現代と、自分がライブハウスに出ていた頃とは様々な事情が違ってきているのは
当然なんだけど、最近は少し疑問に思うことも少なくない。
ま、大げさな言い方になっちゃうけど、決して非難しているわけではないので、
ご了承を。
一言で言うと全体的に「危機管理」が少なくなってきているのでは?と思う。
世の中全体に言えるかなとも思うんだけどね。
色んな種類のお店があるわけだけど、どこもサービスがいいでしょう?
お客様の要求に対して、なんでも答えちゃう。
「値段を下げろ」「(洋食レストランで)しょうゆ持ってきて」「あれ貸してくれ、
これ貸してくれ」「時間外でも入れてくれ」「ダダで教えてくれ」等々・・・。
それを普通は「今回は特別にわがままを聞いてもらった」と考えるのが普通
なんだけど、だんだんマヒしてきて、当たり前だと思ってきちゃう。
それがなぜ危機管理に結びつくかと言うと、ま、危機管理って言葉はちょっと
言いすぎなんだろうけど、こと、音楽の世界のステージなどは小さなトラブルでも
危機ではある。命にはかかわらないけど。
簡単に言っちゃうと、お店にあるもので済まそうとするのももしかしたら危険が
ひそんでいるかも知れない!ほら、そのシールド、毒がありますよ・・・。
「シールド貸してください」。
これね、あるよ、普通に。お貸しします。ベルデンでもモンスターでも。銘柄指定は
出来ないけど。あ、今度できるようにしようかな(笑)。
話がそれた。俺たちの時代だとちょっと考えられないんだけど、現代ではね、
身軽に来たいのか、音にそこまで拘っていないのか、結構ある。
アコ系の人やキーボードの場合はありだと思うんだけど(本当は拘ったほうがいいだろう
けど)、普通のバンド形態の弦楽器隊はさすがにどうかと思うんだけど、つまり、そこが
危機管理に繋がるわけ。まあ、シールドはまずどこのライブハウスでも貸してくれる
だろうし、絶対にどこかに転がっているし、最悪、対バンの人は絶対に持っているだろう。
ただね、借りたシールドが調子悪かったら?せっかくのステージがトラブルの思い出に
なっちゃうよ。対バンの人に借りるにしてもやはりあまりいい気はしないと思うよね、相手は。
また、SEを頼まれることも多いんだけど、昔は(ごめんよ、昔話が多くて)カセットテープ
のA面とB面に同じものを吹き込んで、持っていっていた。しかも10分テープとか、そういった
短いカセットテープね。
なぜかと言うと、PAの人が間違ってB面をかけて大丈夫なように。巻き戻しもすぐに
出来るように短いテープね。
つまり、言い方を変えれば、信用していないってことになるんだけど、出来るだけ、どんなに
ミスをしたとしてもすぐにリカバリーが利くように、致命傷にならないように、と考えに
考え抜いて(笑)、お願いするわけ。録音媒体もカセットテープだったんだけど、
本来なら90分テープがベストでこれだと片面45分だから、全部を一気に録れて、
都合がいいんだけど、たまに結構早めにテープを回されちゃうと、最後が切れちゃう
危険性もある。ひっくり返してくれたとしても、隙間は空くわけだからね。
なので、仕方なく120分のテープを持参したりする。
このようになるべく危険を回避するように考えて行動していて、もちろん電池は
直前に変えるし、予備を持って行くし、予備弦も持っていくし、ガムテープ、ビニール
テープ、ボールペン、ピックも演奏中に落とすことを考えて衣装のポケットに入れておくし、
予備のシールド、絆創膏、つめきり・・・なども常に入れておいたね。
あとは弦高調節用の六角レンチやピックアップの高さを変えるためのドライバーなども
入れておいたなあ。まあ、小さい簡易的なやつね。
ワイヤレスがダメになったときのシールドもね。
まあ、それほど、色んなものが必要になることはないんだけど、それでもやはり、
「忘れた!」ってことはありがちなんで、転ばぬ先のなんとかなんだけど、このような
ことを全て他人の手にゆだねると言う事が現代の人はとても多い。
六角レンチはミリとインチがあるから、店にちょうどいいのが無いかもしれないし、
そりゃガムテープくらいは快く貸してくれるだろうけど、それでも店の備品を
拝借していることには変わりはないし、忙しく走り回っているスタッフに、持ってきて
くれって頼んでいるわけだからね。
リハーサル時の時間がキツキツのときに、ネジが緩んだんでドライバー貸してくれ
とか、六角レンチありますか?あ、これじゃ合わないので違う大きさのやつを・・・
っていとも簡単に言うけどね。結構大変なんですよ。ヘタすると返さない人もいるし。
いや、わざとじゃなくて、忘れちゃうんだよね、お互いに。
譜面台もなかなか難しい問題で、今はいいやつがあるから、持ち歩かなくてもいいと
思うけど、店に置いてあるやつが軽かったりすると、分厚いバインダーのようなものに
譜面が入っていたりすると、倒れやすいかも知れない。
譜面台を照らすライトもいつも置いてある店ならいいけど、初めて行くお店の場合は
自前のものを持っていくのがいいと思うし、もし自分だったら持っていくね。
あるいは、そのお店のライトの種類を調べてそれに合う乾電池を持っていく。
これはもし借りたやつが電池残量が無かった場合、自分が困るから。
後ろの出番の人は知らない。気分が良ければ、あるいはいい人だったら、そのまま
電池を入れっぱなしにしてあげるかもしれない(笑)。
以前はライブハウスにギタースタンドなるものがなかったので、これまた持って行ったよ。
その頃、2本ベースを使うことが多かったので、どうしてもスタンドは必要になるからね。
それを用意してくださいとは言えなかったなあ。
わかりましたって言ってくれたとしても、忘れちゃうかも知れないじゃん?
