枕上書 番外編より
白ゴンゴンは まさに、白浅姑老姥姥が愛読している
物語のお姉さんたちのように 時空を超えてしまった
のだ。
今、白ゴンゴンは帝君の 目の前に座っていた。
彼は、従者が彼の為に用意した小さな椅子の
肘掛けを支えに、好奇心をもって 目の前の
父君を見ていた。幾十万年時空を超えたかも
わからなかったけれど、目の前には父君がいる。
父君に出来ない事などないのだから・・・
心配はいらない。きっと父君なら 自分を送り
返すことができるに違いないのだから・・・
目の前の 若い父君は しばらく彼を見て、
言った。「貴方は 本君の息子だと言った。
しかし、本君は 結婚した事がない」
ゴンゴンはこの言葉にとまどい、少し恐怖
した。「だ、だけど 僕は銀髪の小仙童だよ?
見るからに 父君の子供でしょう?」
「魔族にも妖族にも、神族にも銀髪の者はいる」
帝君は 名前まであげつらった・・・
ゴンゴンは 銀髪の者がこれほどたくさんいる事
など 知るはずもない。驚愕しながらも 食い下がる。
「だけど、私はこんなに可愛い姿をしているよ。
父君以外の銀髪の人たちは 私みたいな可愛い
子供を持てるでしょうか?持てるはずないでしょう」
彼の父君はまたしばらくの間彼を見た。
「うん、貴方の言うとおりだと私も思う・・
しかし、私は結婚した事がないのだ・・・」
ゴンゴンはようやく 一つ説明が抜けていた事を
思い出した。
「あぁ、父君に一つお話し し忘れていました。
僕は 今の父君の子供ではありません。僕は
未来の貴方の子供です。今朝、母君と一緒に
閉閑する父君を送って行ってのち、僕は連宋叔父に
別れを告げようと元極宮に立ち寄ったのです。
その時多分 誤って 祖てい神の閉閑法陣に触れた
ようなのです。それで 気付いたらここに来て
いました」
「祖てい?祖ていは 生きているのか?」
いきなり喋ったのは 隣で静かにお茶を飲んでいた
折顔上神だった。
「ゴンゴンちゃん、貴方は何年先の未来から
やって来たのか わかるかな?」
白ゴンゴンは 頭脳明晰な子供だったので、
折顔上神の発した問いに順序を追って答える。
「折顔上神にお答えします。祖ていは確かに
生きています。少し前に戻って来たばかりです」
しかし、次の質問を ど忘れして しばし折顔上神を
見つめていた。
折顔に促されて ようやく「あぁ、何年先の未来から
かは 僕もわかりません・・・」
「でも 僕が生まれた時には 父君は40万歳でした」
折顔は 深く息を吸い込むと 言った。
「という事は・・・貴方は26万年後から来た、
という事・・・?」(このゴシップに興味深々な折顔)
「帝君が40万歳という高齢で貴方が生まれたなら、
貴方は 末息子かな?兄や姉は 何人いるのかな?」
ゴンゴンは頭を横に振った。「兄や姉はいません。
僕は父君の唯一の息子で、太晨宮の唯一の若主人
です」
(ここで ゴンゴン、従者にお茶の催促)
茶杯を両手に持ち、上品にお茶を飲むゴンゴンを
帝君は よく観察した。自称ゴンゴンは 確かに
自分によく似ている。祖ていも生きている可能性は
ある。祖ていなら、この子を過去に送る事が出来る。
それより この子供は 自分が施したバリアを通って
ここに来た・・・どのように考えても この可愛らしい
子供は 自分の子供としか言いようがないのだ・・・
浮世の情愛事に一切関心を持たない帝君は この子供が
自分の子供だと思っても、妻がどういう人か?にまで
興味はわかなかった。それより気になるのが・・・
「40万歳?なぜ私と貴方の母上は そのような高齢に
なって ようやく 貴方を産む事にしたのだろう?」
「母上は まだすごく若いです。父君だけが40万歳です」
「九九は、自分はまだとても若い。父君の可愛い若妻
だと言っていたよ」
「可愛い若妻」という言葉に 帝君の顔色は白く
なった・・・