折顔上神が吹き出して 声高に笑った。
「可愛い若妻!貴方のような小さな子供が
その言葉の意味を知っているのか?」
「うん、もちろん知っている。 九九は 成人してすぐに
父君に嫁いだし、若くてあんなにも美しいから、
自分のことを 可愛い若妻 って言ってるんだよ」
帝君の頭に いささか疑問が生まれた。
「そうすると、貴方の母君と私は いったい
どのくらいの 年齢差があるのかな?」
ゴンゴンは頭の中で計算して 言った。
「37万歳」
帝君はしばしの沈黙の後 深刻な表情を浮かべて言う
「・・・万・・というのは余計な数字ではないのか?」
ゴンゴンは 自分が 信用に値する人間であることを
示すかのように 帝君と同じく 深刻な表情を浮かべて
「そんなことない。母君と結婚した時、父君は
40万歳でした。母君はその時3万歳だったから
40万引く3万で 37万だよ」
更に「37ではありません」・・とダメ押しした。
帝君は 再び沈黙した。いささか恍惚としたような
表情を浮かべているようにも見える。
「そんなに年が離れているのになぜ私たちは結婚した
のか?誰かに無理矢理 強要されたのか?」
折顔上神は 生まれて初めてこのような東華を見た。
(これは面白い!)内心ワクワクしながら
帝君の問いにしばし茫然として答えられないゴンゴンに
助け舟を出す。
「26万年後の賢兄が どれほど徳望が高くなっているかは
知らないが、今でさえ賢兄に無理矢理何かを強要出来る
者など この世界にはいないでしょう。どう考えても
貴方自身が 自分で決めたはずですよ」
そして ゴンゴンに向かって言った。
「貴方の母上は きっと 人より優れた非凡なところを
お持ちのはず。だから帝君は それほどの年齢差が
あっても彼女を娶ったに違いない。
そうだ・・・貴方の母上は どこのお嬢様でしょう?」
それなら知っている。ようやく元気を取り戻して
ゴンゴンは折顔上神に視線を向けた。
「貴方は僕の母上を知りません・・・でも、僕の母上の
祖父なら 知っています。貴方の親友の白止上神です」
折顔は お茶を吹き出してしまった!
折顔のお茶をもろに浴びたゴンゴンは 呆然とした・・
帝君は ようやく気を取り戻して折顔を一目見た。
それからゴンゴンを見ると、従者に目配せして
ゴンゴンの着替えを促した。
ゴンゴンがいなくなった佛鈴花の木の下で、帝君
と折顔は 顔を見合わせていた。
しばしの沈黙の後、折顔が口を開いた。不思議さと
面白さを浮かべて言う「貴方が まさか 白止の孫を
娶るとは!」
その言葉に帝君が答える前に 二人の小仙童が
走ってやって来た。
楽しそうに、一匹の真っ赤な子狐を差し出す。
帝君は 目の前までやって来た二人を見て
少し頭が痛くなった・・・