場にいるしかない人」が重要な役割を与えられて下々に指図をして動いているというのが真実と気づいた。
万一、本欄が当人たちの目に触れることがあるとするなら、少なくとも立ち乗りしか乗れないなどという汚名は晴らす努力をしてほしいものである。