VOL2 わ・た・し流

おとぼけな私ですが 好きな本のことや 日常のなにげない事等 また 日々感じたことも書いていきます。

桃花徒然 その78

2022-12-22 13:36:04 | 永遠の桃花

枕上書 番外編より

 

碧海蒼霊での朝食は  母上との再会もあって

いつもより一膳多く頂いた。けれど、母上は

あまり食欲が無いようだ・・・

ゴンゴンは心配し、母上に尋ねる。

「九九、どうして嬉しそうじゃないの?食事の

味が  薄すぎて口に合わないから とか?」

「九九は濃い味が好きだからね」

鳳九「そんなことないよ。・・・ただ・・・今朝

貴方の父君にキスをしようとしたら・・・

狐の姿に変えられてしまったのよ。それはひどい

って 貴方も思わない?」

「うわぁお!!」口にほお張った肉まんを飲み込み

ゴンゴンは言った。「成玉から聞い・・いえ、

祖てい神が言うところによれば、それは 物事の

情緒をわかっていない、と言う事ですよ」

ゴンゴンは  あえて帝君を一瞥してから  続ける。

「祖てい神は、情緒をわからない男は  孤独な人生を

歩むしかない。三生三世  嫁をもらえないとも言って

たよ」

それを聞いた帝君は  視線を上げて言う「私が嫁を

もらえないなら  貴方はどこから出てきた?」

 

答えられずにいるゴンゴンの様子を見て  鳳九は

小さく呟いた。

「私を嫁に貰っても、貴方はすぐに失う事になる

のだから・・・」

その言葉を聞いた帝君は、彼女に視線をやると、

淡々と言った。

「貴女がここに来て  まだ一日も経たない。まだ

慣れてもいないのだから 例え失ったとしても

なんら差し障りはないような気がするのだが」

 

「・・・・」

 

母子は言葉を失って  顔を見合わせた・・・

どのように返したら面子を保てるのか?分からず

ただ  無言で食事をするしかなかった・・・

 

朝食の後、鳳九は 仙山に ゴンゴンを連れて行き

凧揚げをして遊ばせた。

ゴンゴンはその間考えを巡らせる。

自分は仙童でありながら  人間界で生まれた。

二百年後  九九に連れられて九重天に戻って

ようやく父君に会うことができた。

その時の父君は  これ以上ないほど

母上に優しかった。

なのに、今朝  父君は 九九がいなくても

たいしたこと無い  と言った・・・ゴンゴンは

その事で気が沈み、つい言葉に出てしまった。

「僕が生まれる前の父君は  こんなにも

容赦の無い人だったのね」

鳳九は葦の葉っぱをくわえ  寝ころぶ「そうだよ。

彼は 本当に容赦なかったわ。だけど、貴方の

母上は・・彼を手に入れることができた。

私って凄いわ!貴方もそう思うでしょう?」

ゴンゴンは尊敬の眼差しで鳳九を見たが  少し

心配そうに言う「だけど  今の父君は九九に

少し冷たいよ。仲直り出来なかったらどうする

つもりなの?」

「どうもしない。私たちの衣食住の面倒をみて

くれたら  それで充分」鳳九は笑みを浮かべて

「私はただ、貴方の父君の若いころを見て

みたかっただけなの。今の彼が私と仲良くできるか

は  気にしない。だって 私は  すでに一番良いタイミング

で、 最高の帝君を  手に入れたのだから」

 

分かったような、分からないような顔のゴンゴン

の頭を撫でて  鳳九は笑った。

 

しかし、そう言っていた鳳九も  実はわかっていない。

最高の帝君や  一番良いタイミングなどというものは

ないという事を・・・

なぜなら  帝君は  いつでも  最高の帝君だから・・・

そして、彼女も 、もうすぐそれがわかるはず・・・