田川市石炭・歴史博物館のブログ

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博物館消防訓練

2015年01月30日 | 日記
毎年ニュース等でも取り上げられていますが、1月26日は「文化財防火デー」です。

昭和9(1934)年に法隆寺伽藍の国を挙げての大修理事業が開始されました。
なかでも金堂の解体修理にあたっては、壁画の傷みがひどく、取り外す前に応急的な処理と模写が行われることになりました。
そのさなかの昭和24(1949)年1月26日、模写作業途中の金堂が炎上し、壁画が焼損したことを契機に文化財の保護体制が強化され、
翌年の昭和25(1950)年には文化財保護法が制定されました。
このような背景と、1月~2月が1年のうちで最も火災が発生しやすい時期であることから、昭和30(1955)年に1月26日を「文化財防火デー」とし、
以降毎年1月26日は、文化財を火災やその他の災害から守るとともに、全国的に文化財防火運動を展開し、文化財愛護に関する意識の高揚を図る日とされています


これに倣い、昨日、博物館では消防訓練を実施しました。
博物館は多くの貴重な資料を所蔵していることは勿論、多くの方にお越しいただく施設ですから、
所蔵資料と来館者両方の面から、消防・避難誘導訓練を行うことで、より安心安全な空間を作っていく必要があります。
昨日は、田川地区消防署からも3人の方にお越しいただき、消火器の使い方・初期消火についてご指導いただきました。


◆練習ということで水消火器を使用し、館職員が消火器の使用方法を学びました。

災害が起こらないことが一番ですが、不時の災害に冷静に対応するためには、日頃の防災意識向上が何よりも大切だと改めて感じました。


「大寒 寒糊炊き」

2015年01月20日 | 日記
今日は「大寒」・・・1年で寒さが最も厳しくなる頃です
毎年大寒が近づくと思い出すことがあります。
それは「寒糊炊き」の行事です。

文化財の修理には、小麦澱粉を水で炊いて作る新糊と古糊が主に使われます。
新糊は毎朝その日使う分を炊くのですが、古糊は名前の通り、糊を甕に入れて10年以上暗所に保管し、
微生物の働きでゆっくりと熟成させたもののことを言います
この古糊は「装こう」と呼ばれる日本画の表装作業の際に用いられ、主に掛け軸などの裏打ち紙を貼り合わせる際に使われています。
古糊の特徴は、柔らかく、接着力が弱く、そして接着後も水を与えると容易に剥がれる。
また使用後にカビが生えにくいことなどが挙げられます。


「古糊」は1年に一度、大寒の頃に作ります。
この古糊作りは、毎年雑菌の少ない寒い時期に作られるため「寒糊炊き」と呼ばれています。
古糊は各修理工房で独自に作られるもので、その配合も工房ごとに微妙に異なるようです。
(同じ工房で作られたものでも、甕によって異なることが多い)
最初は液体だった糊が、混ぜ続けることによって徐々に固まり始めると、
「撹拌する棒が重くなり、腕が痛くなる」手を休めると糊は直ぐに焦げてしまうため、
焦がさないように皆で協力し掻き混ぜ続けなければ糊は炊きあがりません。
炊きあがった糊を甕に移し、甕が一杯になるまで炊く作業は続きます。
全ての甕(工房によって個数は異なる)が一杯になったら、蓋をして封をします。
甕の表面に作った日(年月日)と共に、糊を炊いた一人ひとりの名前を書き記します
保管期間中には、表面にカビが生え、毎年そのカビを取り除く作業も行われます。
カビも最初の数年は酷いようですが、次第に生成しなくなるそうです。
初めは甕いっぱいに作った糊も、10年経つと使用できる量は3分の1程度になるようです。


以前寒糊炊きに参加する際にこの行事について調べたのですが、
この古糊が出来上がる10年という期間は、ちょうど表具師が一人前になる期間とも言われており、
糊炊きは弟子入りした最初の仕事で、10年後、暖簾分けする時に自分がかつて作った古糊を分けてもらい独立していたようです

我が身を振り返ると、最初に寒糊炊きに参加させていただいた頃から、早くも5度目の大寒を迎えました。
職人さんと比べても意味のないことですが、毎年この季節になると襟を正し、また1年精進しようという気持ちになります。

これから2月上旬まで暦の上では寒さの厳しい日が続きますが、皆さま健康第一にお過ごしください

保存現場見学バスツアー in 九州国立博物館vol.3 見学レポート

2015年01月19日 | 日記
1月18日(日)に、山本作兵衛コレクション保存現場見学バスツアー in九州国立博物館vol.3を開催しました。
前回同様、九州国立博物館(太宰府市)において保存現場見学班と特別展等鑑賞班に分かれて見学を行いました。(午後には班が入れ替わりました。)
今回は九州国立博物館の免震装置を見学することもできました


【免震装置を見に行くところ 快晴!バスツアーの最後にふさわしいお天気でした

その後、コレクションが平成24年からお世話になっている部屋に入り、
その部屋で約3年コレクションを調査し、保存のための様々な処置を行ってきた先生から、
コレクション・酸性紙・どんな処置を行ったのか等々解説をしていただきました。
作業過程での様々な話(苦労話が大半を占めていたような)を聞くことができました。


【先生が解説しているところ】


【レジュメを見ながら、材料に触れながら解説を聞いているところ】

今後安全に保存・公開することを目的としてさまざまな処置を行いましたが、一見すると分からないような作業が数多くあります。
元気になったコレクションの一部は今後公開していきますが、額装してしまうと見えない部分に多くの手と時間がかけられている、
ということもこの日の見学者の皆さまにご覧いただきました。


【コレクションを収める箱の構造や、記録画の装丁の実際を見ているところ】


ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。
大変残念ではありますが、このバスツアー(保存現場見学)も今回が最後となりました。
第1回目から合わせると80名を超える方々にご参加いただきました。
段取りが悪く、ご迷惑をおかけしたことも多々あったと思いますが、
皆さまのご協力により、大きな事故もなく最後を迎えることができました

本年度、3年間に及ぶコレクションを永続的に守り残すための作業は完了しますが、
元気になったコレクションを元気な状態で次世代に繋いでいくために、
引き続き、皆さまの関心をいただけるよう、情報を発信していきたいと思います。
今後ともよろしくお願いいたします。

これまでバスツアーにご参加いただいた皆さま、本当にありがとうございました


平成27年 未年

2015年01月08日 | 日記

今年の干支は羊

古くから人との関わりが深い羊は、吉祥動物のひとつといわれています。
「羊致清和(ヨウチセイワ)(羊は天下太平をもたらす)」という言葉が示すように、未年は平和をもたらすと考えられています。
羊は性質が善く、温和で協調性に富み、発展の要素を強く持っているといわれるために、
「美」「善」「鮮」「義」「祥」など良い意味の漢字にも「羊」は使われています。

「朝、羊の群れに会うと良いことがある」「羊雲がでると吉祥事がある」・・・
残念ながら田川市内では、朝、羊の群れに出会うことはなかなか難しそうですが、
博物館の上に羊雲がでることを願いたいと思います(といってもこの雲は、秋頃にでる雲らしいので、しばらくお預けですが)。
来館者の皆さまを羊毛のように、温かく包み込むようなお迎えができるよう、羊に倣い、「団結」と「和」を基調として、博物館職員一丸となれればと思います。
本年も何卒よろしくお願いいたします。



ちなみに今月18日(日)実施予定のバスツアーは、定員まであと1名余裕があります。
お時間ある方は博物館へお申し込みください!
お待ちしています