2009-6-4
千葉県内の里山の現状とは何か。改めて検証を加えてみます。
千葉県の里山の構成要素の一つとしての、水源涵養林から見える里山を考えてみます。
埼玉県、東京都、神奈川県にある水源涵養林と、比較してみて本質的に違う部分がある
ことに気がついてきました。
1 千葉の里山の問題の根源は水の扱いにあります。
森林保全を前提にした、環境税は、千葉県ではいつ批准されるのか分からなくなっていると聞いています。
神奈川県や埼玉県では導入直前にあります。それは水源涵養林を大切にしようということで、そのために使おうということが前面に出て県民が納得し、その方向にあると聞いています. しかし、千葉県ではどうでしょうか。
水源を里山に求めるといっても、それおだけでは県民を説得できるだけの背景が千葉県にはないと思うからです。
2 東京都、埼玉県、神奈川県の3県、そして茨城県でも、貴重な水源としてその涵養のための森林として、その多くが県や東京都の所有となって、民間地でも樹木の伐採や開発行為が実質的に禁止され、その見返りとして所得の保証がされています。
そして県民にも森林保全のためが主体的な費用として理解されつつあります。
3 現在、CO2排出源対策をも兼ねた形で間伐や全伐が、それぞれ比較的スムースに行われています。
東京都の如く、企業としての東芝とも提携を行い、また、スギ花粉対策として、従来の杉を伐採して、全面的に植えなおすという荒療治までもが実行に移され出しています。
勿論、国策としての地球温暖化対策への積極的な参画として、東京都も企業側も高く評価されつつあります。
4 こうやっても東京都の場合でいえば、東京都下の小河内系の水源で都民や企業等の水需要に答えきれるはずもなく利根川からの導水を大規模に行っています。
でも、基礎的な部分で水ガメとしての奥山や里山の保全がしっかりと行われているのも事実です。
かって都下で激しく争われた産廃騒動も、今、潮を引くように沈静化してきました。
5 その観点で千葉県をみると、まるで異なります。
まず、法律的な面でも、千葉県での水源涵養林は、上記3県のごとく、しっかりとは保全されていません。
現在も千葉県下では、どこからも水源涵養林として、保全されている箇所の話は聞こえてきません。
その理由の一つは、里山の所有が89%も、農家などの所有物となっていて、県で管理ができない状態にあります。
多くは里山の頂上部、中小河川の源流部にあって、里山と呼ばれてはいますが、ほとんど平たんで、まさに岡に近く、現状、最も激しく開発が進んでしまった個所となっています。
6 本質的に異なる部分として、かつ千葉県の里山が残土産廃やゴルフ場に、そして山砂採取の危機にさらされる
最大の問題点、それは水源涵養林としての、里山。
東京圏で見ると、埼玉県、東京都や神奈川県では昔からから伝統的に水源涵養林として幅広くきちんと管理されてきています。
しかし、千葉県ではなぜか水源涵養林の多くが、低山の里山であり、かつ下流域の農家の方々の入会地であった。
本来水源涵養林のある個所は、町の境目などに多く、いままでは入会地として、周辺の農家同士が、肥料としても落ち葉や、季節の旬のキノコや山菜、ほだぎなどを取るなどの目的で利用されてきた箇所が多かったようです。
7 ところが、高度経済成長の開始とともに、燃料革命で一気にエネルギー供給資源としての森林機能を喪失し、石炭産業と同様にして、根源的な利用価値を失い、ために、人も入らず手入れがされない状態となって
里山からの生産物=生態系サービス=恵みを失ってしまった状況です。
そのため、かっての里山と違って恵みを生み出せなくなった途端に、その水源涵養林そのものが開発対象となってしまった。
ゴルフ場や中小の住宅地、残土産廃、よくいって畑に変わってしまった。
そして最近では山砂採取場所となってしまいました。
8 水源涵養林の開発を止める、またこれを禁止する名分がなかったことが、とても残念です。このため、一気に多方面からの開発が進んでしまったわけです。
開発された個所からは、多様な仕組みで、どこからも汚水が発生してしまいます。
下流域の土地改良区が、その田んぼの水質悪化のために迷惑料として開発業者から受け取っているのが、使途未定金となります。
開発にあたり、地域との合意事項を取り付けなければならないことから、購入する企業側では里山を買い取るにあたり、下流域にある「土地改良区」に対して、地代とは別に、
1M3あたり、相当額の迷惑料を売買契約書の内容に沿って支払うことが行われています。
その金額たるや莫大で大変な金額です。
9 どのくらいかというと、一例で100件の農家規模の土地改良区で5,000万円程度。
ほかの類似した事例で聞きましたが、ほぼ同規模で4,000万円ということでした。
7,000haもある、印旛沼土地改良区あたりではどのくらいの金額になっているのでしょうか。
その金額は莫大であり、かつ「土地改良区」では、使途未定のまま受領していますので、
使うこともできないまま、使途未定金として滞留しているとされています。まさに「埋蔵金」状態です。
でも、土地改良区とは、形の上では参加している農家の会員全体のものですので、
その使えない使途未定金の存在が、保守大国千葉県での権力の源泉となっているとまで
いわれているようです。
荒尾稔 minoruarao@tml.co.jp
*あくまで個人的な意見として受け取ってください。よろしくお願い申し上げます。