伝統構法の特色のひとつ、「渡りアゴ」です。
上木の下端を欠き、下木の上端を欠いて十字に組み合わせます。
こうすると、両方の材料の欠損が少なく、強度低下が抑えられ、さらに何ヶ所も組み合わせることで、水平剛性も出てきます。
通常、在来工法では加工のしやすい「蟻落し」という方法をとりますが、大工の秘伝書では、
「仮設の小屋に用いる最低の仕口」
と記され、実際、欠損も多く、更に柱のホゾ穴までもそこに位置することが多いので、強度もかなり落ちてしまいます。
金物(羽子板金物等)で補強しなければならないのも欠点のひとつです。
(中越地震ではほとんどの金物のナットが緩んでいました。)
また、「渡りアゴ」にすることで、梁と桁が明確に区分けされます。
下にある材料は「梁」上は「桁」となります。
梁は横方向からの力や上からの加重を支えるために大きな材料が必要となります。
桁は梁をつなぐ材料となります。
こうすることで、構造計算もやりやすく、梁をメインに考えてやればよいのです。
一見、複雑に見える構造ですが、実は単純な構造の寄せ集めなだけです。
屋根でも床でも基本は同じで、屋根の場合は特に「折置(おりおき)」と呼びます。やはり、梁が下で桁が上となります。
梁は強度を上げるために、なるべく製材しない丸太を使うことが多いようです。