歌人・辰巳泰子の公式ブログ

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赤まんまの覚え歌(1~42)

2012-11-22 06:49:55 | 日常
アクセスありがとうございます。

更新止まってるけど、何か書いてないかなぁ~と、のぞきに来てくださる方のために、なんかちょこっと、書いておきます。

13号の、短歌だけは、いまできているぶんですと、こんな感じ。

……………………………………

ポリ袋はきっと洗って捨てるよう母の言葉に貧しくならず

きわまるところ望みに触れているようにあぶらしみいだす鳥の皮

一輪の野菊を挿しし卓上に納豆パック置きてもの書く

好きな子だけ入れて作ったハーレムの悩ましさかなポテトサラダは

人それぞれ好みのことをいうけれど物それぞれに迎えん秋は

連山の紅葉を背負い君は来ん器は黒を用意しておく

ゆかば必ず雨のゆうべも待つというありきたりの愛レモン酸っぱし

ベーコンを挟んで蒸せばいいのにと言われてしぼむミルフィーユの夢

つゆだくの豚丼を食らいかっ飛ばすライダーおりぬ誰かの歌に

焼き網が出しっぱなしになる小春 書けないときはさしあたり焼く

子育てのはざましみじみうまかりき普通の食パンとただの水

あれやこれやの具を考える終電車追いかけてきた月のはるけさ

誰のでもいじわるは捨て帰り着け年月の果てワインを開けん

濡れ落ち葉にしてから焚くのだと言えり恋の一つのありざまとして

真ん中の少しへこんだアルミ鍋かなしくて叩いたひとがいた

ひと知れず書いて小瓶に流さんか夫と呼びたきひとのあること

昆布だし利かせた水でお茶も淹れお疲れさまと遠くへも言う

痩せ我慢のあなたのようで油揚は細くなりしが肉に近づく

春菊の芯の白さが気になりていましばし言い切るをためらう

温泉に浸かったようにほぐされて冷凍だったわたしの落差

そのものを恋うるこころのやわらかさ言い切るよりは包んでいよう

吹かすほどお熱いのより冷たくはさせずにいたい恋も豆腐も

すり鉢がなくてもごまは手ですれて財布が風邪をひかないもやし

ほかでもない年の挨拶交わし過ぐエレベーターの知らない家族

手加減をしない甘さに攻めるのが黒豆殿にはよいと思えり

華やかにせんと凝らせば口つむぐむつかしい子には丁寧にいく

大つごもりもっともっととせがまれて回れ人参のかざぐるま

思い出の路地はいつでも「いかなご」と貼り出してあれ宵のあかりに

どうやって肉は焼くのと訊かれおり半紙畳んで、はらり、じゅっ

終わりてのち名残のながき恋に似てオオバギボウシ少しく苦い

飲みこみし言葉あるごと血の溜まりがらんと小さし鳥の心室

世はみどりしたたる音す伏見甘買うためにだけきょうを出でんか

節電の夏のいとまに分け合いし日曜午後のランチョンミート

星砂の三角のかど当たらずにかつ丸めずにきょうを締めよう

火を入れた空心菜はやわらかく手つなぎ玉子と消えてゆく

炭起こす たましいのどこかで ひとときを面打ちならぬ串打ちとして

あのいわゆるキューちゃんになることは黙りおく生姜醤油に胡瓜漬ければ

おかひじきシャリシャリ噛まれふとかなし大道芸人はなぜ独り

美味しいと言われてうしろめたきものサバ水煮缶でこさえたカレー

冷蔵庫あけて片すみ「出番か」と小瓶の中の柚子胡椒

逃げて来しいつかの冬のきりぎりす我らと胡瓜分け合いて死す

これを限りの食事というにあらざるを茗荷せつなく夕映えている

………………………………

ここまでで、42首。
お待ちいただいている方のために、アップしました。
お急ぎでない方は、13号にて、ごゆっくりどうぞ。
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