中谷巌著 “資本主義はなぜ自壊したのか”の紹介。この本には、日本のグローバル資本主義について書かれていたので、その一部分を参考までに載せます。
中谷巌氏は、日本の経済学者として竹中平蔵氏と共に小泉内閣のブレインの一人でしたが、彼が提言した経済政策の一部については、自ら間違った政策だったとして懺悔の気持ちで書いており、新型コロナ禍において大変参考になると思います。
『(前略)それは江戸時代に限ったことではない。現代社会でも、客の喜ぶ姿を見るのが何よりの生き甲斐だとか、あるいはどんなに手間がかかっても、他人には真似のできない優れた工芸品と頑張っている人はたくさんいる。しかし、こうした「利益」は「二の次ぎ」という考え方は、経済学では全てが捨象されてしまう。
アリストテレスが「人間は社会的な動物である」と言ったように、人間は本来、集団の中で生活する生き物である。人間は家族や心を許せる友人のいない天涯孤独の環境に満足して一生を終えることができる人はめったにいない。』
(中略)
『あのアダムスミスの“見えざる手”を曲がりなりにもはたらせることができたのは、市場経済を「不純」にするさまざまな「外部」の存在が、その本来的な不安定の発現を一定程度おさえてきたからなのである。
外部の存在とは、中央銀行や強制力を持った政府のことである。中央銀行が通貨の管理をし、政府が所得再分配政策や環境規制をするといった、市場から見ると「不純」なことが国内経済ではそれなりに存在していた。
しかし、グローバル資本主義の下では、そのような強制力を持った「外部」は存在しない。つまり、グローバル資本主義というモンスターには、今のところ天敵はいないのだ。だが、このことを世界中の人々が認識できれば、ひょっとすると我々はこのモンスターに一定の枠をはめる知恵を見出すことができるかもしれない。怪物の動きを拘束する何らかの有効な鎖を作りあげることができるかもしれない。そのためには、まず我々は「欲望の抑制」ということを学ばなければならない。
このまま手をこまねいていれば、やがてはグローバル資本主義というモンスターはふたたび暴れはじめ、己自身をも破壊するほどの猛威を振るうだろう。そして、その厄介は間違いなく我々自身にも降りかかってくる。
だが、そのときになって初めて気づいても遅すぎるのだ。モンスターを暴走させ、人類を滅びの淵に追いやったのは、欲望を抑えることができなかった、他ならぬ我々自身である。』と。
思うに、共に生きる心がなければ世の中は調和しないという神仏、宇宙の真理ということであろう。みんなが感謝、謙虚な心を持ち、主義や思想を超えて感謝の心で生を全うすることが大切だろう。つまるところ地域活性化は、心の見直しなのかもしれない。
「十勝の活性化を考える会」会長
注) 中谷巌
中谷 巌は日本の経済学者。専門はマクロ経済学。一橋大学名誉教授。
小渕内閣の首相諮問機関「経済戦略会議」に竹中平蔵らとともに参加し、議長代理を務めるなど政府の委員を多く務め、1990年代には、構造改革推進の立場から政策決定に大きな影響力を持った。
その後、2008年に著書『資本主義はなぜ自壊したのか』で新自由主義、市場原理主義、グローバル資本主義との決別を表明し、その立場を一転させた。
新自由主義からの転向
著書『資本主義はなぜ自壊したのか〜「日本」再生への提言』(集英社、2008年、まえがきや)、論文「小泉改革の大罪と日本の不幸 格差社会、無差別殺人─すべての元凶は『市場原理』だ」(『週刊現代」12月27日・01月03日号、2008年12月15日発売)の中で、過去に自分が行っていた言動(アメリカ流の新自由主義、市場原理主義、グローバル資本主義に対する礼賛言動、構造改革推進発言など)を自己批判し、180度転向したことを宣言した上で、小泉純一郎・竹中平蔵・奥田碩の三人組が実行した聖域なき構造改革を批判し、ベーシック・インカムの導入等の提言を行っている。
中谷は「新自由主義による自由取引市場の形成は、人類の滅亡を早める」と主張しており、グローバル資本主義に無制限の自由を与えるのではなく、一定の規律を設け制御する必要性を説き、統制機関として世界中央銀行・世界中央政府の設置を主張している。
(出典:『ウィキペディア(Wikipedia)』より抜粋)