山門通路から向こう側を見る・・・異次元への扉の様でもあります。
正面全景
1階の通路両側の格子内に雲蝶の仁王像が安置されています
山門は通常、魔除け門で神社では狛犬やキツネの代わりに入り口を守っているのですが、この門は2階が鐘突堂になっています。
2階に上がるのは1階通路の片側の板戸を開けて階段になっています。
2階部分は鐘を吊るす広い空間になっているので、柱は外側のみの構造です。
2階はぬれ縁がせり出して手摺(欄干:らんかん)が設けられ、軒先はそれよりも迫り出すことで雨や雪をしのいでいます。
「方丈山」と書かれた看板
縁採りに竜の彫刻が施され、看板を支える「掛け」は
河童が両足を交互にさせていて可愛い。
全体に「水」を表しているのでしょうか?
軒裏の「端ね木」(はねぎ)
化粧タルキが美しく映えます
本屋の化粧桁は「象」の彫刻が施されています。
まるで日光東照宮の様な感じさえあります。
1階部分はこの建物を支えるため、柱は通し貫によって柱同士を固定しています。
(端の柱の中間の四角い飾りのようなものが通し貫の端・・かなり太い)
柱の脚は鉄板が巻かれていますが、腐ったときに根継ぎで交換ができるようにしてあります。
内部の差鴨居(さしかもい)や柱は「ケヤキ」を使っていますが、外側は杉を使用しています。これは風雨にさらされてもいいように「杉」を使うことで耐久性を高めています。また、内部に力の掛かる柱は強度のある「ケヤキ」を使っています。
材料はその当時この辺りに生えていた木を使っていると思われます。
そこにある材料を上手く適材適所で使って、より長く持たせる工夫があります。
そして、この写真から1階の端の柱と2階の柱の位置が柱半分程度ずらしてあることがわかります。
1階の丁度仁王像の安置されている格子の上の台輪から2階床を構成する濡れ縁の「端ね木」(はねぎ:斜めに張り出している材料)の部分で2階の柱を受けていることになります。
即ち、1階と2階は全く別の構造となっていて、1階部分に2階部分がそっくりそのまま乗っている形なのです。これは「五重塔」(五重塔の考察にて解説)と同じ原理になっています。
五重塔は各層が別々の構造で、地震時には各層が全く別の方向に揺れます。
同じ方向に揺れると、最大揺れ幅が大きくなり、転倒する危険があるのです。
2階部分の小屋を構成するのは「斗共」(ときょう)による本格的な寺社様式の造りになっています。1階は差鴨居を中心とした「民家型」の構造です。飛騨・高山で見た古民家の流れがあるような・・・ひょっとしたら地元の大工による競合作なのかもしれません。
境内の木々に守られながら、夏の夕暮れに映える山門
鐘の音が響き渡ります
この建物は「鐘突堂」です。2階で鐘をつけるので3mを超す豪雪地帯での湯沢中里でも冬も休まず鐘を突くことができます。
丁度、お坊さんが時間を継げるために、2階に上って鐘を打つ場面に遭遇しました。普通の鐘突き堂は吊り鐘のみの音なのでしょうが、この建物全体が反響しているようで、独特な音色でした。
ゴーン・・ウオン・・ウォン・・ウォン・・ウォン
・・と、かなり長い時間、鐘が反響しています。
江戸時代からこの鐘の音がこの辺りの時間を刻んでいたのでしょう。
瑞祥庵の場所
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