歌人・辰巳泰子の公式ブログ

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古今和歌集おみくじ(四十五~百一と、Demon,Death)

2015-05-28 22:22:36 | 日常
古今和歌集(1~1111番)のなかから、百首を選んで、おみくじ。辰巳泰子選。
以下の59首は、その続編です。
これらは、編集校正を経て、「月鞠」16号誌上に、「古今和歌集おみくじ」として活字発表されますが、いまから遊べるように、この場での連番(ここでは四十五~百一)を通しました。

本編でも、恋占いはできますが、4月15日の記事(一~四十四)が、恋占い専用です。

ところで、本編のうち、Demon、Deathの2札を、凶札としました。

たのしんでくださいまし!


……………………………………………………


四十五
古今和歌集1番。
年のうちに 春は来にけり 一とせを 去年とやいはむ 今年とやいはむ
(在原元方・春上)

太陽と並んで歩くために月は、年によっては、丸ひと月ぶんも大空をまたぎます。まだ冬らしくもならないうちに立春を迎え、戸惑うような、うれしいような。共に歩んで、大吉。



四十六
古今和歌集2番。
袖ひちて むすびし水の 凍れるを 春たつ今日の 風やとくらむ
(紀貫之・春上)

袖を濡らすのもいとわず、結び合った仲なのに、凍りつくまでになっていました。でも、きょう立春の風に、仲直りできるでしょう。大吉。



四十七
古今和歌集5番。
梅が枝に 来ゐる鶯 春かけて 鳴けどもいまだ 雪は降りつつ
(よみ人しらず・春上)

節分の頃には、鶯を見かけます。まだ雪も降りますが、おまえさまの鳴き声を耳にすれば、心身もちこたえて過ごせる気がします。あと少しの辛抱。小吉。



四十八
古今和歌集17番。
春日野は 今日はな焼きそ わか草の つまもこもれり 我もこもれり
(よみ人しらず・春上)

この歌の作者は、野焼きにあう、春日野の、虫さんでしょうか。人にならうな、虫にならえよ。弱いひとの気持ちになれれば、愛も、痛みも、通じ合うでしょう。 小吉。



四十九
古今和歌集20番。
あづさゆみ おして春雨 今日降りぬ 明日さへ降らば 若菜つみてむ
(よみ人しらず・春上)

梓弓を張るように、身を張って、春の雨に濡れましょう。きょう降り、あともう一日、降りさえすれば、野はいっせいに芽吹くでしょう。いまひとたび、押して、中吉。



五十
古今和歌集31番。
春がすみ 立つを見すてて ゆく雁は 花なき里に 住みやならへる
(伊勢・春上)

こういうことは、幼い子供が、よく言います。大陸の原野へ飛び立つ鳥は、花がすみに送られて、感謝しているでしょう。ありがとう、ありがとうと、羽ばたきながら、涙こぼしているでしょう。送って、中吉。



五十一
古今和歌集50番。
山高み 人もすさめぬ 桜花 いたくなわびそ 我見はやさむ
(よみ人しらず・春上)

深山に咲いて、めでる人もないと嘆くな、桜花よ……と言いつつ、心の奥ふかく、独り占めの歓喜あふれる歌。また来年も、来てくださいますか。約束はできなくて。小吉。



Demon
古今和歌集53番。
世の中に たえて桜の なかりせば 春の心は のどけからまし
(在原業平朝臣・春上)

お考え、凶。生かしてあげて。



五十二
古今和歌集68番。
見る人も なき山里の 桜花 ほかの散りなむ 後(のち)ぞ咲かまし
(伊勢・春上)

ここでは見る人もないので、ほかの散ったあとに咲きましょう……とは、にんげんの勝手な言い分。好き勝手なことを言わせながら、「ので」や「でも」を言わない花の、末吉。



五十三
古今和歌集88番。
春雨の 降るは涙か 桜花 散るを惜しまぬ 人しなければ
(大友黒主・春下)

おっちゃん、桜が散っちゃうね。そうだよ、散っちゃうんだよ。でも、みんないっしょに、送るんだよ。つないだお手手をぎゅっと握り返してくれる、おっちゃんこそ、優しくて吉。



