大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

上院の税制改革案、医療保険の加入義務の廃止を盛り込む

2017年11月15日 | 日記

 2017年11月14日(火)のニューヨーク・タイムズは、上院共和党が税制改革法案を修正して医療保険の加入義務の廃止を盛り込むことを検討していると報じた。

 議会予算局(CBO)は、加入義務が廃止されると無保険者が10年で1300万人増加するが、その分10年で3000億ドル以上(33兆円:1ドル=110円)の歳出削減になるとしている。

 トランプ大統領は、以前から加入義務の廃止を法案に盛り込むことを強く求めていた。

 修正の詳細がまだわかっていないが、加入義務が廃止されると保険に加入する若い健康な人が減少し、保険料が上昇することが予想される。

 オバマケアの改廃に反対した穏健派共和党上院議員の反応が注目される(減税とセットなので、修正のための駆け引きはあっても廃案につながるような動きは出にくいと思われる)。

 そのほかの修正点は次のとおり。

1 子供一人当たりの税額控除(確定した税金から引ける金額)を1650ドル(18万円)から2000ドル(22万円)に引き上げる。

2 所得税率の一部を引き下げる(22.5%→22%、25%→24%、32.5%→32%)

3 法人税減税は恒久化するが、個人減税は2025年までの時限立法とする。

 下院は2017年11月16日(木)に本会議で法案の採択をおこない、上院は感謝祭(11月23日)の後に法案の採択をおこなう予定。

 法案採択へのスピードが上がってきているが、そうした中NTYは、ゴールドマンサックスは税制法案成立の可能性を65%から80%に引き上げたと報じている。

 出先なので詳細はまた後日。


英司法、ギグ・エコノミーに待った: ふたたびウーバーのドライバーを労働者と認定

2017年11月11日 | 日記

 2017年11月10日(金)、イギリスの労働控訴審は、昨年10月にウーバーのドライバーを請負業者でなく労働者であると認定した労働審(下級審)を支持する判決を下した。

 ウーバーは、携帯やインターネットをつかって個人請負の私用車をタクシーとして呼び出すサービス会社。

 ドライバーが労働者と認められると、ウーバー社は残業手当や必要な保険などをドライバーに提供したり、最低賃金を守ることが必要になる。

 ウーバー社は判決を不服として控訴院に控訴するとしている。

 いま世界中でギグ・エコノミーが大きな問題になっている。

 ギグ・エコノミーとは、携帯やインターネットで個人にこまぎれの仕事(たとえばA店からB宅にピザを2枚届けるなど)を発注する仕組みで、タクシー以外に宅配、コールセンター、配管工事などさまざまな分野に広がりつつある。

 今回の原告はガーディアン紙に、「もしウーバーのビジネス・モデルが認められれば、小売り、ファースト・フード、あらゆる産業に同じことがおこる」と述べている。

参考: 配車サービス・ウーバー、ロンドンで免許取り消し


上院の税制改革法案が公表される:法人税減税を1年先延ばし、相続税は廃止せず

2017年11月10日 | 日記

 2017年11月9日(木)、上院共和党の税制改革案の内容が明らかになった。

 ニューヨーク・タイムズウォール・ストリート・ジャーナル下院案との違いを以下のように伝えている。

<企業>

 20%への法人税引き下げを2019年からおこなう(下院案は2018年から)。

2 個人あるいは複数人が所有する非株式会社(パススルー)に対し、新たに17.4%の税控除を認める(下院案はパススルーの最高税率を20%に引き下げる)。控除によりパススルーの最高税率は実質32%となる。

3 国内外をとわず知的所有権にかかわる支払い(自社間の支払い含む)に12.5%の課税をおこなう(下院案にはない)。

<個人>

1 所得税率の区分を現在の7つのままにする(下院案は7つから4つに減らす)。  

 ただし最高税率を現在の39.6%から38.5%に引き下げる(下院案にはない)。

2 不動産相続税の支払い義務が生じる収入を現在の2倍に引き上げるが、廃止はしない(下院案は2024年に廃止するとしている)。

3 地方税の控除を全廃する(下院案は固定資産税の控除を残す)。

4 子供一人あたり税金から差し引ける金額(税額控除)を1650ドルに引き上げる(下院案は1600ドル)。

5 医療費、学生ローンの利子、高齢者の控除は現行のまま残す(下院案は廃止)。

 大きな問題になりそうなのが、(1)地方税の控除廃止に固定資産税を入れるか否か、(2)パススルーの扱い、(3)不動産相続税を廃止するか否か(とくにトランプ氏との関係で)。

 オバマケアと異なり法案が成立しないことはあまり想定できないが(とくに下院が医療保険の加入義務の廃止を見送ったため)、法案の年内成立は微妙なように思う。


米下院共和党、国境調整税を事実上放棄

2017年11月09日 | 日記

 2017年11月8日(水)、アメリカの地方選挙で民主党が躍進した。

 ニュージャージー州の知事選挙では、民主党候補が予想より差を広げて勝利した。

 またバージニア州では、民主党知事が誕生するとともに、州下院で民主党が過半数を超えた。

 こうした中、下院で税制改革案の修正が進んでいる。

 そのひとつが、自社内での国境を越えた取引(金額)に20%を課税する規定の見直し。

 影響をうける企業から猛烈な批判をうけ、下院共和党はもともとの既定の95%を廃止した

 この結果、この規定にかかわって今後10年に予想される税収は、1550億ドル(17兆円:1ドル=110円)からわずか60億ドル(7000億円)程度に大幅に減少する見込み(ウォール・ストリート・ジャーナル)。

 このほか減税の財源を確保するため共和党下院は、医療保険加入の義務づけを廃止することを検討している。議会予算局(CBO)は、それが実現すると2027年には無保険者が1300万人増加するが、その分政府支出が減少し10年で3380億ドル(37兆円)の歳出削減になると予想している(ワシントン・ポスト)

 この規定が法案に盛り込まれると、上院の穏健派共和党議員の賛成を得ることは難しく、法案の成立自体が難しくなる。


上院共和党の税制改革案: 法人税減税の実施を1年先送り

2017年11月08日 | 日記

 ワシントン・ポストは、上院共和党が策定中の税制改革案について以下の点で下院案と違いがあると報じた。

 20%への法人税引き下げを2019年からおこなう(下院案は2018年から)。

2 地方税の控除を全廃する(下院案は固定資産税の控除を残す)。

3 子供以外の家族に対する税控除はおこなわない(下院案は5年にかぎり子供以外の家族一人当たり300ドルの税控除をおこなうとしている)。

4 所得税率の区分を現在の7つのままにする(下院案は7つから4つに減らす)。

 なお上院の議員定数は100で、共和党議員は52。

 議会ルールで、債務が増加する恒久法案を可決するには60票が必要。

 しかし現在のところ過半数での可決のみが可能で、その場合、法案は時限立法となる

 今回の法案も時限立法となる可能性が高いとされている。