東京都文京区本駒込。アゲハチョウ類の繁殖状況調査。定点観測の一環です。5年ほど、同一のミカンの樹を2本使って、自然状態のまま状況を調査しています。しかし今年は、例年になくアゲハチョウが不在で、羽化成功率はゼロとなっていて完敗している。
昨年まで毎年8月20日前後までに20羽以上のアゲハチョウと1~2羽のクロアゲハを羽化させ放蝶できていたが、今年は違う。
5月に昨年の10月から越冬に入ったクロアゲハの蛹が羽化。次いで春型野クロアゲハが産卵した卵から幼虫、蛹を経て、今年の6月に1羽のクロアゲハを羽化させた。
しかしアゲハチョウは昨年10月にすべての蛹が羽化して飛び去り、越冬した蛹がゼロのまま、春の4月から現在まで1羽も羽化までに至っていない。
まず、ミカンが葉が全部健在。食べられた跡がない。昨年はまさのぼろぼろ。これが事実です。
アゲハチョウがどこでもほとんど見ることができず、産卵のための飛来のほぼない。まさに壊滅状態。それでも6月~8月で2回だけ産卵がされた。2回目は20卵も産み落とされ、ほっとしていたが
1令への羽化率が悪く、1令になれたのが6匹。あとは消えた。次いで3令以上なった幼虫はアシナガ蜂の執拗な探索に引っかかって、すべて肉団子にされて消えた。スズメの攻勢も目立つ。5令幼虫になったと途端に、持っていかれてしまった。
8月20日現在、アゲハチョウの訪問もなく、卵・幼虫・蛹すべてゼロ。みかんの葉に幼虫による食べ跡がみえない。
でも、ひとつ感じることがある。今年唯一、羽化までたどり着けたのはクロアゲハ。アゲハチョウの幼虫が、いろいろな場で天敵に襲われて消えていく中で、クロアゲハの幼虫は唯一、その中で無事蛹に至ったこと。
アゲハチョウは、親の個体数が多く、しかも特定の食樹に一斉に、かつ産卵数も半端ではない。卵から5令まで、ミカンの木を多数の幼虫が群がって同時期に成長していく。アシナガバチや寄生蜂、そしてスズメなどの食害を受けても、数の論理によって、生き残った幼虫が最終結果で多く残って、羽化するという戦略。
クロアゲハは原則1本の樹に1卵。極めて成長も遅く、特に巨大になった5令幼虫は半端な大きさでない。しかし、各地に分散して産み落とされた卵、幼虫は極端なほど用心深く、かつ発見が困難。この小さなミカンの木で、大の大人2人で探し回って冗談でなく5分もかかることがザラにある。分散化と用心深さと保護色などの組み合わせで、この違いが極まる。
結果として、アゲハチョウはいろいろな原因で、産卵のために飛来できる個体数が減少すると、加速度的にさらに、羽化成功r率の低さから、個体数減少の悪循環に入ってしまう可能性が高い。
しかし、アゲハチョウの激減環境下で激減し、分散化しかつ生き残り策にたけたクロアゲハは個体数が減っていないように感じる。