Death
古今和歌集113番。
花の色は うつりにけりな いたづらに 我が身世にふる ながめせしまに
(小野小町・春下)

自分をあきらめるのは、凶。



五十四
古今和歌集117番。
やどりして 春の山辺に 寝たる夜は 夢のうちにも 花ぞ散りける
(紀貫之・春下)

山寺での一夜。祈りのあとさき、桜の花びらが、夢のうちにも入りこんできたのは、何か、伝えたいことがあったのでしょうか。あやしの精に、言葉もなくて。半吉。



五十五
古今和歌集124番。
吉野川 岸の山吹 吹く風に 庭のかげさへ うつろひにけり
(紀貫之・春下)

爽やかな風が吹くのに、うつむいて、ときの移ろいに感じ入ってしまうのは、わたしだけでしょうか。暗い水が、その一枝に、照らされているものですから。立ち止まって、小吉。



五十六
古今和歌集133番。
ぬれつつぞ 強ひて折りつる 年のうちに 春は幾日も あらじと思へば
(在原業平朝臣・春下)

得て満足。でもすぐに、失くしそうです。半吉。



五十七
古今和歌集137番。
五月待つ 山時鳥 うち羽振き いまも鳴かなむ 去年(こぞ)の古声
(よみ人知らず・夏)

聴かされるとき哀切な、時鳥の鳴き声。聴いていてつらくなったのに、思いの丈に鳴いてくれた、去年の、その古声をまた聴きたくて。おなじ気持ちになれて、中吉。



五十八
古今和歌集143番。
時鳥 はつ声聞けば あぢきなく ぬしさだまらぬ 恋せらるはた
(素性・夏)

時鳥が、今年初めて、鳴きました。その声を聴くと胸騒ぎがして、むやみに、恋をしたくなりました。充実の予感、吉。



五十九
古今和歌集139番。
さつき待つ 花橘の 香をかげば むかしの人の 袖の香ぞする
(よみ人しらず・夏)

どこからか甘酸っぱい香りがします。これは、昔かいだのと、おなじ匂い。あの女には、もう、男ができたのかな……。初夏、花の香に誘われた男たちが、想うのかもしれません。吉。



六十
古今和歌集153番。
五月雨に もの思ひをれば 時鳥 夜ふかく鳴きて いづち行くらむ
(紀友則・夏)

夜も更けているのに、雨も降るのに、外の面に、血を吐くまでに鳴く鳥は、どこへ行こうとしているのでしょう。灯心を秘めて、吉。



六十一
古今和歌集154番。
今さらに 山へ帰るな 時鳥 声のかぎりは わがやどに鳴け
(よみ人しらず・夏)

血を吐くまでに鳴くという時鳥。どこででも鳴くというわけではありません。山へ帰りたいのは、血を吐いていい場所が、あなたさまのやどでないから。選ばせて、吉。



六十二
古今和歌集167番。
塵をだに すゑじとぞ思ふ 咲きしより 妹とわが寝る とこなつの花
(凡河内躬恒・夏)

「とこなつ」は、なでしこの花。妻と共寝の床ほどにも大事にしています。ながく咲くので、昔の人が、「常夏のようだ」と感じたように、ながく愛して、大吉。



六十三
古今和歌集168番。
夏と秋と 行きかふ 空のかよひ路は かたへすずしき 風や吹くらむ
(凡河内躬恒・夏)

心地よい秋の訪れに、問いかけます。おい、秋よ。おまえさん。いってしまった夏と、大空のどこかで、すれ違ったりしなかったかい。よろしくと伝えて、大吉。



六十四
古今和歌集177番。
天の川 浅瀬しら波 たどりつつ 渡りはてねば 明けぞしにける
(紀友則・秋上)

浅瀬で遊んでいるうちに、夜が明けてしまいましたね。ここは、遊び収めて、吉。



六十五
古今和歌集191番。
白雲に 羽根うちかはし 飛ぶ雁の かずさへ見ゆる 秋の夜の月
(よみ人しらず・秋上)

月光が、雲のたなびきも、飛びゆく雁の数までも、くっきりと照らし、何もかもが見えるよう。めったとない好機、中吉。



六十六
古今和歌集195番。
秋の夜の 月の光し 明かければ くらぶの山も 越えぬべらなり
(在原元方・秋上)

