TacoToma

タコとトマトが好き。
つまり食べることが好きってことです。
プラス、最近は韓国ドラマ関連も書いています。

「不透明な時代を見抜く統計思考力」を読んだ

2009-09-11 16:01:04 | 
表題の本は、神永正博著。
筆者が、数式の出てこない統計本を書こうと思ったというだけあって、数式は出てこない。(うれしい)

この本では、
●データ分析の恐さと面白さ
●巷で言われているいろいろな話題をデータ的に検証する
という部分が興味深い。

データ分析の面白さは、私のような統計専門家ではない人間でも味わったことがあるけれど、データ分析の恐さについては、「恐いもの知らず」の部分があったなあと反省させられた。やはりこのあたり、専門的な知識と検証が必要だと痛感する。

「恐さ」の部分は、顕著な例がサブプライムローンだと思う。
金融テクノロジーとか言って、数字をあやつり、ファンドをつくって売り出したものの、やさしく表現すると計算式が間違っていたワケ。
昨日も某証券会社からファンドの説明書が送られてきたが、どういうアルゴリズムで予測しているのか何にも書いてなかった。(書いてあっても実はわからない)
が、わかる人のためには書いておくべきだろう。

この本では経済は予測がつかないと言っている。
突然戦争が始まるなど強烈なファクターが働くと、過去のデータからは予測のつかない動きが出るからだ。
当然、株価の変動も予測がつかない。

「巷で言われているいろいろな話題を検証」の方では「小泉改革は格差を拡大したのか?」という話題について分析している。
失業率とか、給与とか、GDPとかいろいろなデータを紹介して、明確に小泉政権時に変わったものは「貯蓄のない世帯の割合が増えた」ことくらいしか確認できないが、それも直接的に小泉改革の影響かどうかは確認できないというような内容です。

小泉改革で上った上ったと言われた非正規雇用の割合も、小泉政権の時に急に伸びたりはしていない。

マスコミにしても、国会野党にしても、何か一つのテーマに目をつけて先鋭的に、こうだ、ひどい、何とかするべきだ! と声高に叫ぶ傾向があります。
定期購読されている新聞はともかくとして、毎回タイトルをみて買う人の多い雑誌などは、ドキッとするような記事が売上に直結するので、そうなってしまうんですね。

でも、彼らの数字の取り上げ方は稚拙です。それには、国民や視聴者があまり難しいことを言ってもわからないからという背景もあります。が、ひどいです。

例えば、東大入学者の親は高収入。だから、高収入でないと東大へは行けないみたいなことを言う人がいるが、そんな単純なものではないと思う。
この件について私は、第二次世界大戦後、いろいろな価値観や大筋の社会システムが変わっていないことが大きな原因だと思っている。
高学歴な人は、ある程度安定した収入が得られる。中でも、優秀な人は出世もするし、高収入が得られる可能性が高いだろう。
勉強は、記憶力などかなり遺伝的基盤が影響してくるから、筆記試験で選別される大学入試なら、そういう人たちの子供は有利に決まっている。

もし、東大で勉強するという教育の機会均等を実現しようとするなら、試験という関門の選別方法を全く変える必要がある。

価値観や大筋の社会のシステムは、今までそう大きくは変わってこなかったように思う。いや、変わったという意見もあるだろう。でも、資源のない国、日本が世界で勝負していくには、他国より優れた商品やサービスを生み出し、それを輸出することで豊かにならざるを得なかった。
そういう経済システムを支える人材を育てる教育がなされてきた。

ただ、これからは変わってくると思う。既に変わり始めている部分もある。

石川遼くんのような存在が、ひとつの例だろう。小さい時から一芸を突き詰めた人たちが、東大へ行かなくても豊かになれるというようなケースが目立ってきている。(これもデータ的に裏づけもないのに言っちゃいけないことだけど、そういう先端の動きを裏づけるデータはなかったりすると、この本の中でも述べていた)

数式が出てこないから、幅広い層が読んで面白い本です!!

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4 コメント

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お久しぶりです。 (ブラピ)
2009-09-14 09:38:49
お久しぶりです。

ちょっと雑用がたまっていたり、コメントしかけたら来客で。。。。。とか。

本日のテーマで、TacoTomaさんのおっしゃってたことには、私も同感です。

最近マスコミや自民党議員さえも小泉改革を悪く言うけれど、10年以上続いたバブル後の不良債権問題を処理し、その後しばらく続いたそれなりの好景気に導いたのは、小泉さんと竹中さんであるのは誰の目にも明らか。

残念だけれど、非正規社員がいなければ、その好景気さえ難しかったかもしれないし、これから日本の企業が生き抜いていくためには、今の日本の状況ではしょうがないと思う。そうでなければ、メーカーはますます海外生産を増やさざるをえない。日本は、先進国なのだから、新興国と比べたら通貨は高いし賃金も高い。それで、工業製品を輸出しようとすれば、何かでコストを削減しなければならない。カイゼンやジャストインタイムなど日本発だから当たり前。これ以上は、難しい。

今回の世界同時不況とは、別の話のはず。

結局、文明が興って、数千年来ずっと繰り返して来たことなのでは?最近読んだ本で、しかもあとがきのほんの数行に書かれていた『バーバリアニズム』。まさにそれだと思う。

東大は高収入の親ではなく、高学歴の親というのも正にその通りだと思う。机に向かう親の後ろ姿。本を読む親の後ろ姿を見て育った子供とそうでない子供では、随分違うはず。せっせと塾に送り迎えする親。その人たちを見ていても。その人たちが、そんなに勉強していた人には見えない。

もっと、みんなが幸せに暮らせるような手立てが無いわけでは無いと思うけど、そんなに簡単では無いことだけは確か。
貧乏でも幸せに暮らしている人も沢山いるし、かつての日本だってそうだったはず。
少なくとも、金銭至上主義みたいなところからは脱却したいですね。
私には、北欧諸国やキューバの人が幸せそうにみえる。でも、隣の芝生は青く見えるのかな?
彼らに言わせれば、日本人は幸せだなっていう事になるのかも。









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新井将敬を思い出しました (TacoToma)
2009-09-14 10:57:42
ブラピさん。お久しぶりです。
バーバリアニズムは、あとで勉強させてもらいます。

ブラピさんのコメントを読んで、自殺した国会議員、新井将敬氏を思い出しました。

Wikiで見ると、1988年に亡くなったのですね。優秀な方だったと記憶しています。
亡くなる少し前に、新井氏は東洋的な価値観を見直し、西洋的価値観をグローバルスタンダードとして振りかざす勢力に一石を投じるべきだというようなことをおっしゃっていたのが印象的でした。

1+1=2のような合理的?考え方では割り切れないものが人間社会にはある。1+1=2だけでは人は幸せになれない! 西洋的合理主義にはそこが欠けている。
いや実は西洋的≒キリスト教的とは割り切れないとはいえ、キリスト教では神と人という対比は明確で、人は不完全で弱いものという前提があるはずなのですが・・・。

また「欲」というものを否定する教えもあるはずなんですが・・・。

ビジネスの世界は、そういうものを無視して肥大化してきたのですね。
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訂正 (TacoToma)
2009-09-14 11:16:20
新井将敬氏が亡くなったのは、1998年の間違いでした。
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Unknown (ブラピ)
2009-09-14 22:58:44
先日お話した本『差別と日本人』で野中弘務氏が、「新井将敬は立派な男だった。」と言っていました。

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