戦争の実相伝えるウェブ博物館 京都、行政文書や学校新聞収録

2018-07-29 10:01:00 | 創 creation

 京都府長岡京市はこのほど、市内に残る戦争関連の文書や写真をウェブ上で公開する「バーチャル平和祈念館」を開設した。戦時下の市井の暮らしを報じる学校新聞や、本土決戦に備えた地域での兵力動員の状況を記した行政文書など、市内の実相を記録した貴重な資料に光を当てる。戦中を生きた世代の高齢化で記憶の継承が難しくなる現実を背景に、市は「若い世代に向けて平和への願いを伝える材料となれば」と期待する。

 1945年7月19日、乙訓地域で唯一の空襲「神足空襲」を受けた長岡京市が、同日を「平和の日」と定めて30年になるのを記念して取り組んだ。市のホームページ上に設け、時の経過で散逸、劣化が進む戦時資料に、誰もがアクセスできる環境を整える。

 神足小が35年から、学校生活や校区の新神足村(当時)の動きを伝えた「神足月報」を取り上げる。市へ寄贈された実物の紙面を写真で紹介し、解説を添える。満州国から帰還した師団を出迎えた地元の国防婦人会(36年7月号)▽地域で実施された防空訓練と空襲への心構え(40年9月号)▽前線将兵への感謝を込めた人文字を盛り込んだ体育大会(40年11月号)-など、戦時色に染まる地域の姿が映し出されている。

 戦中に当時の今里区が保有した行政文書群「今里区有文書」の一部も閲覧できる。本土決戦の際の戦闘員として地域住民を組織化するよう同区へ求める乙訓村(当時)の依頼書や、地区ごとに年齢や男女を区別して結成された「国民義勇戦闘隊」の編成表からは、国民皆兵が極まりゆく様子が見て取れる。

 元海軍兵の市民のインタビュー映像や戦没者遺族への聞き取り記録、戦争の経過と長岡京市の状況を関連づけた教材なども掲載。市人権推進課は「資料の収集を続けて更新を重ね、平和の大切さを考えるきっかけを提供したい」とする。

【 2018年07月24日 08時56分 】



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