あの暗い山を、今夜なら越えられるかと思われる。こんな月の夜は。こころのなかで、幾たびも越えたけれど、まだ行動には移せないで、小吉。



六十七
古今和歌集217番。
秋萩を しがらみふせて 鳴く鹿の 目には見えずて 音のさやけさ
(よみ人しらず・秋上)

秋萩のもつれ絡まる上を、けだものの、踏み抜いた気配がしました。その鳴き声のいちずさに、打たれぬひとがあるでしょうか。 必ず叶うでしょう。末吉。



六十八
古今和歌集231番。
秋ならで あふことかたき 女郎花 天の河原に 生ひぬものゆゑ
(藤原定方朝臣・秋上)

天の川の織姫でもないのに、秋にしかめぐり逢うことのできない、女郎花の花。お目のかぎり、手にも摘み、可愛がってやってください。 はかないこの世に咲いて、中吉。



六十九
古今和歌集267番。
佐保山の ははそはの色はうすけれど 秋は深くも なりにけるかな
(坂上是則・秋下)

佐保姫は、春の女神。その佐保山の葉ですら、秋がくれば、深く色づきましたよ。実りのときを迎え、大吉。



七十
古今和歌集288番。
ふみわけて さらにや訪はむ もみぢ葉の 降り隠したる 道とみながら
(よみ人しらず・秋下)

散り敷いたもみじの葉が、やどへの道をすっかり隠していたとしても、踏み分け踏み分け、あなたを訪ねましょう。道を捜すまでできるなら、大吉。



七十一
古今和歌集318番。
今よりは つぎて降らなむ わがやどの 薄おしなみ  降れる白雪
(よみ人しらず・冬)

冬将軍が到来しました。やどの薄を並み伏せ、雪は、当分のあいだ降りつづけるでしょう。つらくとも、養分をたっぷり含んだ雪どけ水となって、報いられるでしょう。末吉。



七十二
古今和歌集330番。
冬ながら 空より花の 散り来るは 雲のあなたは  春にやあるらむ
(清原深養父・冬)

冬というのに、この雪は、空から花が散り来るようです。さては、雲の向こうは、すっかり春のようですね。ことだま呼び寄せ、大吉。



七十三
古今和歌集356番。
万代を 松にぞ君を 祝いつる 千歳のかげに 住まむと 思へば
(素性法師・賀)

娘が、父親の誕生日を祝う歌。男親には、娘の変化がわかり、娘にも、男親の変化が、わかるものです。わかっている、ということを伝えられないもの。そして、感じるものですね。大吉。



七十四
古今和歌集368番。
たらちねの 親のまもりと あひ添ふる 心ばかりは 関なとどめそ
(よみ人しらず・離別)

あなたに、つらいことや、悲しいことがあった日には、どんなにしてでも、そばにいてやりたいと思っています。関守がとどめても、わが子を想うこころだけは、止められません。想いつづけて、吉。



七十五
古今和歌集405番。
したの帯の 道はかたがた 別るとも ゆきめぐりても 逢はむとぞ思ふ
(紀友則・離別)

ゆきずりの車にものを言うと、そこには、いい女が乗っていました。それは、一瞬のできごと。それぞれの道に分かれていったけれど、これっきりにしたくなくて、中吉。



七十六
古今和歌集412番。
北へゆく 雁ぞ鳴くなる 連れて来し かずは足らでぞ 帰るべらなる
(よみ人しらず・羇旅)

ふるさとを離れて落命した仲間は、その魂を、連れて帰りましょう。弔うために旅をつづけるということが、人にも、あるでしょう。生きて吉。



七十七
古今和歌集422番。
心から 花の雫に そぼちつつ 憂く干ずとのみ 鳥の鳴くらむ
(藤原敏行朝臣・物名)

「憂く干ず」を詠みこんだ物名歌。ぐずぐずと、ゆううつをひきずって、鳥の鳴くのさえ、ぼやいて聴こえます。不平不満をいえるのは、緊急事態でないから。吉。



七十八
古今和歌集443番。
ありと見て たのむぞかたき 空蝉の 世をばなしとや 思ひなしてむ
(よみ人しらず・物名)

