バンドサウンドについては本当に奥が深いし、なかなか正解がないよね。
やり続ける限り、ずっと悩んだり発見したりの繰り返しなんだろうなあ。
主に弦楽器になるけど、昨今は楽器自体と言うより、足元のエフェクター類が
すごく充実していて、なおかつ、アンプ類もいくらでも大音量にすることが
出来て、まあ、パワーや音圧と言った部分ではそれこそ60~70年代あたりと
比べると倍以上にすごいことになっているんじゃないかなあ?(笑)。
レコードもそうだもんね。昔のレコード・・・例えばエアロスミスだの
KISSだのの初期のアルバムなんかは「ここにドラムがいます、ここにジョー
のギターがあって、スティーブンのボーカル、ここにベースがいて、タンバリンが
ここで・・・」みたいにハッキリと全部の楽器が分離良く聞こえるというか、
ギターをたくさん重ねてもそれほどグシャっとならずに、やっていることが
きちんと聞こえたと思うんだよね。
でも正直、今のロックバンドの音のほうが数倍すごいよ、やっぱり。
もうレコードの出てくる音がすごい迫力で音圧があってかっこいいよね。
ただ全員目の前にいるというか、奥行き感があまりないというか、
とにかく隙間が一切ないからギターなどは飽和状態で分離は良くないし、
ベースも低域はよく出ているけどフレーズも聞き分けづらいし、何より
コンプでものすごくつぶしているんで「ここは8で弾いているんだろうけど、
ボーーってつながって聞こえちゃうなあ」みたいな演奏者としては少し
残念な感じになりかねない気がする。
まあ、もうね、ドラムの音が一番違うかな。昔はいくらタムをたくさん叩いても
ほかの音をマスキングしなかったけど、今はタムの音自体が迫力があるから
派手なタム回しをしちゃうとほかの楽器は消されちゃう感じがあるなあ。
バスドラもすごいし。
そう、やっぱり音と音の間に隙間がなんだろうね。
イーグルスとかKISSのピータークリスなんていくらタムを叩いても全然
ほかの楽器に影響を及ぼさなかったんだけど(笑)。
確かに音自体は今聞くとショボいわな。
ショボいからいろいろアイディアを練って色んなアレンジをしていたんだろうけど。
今の音じゃ、「この音を目立たせるためには他はあまりたくさんのノートを弾くな」って
感じのアレンジじゃないと成立しなくなってきている感じがするよ。
ギターの歪みも凄いし、ぶっ太いベースの音、超低域まで出ているバスドラ・・・など、
存在感がすごいんであまり細かいことをやりなさんな、って音色になっちゃってる気がする(笑)。
もちろんいいとこ取りをしている絶妙なレコードがあるのも事実だけど。
ま、それはいいんだけど、結局、生演奏する際にもね、似たような現象があるかなって
思うんだけど、要は全体にパワーがありすぎると相殺してしまうというか、音が強すぎて
ほかの楽器まで侵食していくとバンドサウンドが濁っちゃうだろうなあってこと。
実際、そういうバンドは多くて、迫力があるのはいいんだけど、イマイチ何をやっているのか
わかりづらい音像になっちゃうんだよね。
かと言ってロック系であまりに細い音も悲しいものもあるし・・・。
ただね、最近自分も割と音を足していく作業はやりやすいんだけど、引いていく作業って
難しいんだけど、結局はなるべくほかの楽器やVoを侵食しない音作りが出来たら、
「ほかの音を返してください」って言わなくても(ま、俺は言ったことないけど)共存が
出来てよい環境で演奏ができるだろうなあ、と思っていてね。思ってはいたんだけど
なかなかうまくいかなかったんだけど、少しできるようになってきた。
もちろん自分の好きな音でやるのが一番で、そことの兼ね合いになるわけでそこは
譲れない部分なんだけど、ちょっといい感じにできるようになってきた。
何年演奏しているんだって話だけど(笑)。
まあ、ベースと言う楽器は特に他の楽器の音色に左右されるかもしれない。
ギターほど上の帯域にいないので音程が聞こえにくいし、ドラムのシンバルやバスドラに
消される部分もあるし。
それで昨今は音を強くしていく作業はプリアンプやEQなどでいくらでもできるんだよね。
もうアンプのボリュームも1でいいくらいに(笑)。
電気さえあればいくらでもね。実際そうやってすごく太い音になって、それで周りの
音を全部消しちゃうのでモニターから返してくださいと言う演者さんも多いんだけど、
結局あんまり誰も得をしていないというか。音程感が不明瞭になるほどの音の太さだと、
ボリュームを上げないと自分が何をやっているのかわからないからボリュームを上げざるを
得ないってことになって、ちと周りは迷惑、みたいな。
以前から言っているけど、自分はなるべく小さな音で、なおかつ自分の納得する良い音で、
演奏したい。大きな音にしなければ聞き分けられないって音作りにはしたくなくて。
大きな音にすれば誰だって聞き取れるわけだし。
(腕前の問題ももちろんあるんだけど)
最近少しいい感じになってきたのは(もちろんケースバイケースだけど)、
定番ではあるけど、ベースにおいて、ギターとぶつかるであろう帯域を少しカットして
お互いの音を殺さないようにする音作り。具体的には500Hzとか800Hzなどを下げて
音をすっきりさせてそうすると相対的に80hlz以下が出てきたように聞こえるから、そこから
下も下げてやる、と。
耳に痛い2.5khzなどもアタックが目立って耳障りならカットすると・・・。おそらく
8khz以上のかなり高いほうはシンバルなどに消されてあまりカットしなくても大丈夫な
気がする。
こういう特性をもったプリアンプやEQで「足し算」ではなく「引き算」で考えてみると
良い結果になることもあると感じている。
最近はギター、ドラムともよく聞こえ、Voも歌いやすいベースの音色に近づきつつある
ような気がする。気がするだけかしら?(笑)。
結局、60~70年代あたりはそこまですごい機材があふれていなかったので、足し算で
どんどん積み上げていってもよかったのかもしれないけど、今は逆に強くなりすぎちゃう
傾向にあるので、一回、引き算も考えてみるといいかもしれない。
ギターもやはり立ち位置に困るくらいのハウリングが出るほど、歪みエフェクターで、
ゲインを上げている人も多いけど、それもケースバイケースで結局「ベースとドラムを
返してください」って言っている状況じゃ(演奏できなくて困るほど)ちょっと疑問かな。