さて前回の続きですが、店側のサウンド的には短い時間、あるいは
転換時の5分ほどでも最低限のチェックは可能と言うことである、個人的には。
まあ、ただ、当然もっと突っ込んだ要求などがある場合、例えば
”ここでボーカルにディレイをかけてください”とか”いったん暗転してから
曲に入ります”とか、やりたければそこは当然時間が必要になる。
まあ、でもあまりに細かい要求はリハの時間もかかるし、あまりやらない
方が得策かとも思うね。オリジナル曲だとどうしても”Cメロでリバーブを”と
言われてもCメロってどこだ?ってなりがちだしね(笑)。
まあ、大体わかるけど。
ちょっと余談になるが、現在はアナログの卓を使っている。
デジタルの卓にすれば大きさも半分になってスペース的にも有利になると
思われるが、できればアナログの方がいいと思っている。
デジタル卓のメリットはメモリー機能があることで、各バンドの設定を1ミリも
狂わず覚えておける。それはいいよねー。
ではデメリットはと言うと、もし画面上に8トラック分が表示されていたとして、
バンド側から表示されていないトラックへの要求があった場合、すぐに
そこに手が触れられないこと。いったんその画面を呼び出して、その後、任意の
ツマミを動かすことになる。そのひと手間が、ステージ進行やバンドの要求に
答えることがとっさに出来ないのが怖いので、アナログにこだわっている。
まさかのフリーズしたりしたら目も当てられない(苦笑)。さすがにないか。
また、贅沢を言えばチャンネル数は多ければ多いほどいい。
うちは通常のバンドなどに使う19ほどのチャンネルのほかに8系統の
ラインを持っているので、例えば8人のアコギを弾く人がいても、同じ
チャンネルを使いまわす必要がない。これのどこがメリットかと言うと、
その人の”諸々の設定をそのままいじらずに本番でも使う”ことができる。
よって、本番のステージ上で”リハと音の聞こえ方が違った”などと言う不具合がない。
リハから設定を触っていないんだから。(ただ、お客さんが入って客席の反響が違う
可能性はあるけど、T☆ROCKSはそんなに大きく影響しない。変わって聞こえたとしたら
自分の耳がリハのときと変わってきているからと言うのも十分あり得る)
これが同じチャンネルを使いまわす場合は、設定をメモっておいて、
その人によってツマミを動かす必要がある。そのため、間違いが起こる可能性も
大きいということだ。
あと1で書き忘れたけど、店のバスドラなんだからそんなに大きく変わらない
だろうと書いたけど、まあ、音質は変わるんだけど、MAXの音量はわかって
いるわけだよね。だからそんなに目くじらを立てて音を取っていく必要もないはず。
もちろん細かく取れればそれに越したことはないが、一番有意義なやり方を
模索している場合ね。
ドラムキットをね、全部持ってきて自分が把握していないキットなら綿密に音を取って
いかなければならない。タムがどのくらい共鳴するのかとか、フロアがどのくらいローが
あるのかとかバスドラのミュートは?とか、EQをどうするか・・・とか、そうなったらまた話は
別で、ぶっつけは少し怖い。ま、そうは言ってもドラムはボリュームツマミがないから、
そんなに困ることもないとは思うけど、まあ、ミュートが少ないのが好みの場合は
もしかしたら困ることがあるかもしれない。
さて、店側からはこんな感じで、ご質問のおハガキによると”有意義なリハの使い方”
と言うのがあるので、それにお答えしましょう。
やはりいつもスタジオ練習している環境とは違うと思うので、それをまず理解して、
やりにくい場合はなぜかを考えましょう。とにかく頭で考えないとダメです。
”ああ、ギターアンプの向きが良くないからやりにくいのか”とか”キーボードの返しが
大きいから自分の声が聞こえづらいのか”など。
逆に感覚で”やりやすい”と感じたら、それでOKですね。
また”ありがちなヘタなリハ進行とは?”も質問にありましたのでお答えします。
逆に言うと、リハでやるべきことは、”なるべく全部の楽器、声、小さい音から大きい
音までまんべんなくやる”と言うのが一番いいわけです。
なので、リハ終了間際に初めてキーボードの音を出すなど(誰かが全曲の中で1か所だけ
キーボードを弾く場合などに多い)は困るわけです。”イントロだけなんで5秒くらいで、すぐ
終わります”なんて言うけど、音を取り、各モニターにキーボードを丁度良い感じに返すと
言う作業はキーボード演奏が5秒だろうが、35分だろうがまったく関係なくかかる。
しかもキーボードは本体にボリュームがついているわけで、いくらでも調整が可能なので、
急に大きくしたり小さくしたりも自由自在に本体で出来てしまうので、PAを扱っている人は
神経質にならざるを得ない。
個人的になんだけど、時間の節約のために各楽器を一つ一つ音を取っていかない場合は、
スタジオ練習のように演奏してもらう。大体一つ一つ楽器の音を取っていくのもこっちは
楽だけど、果たして楽器隊が本番と同じニュアンスで音を出せるのか疑問でもある。
キックだけとか、スネアだけって言われても演奏中の叩き方と同じにはなかなかいかないよね。
だから手っ取り早く、”スタジオ練習のように演奏して、アンプの調整なんかも同時におこなって
ください”と言ってやってもらう。出来れば曲の半分くらいまではやって欲しいかな。
単純にこちらはいろんな曲、いろんな歌い方、いろんなソロ、いろんなコーラス、などが
聞きたいわけで、フルで曲を演奏してもいいけど、もしあまり曲数を演奏できない可能性が
ある場合は半分までやって次の曲にいってもいいかなと言うこと。
まあ、言うまでもないけど、ソロ演奏の確認とか、ピアノのフレーズの確認とか、個人で