「尾花」を詠みこんだ物名歌。この世のことは空蝉のように、あてにできないもの。あてにしなければ、万事、実感できるところに、収まるのではないでしょうか。発想を変えて、大吉。



七十九
古今和歌集456番。
波の音の 今朝からことに 聞こゆるは 春の調べや あらたまるらむ
(安倍清行朝臣・物名)

「唐琴」を詠みこんだ物名歌。自分自身が、大きく成長したのでしょう。五感に、確かに感じられます。いよいよ春ですね。大吉!



八十
古今和歌集462番。
夏草の うへはしげれる 沼水の ゆく方のなき わが心かな
(壬生忠岑・物名)

「交野(かたの)」を詠みこんだ物名歌。新緑の、木陰の暗いこと。そこに心がとどまっています。お相手も、他にも、おなじ想いの方が、あるでしょう。一人ぼっちではないので、大吉。



八十一
古今和歌集832番。
深草の 野辺の桜し 心あらば 今年ばかりは 墨染めに咲け
(上野岑雄・哀傷)

あのひとが、この世のひとでないいま、悲しみを分かち合ってくれるのは、桜よ、おまえだけだ。思い出の野辺に咲くでしょう。根方から涙を吸いとって、ついに墨染めに咲くでしょう。一途の性、中吉。



八十二
古今和歌集853番。
きみが植ゑし ひとむら薄(すすき) 虫の音の しげき野辺とも なりにけるかな
(御春有助・哀傷)

手入れの行き届かなくなった庭で、あなたの植えた薄に、小さな虫たちがたくさん鳴いて、慰めてくれます。それは、後々のことを考えて、遺されたものだったと気づきました。遺志を汲んで、大吉。



八十三
古今和歌集887番。
いにしへの 野中の清水 ぬるけれど もとの心を 知る人ぞ汲む
(よみ人しらず・雑上)

ぬるくなったといって旅人が立ち去ってから、また、汲む人が、あるでしょう。そこに、古くからある水には、おのずから、清らかさを取り戻すちからが備わります。天然にして大吉。



八十四
古今和歌集881番。
ふたつなき ものとおもひしを 水底の 山の端ならで 出づる月影
(紀貫之・雑上)

月は、天にただ一つあるものと空ばかり眺めていると、水底にも映り、きらめいていました。あなたが輝くと、照らされてうつくしいものが、たくさんあります。笑顔でいましょう。中吉。



八十五
古今和歌集879番。
おほかたは 月をも賞でじ これぞこの つもれば人の 老いとなるもの
(業平朝臣・雑上)

毎夜、月を眺め明かし、くよくよと物思いにふけってばかりでは、老けこみますよ。案ずるより生むが易し。行動してみましょう。中吉。



八十六
古今和歌集864番。
おもふどち 円居せる夜は 唐錦 立たまく惜しき ものにぞありける
(よみ人しらず・雑上)

気心の知れた人々と集まり、和やかに話ができる場を、なかなか立ち去れるものではないですね。日頃の仲間を大切にして、大吉。



八十七
古今和歌集869番。
色なしと 人や見るらむ 昔より ふかき心に 染めてしものを
(近院右大臣・雑上)

白い絹を贈るのは、あなたへの気持ちがなくなったという意味ではないのですよ。深くなった心を表すのに、何色に染めていいか、わからないのです。染められて、吉。



八十八
古今和歌集891番。
笹の葉に 降りつむ雪の 末を重み 本くたちゆく わが盛りはも
(よみ人しらず・雑上)

降り積もる雪の重みで、笹の葉がたわみ、根本からくずおれそう。でも大丈夫、春がきて、とけた雪は、根方の土を豊かにするでしょう。それはあなたの、お人柄のように。愛されて、吉。



八十九
古今和歌集900番。
老いぬれば さらぬ別れの ありといへば いよいよ見まく ほしき君かな
(業平朝臣・雑上)

年老いてしまい、どうしようもなくこの世とお別れする日があると思うと、会わずにいられません。老いらくと軽んじられず、受け止められますように。素直な心を忘れず、大吉。



