野球を舞台にアメリカを描いた秀作「ＴＡＫＥ ＭＥ ＯＵＴ」

「ＴＡＫＥ ＭＥ　ＯＵＴ」　大リーグの球場で流れる「Ｔａｋｅ　Ｍｅ　Ｏｕｔ to the Ball Game」からとったタイトルでしょう。「フィールド・オブ・ドリームス」「くたばれヤンキース」などなど、アメリカでは野球を題材にした名作がいっぱい生まれています。この「ＴＡＫＥ　ＭＥ　ＯＵＴ」２００３年のトニー賞を獲った作品。楽しみに劇場へ向かいました。
舞台は、エンパイアーズという球団のロッカールーム。真ん中に舞台が置かれ、客席がその前後にあるので、３６０度見渡せる趣向になっています。物語は、エンパイアーズの主砲・ダレンが、自ら「ゲイ」であることを告白するシーンから始まります。このセンセーショナルな告白で、エンパイアーズのロッカールームは、蜂の巣をつついたような騒ぎになります。いうまでもなく、現在の大リーグは、多国籍軍です。この告白に対して、好意的な見方をする選手もいれば、嫌悪する気持ちを隠さない選手もいます。チームリーダーのキッピーは、なんとかチームをまとめようとします。そして、ようやく落ち着きを見せた矢先、今度はチームが退潮ムードに。多額の年俸を取っている日本からきたエース・カワバタが不調になり、大事なゲームを落とします。またもカワバタへの怒り・嫉妬がチーム内を覆います。
そこに現れた救世主がシェーン。彗星のごとく登場したシェーンは、リリーバーとして大活躍！チームは上昇気流に。が、またしても事件が。ヒーローインタビューでシェーンは「試合のあと、ホモ野郎とシャワーを浴びるのは気持ち悪い！」と発言。再び、チームは大混乱！そして、さらに、もう１つ大きな悲劇が待ち受けていたのです。
さすがに、よくできた作品でした。エンパイアーズは、明らかにヤンキースを模したもの。キッピーはジーター。カワバタは野茂。非常に分かりやすい。さらに、キーパーソンとして、ダレンの代理人・メイソンという人物も登場し、現代の野球界を、きっちり描写しています。そして、人種差別など、アメリカが抱える問題も描かれています。「ゲイ疑惑」は、いま、日本でも大きなスキャンダルがおきたばかりですしね。
この作品　感動してウルウルさせてくれる場面があるかと思えば、冷酷に切って捨てる一面もあります。一筋縄ではいかない作品です。