ペンギンのひとりごと。

とにかく何事にも好奇心旺盛なペンギンのひとりごと。

今月の一冊(その5)「満月 空に満月」海老沢泰久著

2006-05-27 16:05:56 | 書評
「この才能がうらやましい・・・。」
古今東西を問わず、占いなどの“予測術”は、TVや雑誌などさまざまなメディアにおいて欠くことのできない重要なコンテンツであろう。人間はその予測不可能な「未来」や「運命」を探求し、精神の安堵を得ようとしてきたのだ。もし本当に「運命」や「天命」というものがあるならば、この主人公は生まれながらにして、現在の地位を獲得する「運命」を持っていたと言わざるを得ない・・・。「満月 空に満月」海老沢泰久著。 作者の海老沢氏はこれまで「F1 地上の夢」で新田次郎文学賞を、「帰郷」で直木賞を受賞した名手であり、私はスポーツライターとしての印象が強かったのだが、本書により、スポーツに限らず、人間の本質を引き出す名手なのだと知った。主人公は井上陽水、フォークソングの大御所である。持って生まれた声質と音楽的才能は幼少時から発揮されていたようだが、本人は高校を卒業するまであまり自覚していなかったらしい。「運命」が開花するのは、歯科医である父親の後継を拒否する浪人時代だ。いとも簡単にオーディションに合格。その後数年間は売れなかったようだが、その才能を見いだすディレクターとの出会いからは、あっという間にスターダムにのしあがった・・・。作者の、淡々と、しかし深い本質を描く筆力に感激の一冊。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« チャリンコ超人達のレースを... | トップ | JR中央線の遅延に思う。“便... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

書評」カテゴリの最新記事