大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

上院の税制改革法案が公表される:法人税減税を1年先延ばし、相続税は廃止せず

2017年11月10日 | 日記

 2017年11月9日(木)、上院共和党の税制改革案の内容が明らかになった。

 ニューヨーク・タイムズウォール・ストリート・ジャーナル下院案との違いを以下のように伝えている。

<企業>

 20%への法人税引き下げを2019年からおこなう(下院案は2018年から)。

2 個人あるいは複数人が所有する非株式会社(パススルー)に対し、新たに17.4%の税控除を認める(下院案はパススルーの最高税率を20%に引き下げる)。控除によりパススルーの最高税率は実質32%となる。

3 国内外をとわず知的所有権にかかわる支払い(自社間の支払い含む)に12.5%の課税をおこなう(下院案にはない)。

<個人>

1 所得税率の区分を現在の7つのままにする(下院案は7つから4つに減らす)。  

 ただし最高税率を現在の39.6%から38.5%に引き下げる(下院案にはない)。

2 不動産相続税の支払い義務が生じる収入を現在の2倍に引き上げるが、廃止はしない(下院案は2024年に廃止するとしている)。

3 地方税の控除を全廃する(下院案は固定資産税の控除を残す)。

4 子供一人あたり税金から差し引ける金額(税額控除)を1650ドルに引き上げる(下院案は1600ドル)。

5 医療費、学生ローンの利子、高齢者の控除は現行のまま残す(下院案は廃止)。

 大きな問題になりそうなのが、(1)地方税の控除廃止に固定資産税を入れるか否か、(2)パススルーの扱い、(3)不動産相続税を廃止するか否か(とくにトランプ氏との関係で)。

 オバマケアと異なり法案が成立しないことはあまり想定できないが(とくに下院が医療保険の加入義務の廃止を見送ったため)、法案の年内成立は微妙なように思う。