九十
古今和歌集910番。
わたつ海の 沖つ潮会に 浮ぶ泡の 消えぬものから 寄るかたもなし
(よみ人しらず・雑上)

沖の潮目に浮かんだ泡は、なかなか消えもしませんが、身を寄せるかたもありません。退屈はしないけれど、これでいいのだろうか。迷ったときが、始めるとき。小吉。



九十一
古今和歌集914番。
君を思ひ 興津の浜に 鳴く鶴(たづ)の たづね来ればそ ありとだに聞く
(藤原忠房・雑上)

興津浜の鶴は、誰を想って、鳴いているのでしょう。まだ、生きていますよ。元気でいて、おいでをお待ちしておりますよ……と、聞こえます。ひそかに待たれて、吉。



九十二
古今和歌集927番。
ぬしなくて さらせる布を 七夕に わが心とや 今日はかさまし
(橘長盛・雑上)

ここの滝水は、大自然が織りなす見事な布のようです。七夕にしかお会いできないあなたを待つ織姫のように、誰のものにもならず、絶え間なく織りつづけるのです。天分を続けて、大吉。



九十三
古今和歌集938番。
わびぬれば 身を浮き草の 根をたえて 誘う水あらば いなむと思ふ
(小野小町・雑下)

あなたのおいでがなくて、寂しいのです。いっそ根を切って、浮き草のように、流されてしまいたい。流されてはだめ。切らずに、漂って吉。



九十四
古今和歌集947番。
いづくにか 世をばいとはむ 心こそ 野にもやまにも まどふべらなれ
(素性・雑下)

この世をイヤだと思うのに、世間を離れて野山にいても、落ち着かないのです。それは、一人さまようからですね。おなじ景色を見せたい人を、誘って吉。



九十五
古今和歌集959番。
木にもあらず 草にもあらぬ 竹のよの はしに我が身は なりぬべらなり
(よみ人しらず・雑下)

木にも草にも、隠れる場所がない。竹の節の上の、はじっこにしか、居場所がない。でも、そこ、目立ちますよ。輝いてみましょう。隠れていないほうが、いい人なのですから。大吉。



九十六
古今和歌集979番。
きみをのみ 思ひ越路の 白山は いつかは雪の 消ゆるときある
(宗岳大頼・雑下)

あなたをお慕いし、根雪の深い山を、はるばると越えてきました。寒い、冷たい思いをしたけれど、会いたい人にまた会えた、喜びの笑顔が見えるよう。大吉。



九十七
古今和歌集987番。
世の中は いづれかさして わがならむ 行き止まるをぞ 宿と定むる
(よみ人しらず・雑下)

自分の所有といえるものは、この世に何もなさそうですが、流れ着いたこの地を、自分の棲みかと決めました。こころ定めて、中吉。



九十八
古今和歌集994番。
風ふけば 沖つ白波 たつた山 夜半には君が 一人越ゆらむ
(よみ人しらず・雑下)

風も波も立つこんな夜更け、あなたは、山を越えようとなさるでしょうか。おそばにいられないので、わたしでない誰かでいい、どなたでも、あなたを守ってくださいますように。祈って、大吉。



九十九
古今和歌集1041番。
われを思ふ 人をおもはぬ むくいにや わが思ふ人の 我を思はぬ
(よみ人しらず・雑体)

欲しいものの違い、どう表現するかの違いだけで、自分が思っていれば、相手も、何がしかは、思うもの。意中の人のあって、吉。




古今和歌集1035番。
蝶の羽の ひとへに薄き 夏衣 なればよりなむ ものにやはあらむ
(凡河内躬恒・雑体)

からだになじんだ夏の衣に、皺が寄ります。そんなふうに、あなたと月日を積み重ねたいのです。なれるほどに、よくなって、大吉。



百一
古今和歌集1094番。
こよろぎの 磯立ちならし 磯菜つむ めざしぬらすな  沖にをれ波
(相模歌・東歌)

こよろぎの磯に、メザシのような小さな子らが、せっせと磯菜を摘んでいます。波よ、沖におれよ! この大事な子らを、濡らすな。天にも、地にも、人にも、守られて大吉。
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