“価格”、すなわち物の値段のことである。息子の義父は、世界的なアイヌ木彫家である「貝澤徹氏」で、彼の作品はトンボ、衣類などユニークなものがたくさんある。民放テレビ「情熱大陸」で取り上げられたこともあり注文が殺到し、品物が届くのに5年もかかる物もあるという。
このテレビを見た千葉県在住の方が、飛行機を使って日高管内平取町にある彼の工房まで、作品を買いに来たという。ある時、息子が義父に「価格を3倍にすれば・・・」とアドバイスしたところ、貝澤氏はそのアドバイスを拒否したという。
彼の職人気質が許さなかったのだろう。需要と供給だけによって価格が決定されるならば、貧しいものは彼の作品を入手できず、展示会や写真で鑑賞することとなる。必要なもの、欲しいもの、与えられるもの、そして心の持ちようは人それぞれであるが、命だけは掛けがえないものである。
富裕層と貧困層、今回のコロナ禍でこの格差が拡大しようとしており、年配者と若者も命が差別されようとしている。命には限りがあり、“エクモ”にも台数の限りがあるので、ある意味で仕方ないとも思うが、みんなが平等に救われるように一刻も早い有効なワクチンの開発が望まれる。なお「貝澤徹氏」のことを書いている、今年の7月20日付けブログ投稿を再掲します。
<ブログ>
令和2年5月30日、民放テレビ「情熱大陸」で、アイヌ木彫家“貝澤徹氏”を放映していた。貝澤徹氏は、アイヌ文化を守り続けるために日高管内平取町二風谷で、木を彫り続けている。
先月、白老町にオープンした国立民族象徴空間「ウポポイ」にも、彼のアイヌの入れ墨をした女性を描いた木彫作品が展示されている。その作品が下の写真である。注目してもらいたいのは、放映されたテレビの下部に書かれていたテロップである。
テロップには、「だから僕は僕なりの役割でやってくし」と書かれているが、人間は誰にでも役割を持っているので、その役割を粛々と行なっていけば良いのでないかと思う。役割はおのずから一人一人違っているが、その役割を各人が十二分に果たした時、組織(国)は無限の力を発揮すると思う。
(於:札幌駅地下街)
「十勝の活性化を考える会」会長」
注) 貝澤徹
1958年、二風谷に生まれ、工芸家の父(勉)やその仲間の職人に囲まれて育つ。 曾祖父の貝澤ウトレントクは、明治時代に名工といわれた二人のうちの一人。その曾祖父から引き継ぐ伝統を重視しながら、そこに独自の感性と技術をとけ込ませ、自分らしさやメッセージを表現する、独創的なアイヌアートに精力的に取り組んでいる。ふと気づいたことを題材に作品を創作。代表作「UKOUKU(ウコウク)/輪唱」は、昔のアイヌ民族の入れ墨をした女性の手の写真から発想し、世代交代しながら文化が受け継がれるというメッセージをこめて創り上げた。北海道アイヌ伝統工芸展北海道知事賞ほか受賞多数。「北の工房 つとむ」店主。
(出典:平取町ホームページより)
木彫り大作、作業大詰め 3月に札幌で展示のシマフクロウ
平取の貝沢さん
【平取】町二風谷の工芸作家貝沢徹さん(60)がアイヌ民族の守り神であるシマフクロウの木彫りの大作に取り組んでいる。札幌市が2019年3月、市営地下鉄南北線さっぽろ駅構内の歩行空間に展示するオブジェだ。貝沢さんは「多くの人に親しまれる作品に仕上げたい」と日々、木づちでのみを打っている。
白老町の民族共生象徴空間の20年開業をアピールする「アイヌ文化を発信する空間」に設けられ、同空間では最大のオブジェとなる。貝沢さんは英国の大英博物館に作品を出品するなど高い技術に定評があり、札幌市から今春に制作を依頼された。 作品はアイヌ民族の守り神シマフクロウが空に飛び立つ姿で、高さは2メートル40センチ、左右の翼を胴体に合わせると、両翼は4メートル超となる。原木は平取を流れる沙流川にあった埋もれ木で「いつか大作を制作するために保管していた」という。
貝沢さんにとってこれほど大きな作品は初めて。胆振東部地震で工房内の作品も倒壊する被害を受けたが、原木を立てずに作業をしていたため、シマフクロウ像の倒壊は免れた。「立てていたら倒れて割れ、やり直しだった」と話し、守り神に救われたことに感謝している。
(出典:2018年12月10日付け、北海道新聞 電子版より)