表題の日本野鳥の会/日本オオタカネットワークが主催のシンポジウムに行ってきました。
・ほんとうにオオタカの個体数は充分に回復したのか? データの信頼性は?
・指定解除による課題
・違法な捕獲・飼育の現状と対処
・生息地の保全とアセスメント → 現実的にこれらは機能し生息地は保全されているのか
・「種の保存法」から外れ、「準絶滅危惧(NT)」となってしまうと何が変わるのか?
これまで通りにアセスメントや保護が可能なのか?
開発の歯止めとなってきた生態系上位種としての役割はどうするのか? 等々、
数多く寄せられたパブリックコメントから見えてきた課題について、オオタカの希少種解除について議論されました。
★分かったこと(現状・事実)
①環境省が判断している個体数はあくまでも推定数。
現場ではここ10年間個体数は変わらない、現実は営巣地は減少傾向。
(狭山丘陵の例では、営巣地は10年前と比較して半減)
個人的にも、むしろ環境破壊が進んでおり、本来の生息域を追われたオオタカが都会に出てきて、見かけ上個体数が増えたように見えているように考えます。
②違法な捕獲・飼育、密漁の現状と対処ついても同様に違法件数は減っていない。
現在もなお、密漁されている(国産のオオタカ剥製は40~70万円で取引されている)
また、レースハトが襲われることを理由に、害鳥として捕獲されている。現状は法的に防ぐことは不可。
③「種の保存法」から外れ、「準絶滅危惧(NT)」になるということは・・・
乱暴な言い方をすれば、オオタカとカラスが同様の扱いになる。
ここが最も重要なのですが、『レッドリストに載っていても法的には守ることはできない。』という事実。
★パネルディスカッション
生態系の頂点であるオオタカが「種の保存法」から外れれば・・・
→ アセスメントがされなくなる。(生物多様性基本法の努力義務は守らなくても罰則無し)
→ 開発に歯止めをかける手段がなくなる。
→ 里山環境の減少(里山がなくなる。)
指定されている現状でさえ、生息環境の保全は難しい
→ 営巣している木は守られても、周囲の開発は止められない
「生態系」という視点で考えれば、営巣周辺の林(里山環境)単位で守らなければ意味が無い。
■最後に
野鳥という視点だけではなく、里山に住んでいる全ての生物を守る(=里山環境)という視点で、
日本野鳥の会だけではなく、自然保護を考えている方々にとっても重要な案件であることを
まずは、多くに方々に知っていただきたい。
そうすることにより、別視点の新たな問題点も浮き彫りになり、皆の全員の声で国(環境省)を動かすことができるはずです。
今回のシンポジウムに参加して自然保護の難しさ、絶滅危惧種であっても完全に保護することが出来ない現実を痛感しました。
<<日本野鳥に会のHP(参考)>>
http://www.wbsj.org/activity/conservation/endangered-species/ag-hog/ag-symposium-20141004/
■日時:10月4日(土) 13:00~17:00
■会場:立教大学(池袋キャンパス:東京都豊島区)11号館地下AB01教室
■主催:日本野鳥の会/日本オオタカネットワーク
■共催:環境省/立教大学
■定員:500人
■プログラム
挨拶・趣旨説明13時~13時15分
第1部 話題提供 13時15分~14時45分
1 オオタカの希少種解除の検討について
(環境省自然環境局野生生物課希少種保全推進室長 安田直人)
2 オオタカの生息状況の変遷と現状
(環境省自然環境局野生生物課希少種保全推進室長補佐 徳田裕之)
3 指定解除における課題
(日本野鳥の会参与 金井 裕)
第2部 パネルディスカッションおよび討論 15時00分~17時
1 違法な捕獲・飼育の現況と対処
(日本野鳥の会保護室長 葉山政治)
2 生息地保全とアセスメント
(自然保護協会保護研究部主任 辻村千尋)
(日本オオタカネットワーク副代表 今森達也)
3 モニタリングと保全状況の評価システム
(日本オオタカネットワーク代表 遠藤孝一)
4 総合討論
※写真:オオタカ保護基金