その時、気が大きくなっていたのか、お断りする強い力が湧かなかったのか、今となっては定かではないのだけど、M乳業の宅配の勧誘に乗ってしまい、もう半年以上、毎週月曜日に乳製品を届けてもらっている。
オートロックのマンションなので「配達時間に在宅していなくてはいけないし、いちいちロックを解除するのは面倒なので」と言ったのだけど、配達会社の社長らしい営業のオジサンに「そういうマンションが多いのですが、手間をかけずに何とか配達できます」と言われたので、つい「そうですか」と納得してしまったのだ。
それでも配達の人はやはり勝手に入ってくるわけじゃなく、エントランスでインターホンを鳴らす。ピンポンが鳴れば仕事中でもロックを解除しに席を立つ。
それは別にいいのだけど、何が気になるって、配達の人が異常に暗いことなのだ。エントランスのモニターに映るその人は、こちらの気が滅入るくらい、いつも暗くて元気がない。「もうこの仕事がイヤでイヤでたまらない」といった感じで、モニターに顔半分を映しながらぼそぼそっと小声で早口に名乗り、ロックが解除されたドアからするり~っと入ってくるのだ。
1週間が始まる月曜日の朝なのよ、「おはようございます!」の10語くらい明るく言ってくれ、といつも思う。人と話すのがイヤならそれでいいから、私も配達の人と話したいわけじゃないから、何も言わなくていい。せめて元気に挨拶してくれと言いたい。その陰々滅々な感じが私の気を重くする。いつも「声を張れ、笑顔を見せよ」と言いたくなる。
その暗さがしんどくて、玄関先でカチャカチャと牛乳瓶を入れ替える音がしても、私はドアを開けない。一度ドアを開けて取りに行ったら、少し迷惑そうに恐縮して、大急ぎで保冷箱に配達品を入れていたので、何だかこちらが悪いことをしたような気分になってしまった。1人でこそっと作業をしたほうが向こうも気が楽かもしれないから、在宅していても取りに行かないことにしたのだ。
昨日、久々に友人の千恵ちゃんと電話でお話ししたのだが、彼女は仕事でものすごく疲弊していた。だからといって憂鬱そうで暗く、陰気さがこちらにまで伝わってくる、なんてことはなかった。どうしたらあんなに陰気になれるのかしら。
しかし、よく考えてみれば、その人が軽いうつとかを患っていたり、社会になじめずに何とかこの仕事に就けたのだとしたら気の毒だから、一方的に「暗すぎる」と言うのもいけないのかもしれない。その辺はむずかしいところだ。
それは別にしても、機嫌よくしていられるってことは大切なことだなと思った。心身ともに何とか調子を保っているということだものね。小学校の校歌の歌詞みたいだけど「明るく元気でほがらかに」をモットーにしている私は、そんなことを言っていられるだけ幸せなのだと思う。ありがたいことです。
どんな世の中になっても、とりあえずは自分が一番大事にしていることを、一番大事なこととして生きるということが重要なことなのだな。配達の人の話から妙な転結になっちゃったけど……。
オートロックのマンションなので「配達時間に在宅していなくてはいけないし、いちいちロックを解除するのは面倒なので」と言ったのだけど、配達会社の社長らしい営業のオジサンに「そういうマンションが多いのですが、手間をかけずに何とか配達できます」と言われたので、つい「そうですか」と納得してしまったのだ。
それでも配達の人はやはり勝手に入ってくるわけじゃなく、エントランスでインターホンを鳴らす。ピンポンが鳴れば仕事中でもロックを解除しに席を立つ。
それは別にいいのだけど、何が気になるって、配達の人が異常に暗いことなのだ。エントランスのモニターに映るその人は、こちらの気が滅入るくらい、いつも暗くて元気がない。「もうこの仕事がイヤでイヤでたまらない」といった感じで、モニターに顔半分を映しながらぼそぼそっと小声で早口に名乗り、ロックが解除されたドアからするり~っと入ってくるのだ。
1週間が始まる月曜日の朝なのよ、「おはようございます!」の10語くらい明るく言ってくれ、といつも思う。人と話すのがイヤならそれでいいから、私も配達の人と話したいわけじゃないから、何も言わなくていい。せめて元気に挨拶してくれと言いたい。その陰々滅々な感じが私の気を重くする。いつも「声を張れ、笑顔を見せよ」と言いたくなる。
その暗さがしんどくて、玄関先でカチャカチャと牛乳瓶を入れ替える音がしても、私はドアを開けない。一度ドアを開けて取りに行ったら、少し迷惑そうに恐縮して、大急ぎで保冷箱に配達品を入れていたので、何だかこちらが悪いことをしたような気分になってしまった。1人でこそっと作業をしたほうが向こうも気が楽かもしれないから、在宅していても取りに行かないことにしたのだ。
昨日、久々に友人の千恵ちゃんと電話でお話ししたのだが、彼女は仕事でものすごく疲弊していた。だからといって憂鬱そうで暗く、陰気さがこちらにまで伝わってくる、なんてことはなかった。どうしたらあんなに陰気になれるのかしら。
しかし、よく考えてみれば、その人が軽いうつとかを患っていたり、社会になじめずに何とかこの仕事に就けたのだとしたら気の毒だから、一方的に「暗すぎる」と言うのもいけないのかもしれない。その辺はむずかしいところだ。
それは別にしても、機嫌よくしていられるってことは大切なことだなと思った。心身ともに何とか調子を保っているということだものね。小学校の校歌の歌詞みたいだけど「明るく元気でほがらかに」をモットーにしている私は、そんなことを言っていられるだけ幸せなのだと思う。ありがたいことです。
どんな世の中になっても、とりあえずは自分が一番大事にしていることを、一番大事なこととして生きるということが重要なことなのだな。配達の人の話から妙な転結になっちゃったけど……。