確認すべきところはリハでやってもしょうがないよね。スタジオ練習ならばみんなにも
聞いてもらって判断してもらうのは有意義だけどね。
リハは”自分が問題なく演奏できるかを確認する場”だから、当然練習する場ではない
んだけど、まあ、それでも自信がないブレイク箇所とか、練習不足とかあるようなら、
音の確認がてらやってもいいと思うよ。一石二鳥で考えればいいやね。
リハの基本である”自分が問題なく演奏できるかを確認する場”と言う概念から
考えると、”自分が主に何を頼りに演奏しているのか”を把握しているといいかも
知れない。もちろん、全体にきちんと聞こえる環境が一番いいだろうが、もし
主にギターを頼りに演奏しているとか、歌っているとか、それより自分の音さえ
大きく聞こえていれば大丈夫とか、歌をよく聞きながら演奏しているとか、
人によっていろいろあるだろうから、それを優先に構築していくのがいいと思うね。
ボーカルの人で”バスドラをください”って言う人がたまにいるけど、それは、
”自分の声が良く聞こえていて、尚且つバスドラがもっと大きく聞こえた方が気持ちよく
歌えるかな”と言う場合に有意義なモニター環境であって、そもそもバスドラは真後ろに
あるので聞こえないことはあり得ないわけで、何かの音をモニターに入れていけば、
それだけもともと入っていた音はマスキングされていくことも考えなければならない。
バスドラを返したことによって、自分の声が聞きづらくなるなら本末転倒である。
大体において、T☆ROCKS程度の大きさのステージなら、楽器の音はアンプからのみが
いいと思う。ドラマーにのみ、アンプの向きから外れている場合が多いので、楽器の音を
軽く返すのがいいかもしれない。それでも漏れてくる音で大丈夫な場合も多いけど。
なのでモニターには声のみの方が良いかもしれないね。
あるいは、どうしても上手と下手が離れていて、アンプの向きがお客さんの方を向いている
ので、聞こえづらい場合は返してもらうのもいいと思う。
またリハをやらない場合の”PA表の書き方”
そもそも、この”PA表を必ずリハ前にください”と言っているのにも関わらず”あとで書きます”と
言って出さないアーティストも多いんだけど、まあ、なんというか自分で自分の首を絞めている
ことになっていることに気付いているのだろうか?
こちらは(初めてのバンドなら)、何人編成で、誰がどのアンプを使うのか、コーラスは
何人なのか、ライン系統は必要なのか、などなど、何もわからない状態で始めなくては
ならない。そこでPA表に”おおまか”でいいので書いておいてくれると、リハ及び、本番も
それを頼りにミスがなるべく少なく行うことが出来ると思う。
T☆ROCKSでは原本を私に、コピーしたものをスタッフに渡していて、それをもとに
仕事を進めるようにしている。そして、そのPA表になんでも注意事項を書き込むことに
している。やはり間違いがないようにだね。頭では覚えていてもねえ、複数バンドがいる
場合は忘れちゃうからねえ。しっかり書き込んでおかないと。そういうためにもPA表は
出してほしいよねえ。
決して、あまりにも細かく書きこむ必要はないからね。
なのでリハをやる場合とやらない場合で、書き方に大きくは変わらないけど、例えば
通常の楽器編成(Vo,E.G,B,D)なんかだと想像がつくけど、そこにアコースティック
ギターが加わるとこちらは神経質になる。バラード曲でバックの演奏があまり大きくない
状態で弾くのか、イントロのみで弾くのか、あまり弾かないけど味付け程度で弾くのか、
バックの演奏もガッツリ大きい状態で、アコギもガシガシ弾いて、その音もしっかり
外音に聞かせたいのか・・・。こういうのはリハがないとコミュニケーションが取れない
のでわからない。
”PA表の書き方”として、細かい指示がある場合は書けばいいけど、そもそも
複数バンドがいる場合はなかなか完璧にはいかない場合もあるし、あまりミスに
つながりそうな要求はしない方が無難かもしれない。
曲に関しては、”バラード曲、リバーブ系を強め”とか”タイトな感じで”とか、”ベースソロ
あり”とか、”リードボーカルがドラムになる”とか、照明に関しては”赤系の照明を多く”とか、
”曲が終わってすぐ暗転、ドラムのカウントで明るく”とか、まあ、そんな感じがいいかと
思うね。
特になければもちろん”お任せ”で何も書かないでいい。
大体、自分のバンドの場合はいつも”リードボーカルの変更と、バラード曲、それと
照明に関しては、派手にやってください”としか書いていない(笑)。
ヘタに”ここで声にディストーションを”とか書いて間違ったらヤバイからね。
でもちょっと曲を知ってもらったときは”ここで目つぶしを”なんて要求していたけど。
それから”リハをやらない場合の本番での注意点”。
サウンドチェックは出来るだろうから、それほどヤバイとはならないだろうけど、
それでもやっぱり全員で合わせたら”あ、ちょっとマズイ”って場合もあるかも
知れない。ま、仕方ないからアンプなんかは調整しつつ、モニター関係に
ついてはMCなどのときに気軽に言えばいいと思うし、演奏中なら、大きく
(小さく)したい楽器を指さして、上にやったり下にやったりすればたぶん
伝わる。結構伝わらないのは、”演奏中にマイクを使って訴えること”。
これね、自分には良く聞こえているんだけどね、自分が一番有利なモニター
環境になっているわけだからね。でもね、外音には全部の楽器がドカンと
出ているんで大きな音の時は単語まで聞き取れない場合も多いんですよ。
これ、気を付けてほしいですね。
さて今回はこのくらいで!!
まだ続く!