そうそう、SEの話に戻るけど、出来ればCD-Rに一曲だけを入れて渡すのが
ベストだろうね。PAさんも間違えようが無い。まあ、焼いたCD-Rは再生が
100%保障されていないけど、今まで動かなかったことはないなあ。
怖ければ市販されているCDで、「何曲目」って指定してもいいと思うけどね。
今はもう慣れたし、使い方もわかるから大丈夫なんだけど、一年以上前だったか、
SEをスマホで持ってこられたときはビビったなあ。
だって当時は俺、ガラケーで使い方わかんねーもん(笑)。
「スライドすれば開きます」って言われてもなあ。しかもピンジャックでしょ。
丁度、その端子で卓に入れている信号があったんで、それでなんとかなったけど、
普通はキャノン、フォンケーブルだからね。スマホにキャノン端子出力はついてない
わなあ(笑)。しかも時間が経ったら、ロックしやがった(笑)。あわてて楽屋に
パスワードを聞きに行ったよ。
それにああいうのはちょっと触るとすぐに曲が変わっちゃうでしょ?
CDは触っても曲は変わらないけど、ああいったタッチパネルの媒体は
画面を触ると変わる恐れがある。停止ボタンに触れちゃったり、次の曲を
再生してしまったり。
今まで間違ったことはないけど、その媒体でもらったときは、曲名を控えて
おくことにして、また、極力触れないように気をつける(笑)。
こういったことも考えて「危険だな」と思えば、CDが安全だという結論に
なるでしょ。
ま、もちろん知っているPAさんだから大丈夫ってのもあるけどね。
あくまで初めて行くお店の場合。
最近はMDも少なくなったんで、それも店によっては難しいかも知れない。
それと、同期の音源をCD-RWで持ってこられたときがあって、これは失敗した。
運悪くリハがないイベントだったかな。見事に走らなかった・・・何度か途中で
止まっちゃうんだよね。CD-RWとはパっと見た目でわからなかったんだよね。
ただ、DVDプレーヤーで再生したら動いたんで、なんとかなったからよかったけど。
SONYのCDプレーヤーでは走らなかったなあ。
また、カラオケ音源も結局はPA側で再生ボタンを押して他人が操作しているので
100%信用は出来ない。曲間が異様に短いとか(通常は2秒、焼くソフトによっては
自由に設定できる。0秒に設定しちゃうと曲間が短くなる)、一番怖いのが知らない曲で、
完全なブレイクがある場合。これ、怖いんだ。曲が終わったと勘違いしちゃう。
あと、「何曲目を再生して、そのあと何曲目に行って・・・」とか曲順がバラバラも
怖い。滅多にいないけどね。音量差があるのも困るな。「この曲はちょっと音量が
小さいんで調整お願いします」はまだいいんだけど、「この曲はモニター大き目で、
この曲は小さめで」とか言われても自分で音量をそろえて持ってきたほうが
安全じゃない?って話。俺が間違ったらどうする?
このように強引だけど一言で言ってしまえば「危機管理」が薄いなあと思う人が
現代は多くなっている気がする。前からなのかな。
いや、昔はあんまりわがまま言ってると「出来ない」って平気で断られるから
おのずと自分でなんとかするぞって考えたのかもしれない。
結局は「想像力」だよね。
「自分が思うようなことを相手は思った通りにやってくれるのか?」って考えられるか
どうか。摩擦もここに生まれるよね。相手も決してわざとではないんだけど、あまりに
複雑な要求だとすると、出来ない可能性があるって考えられるかどうか。
えてして、他人の曲って「Bメロで照明はこんな感じで・・・」って言われても、
初めて聞く人にはBメロってどこ?ってパターン多いからね。
「ギターリフになるんですよ」って説明されても全部リフじゃね?みたいな(笑)。
決して、いじわるで言っているわけではなくて、このように、正確に伝わらない、
あるいは危険をはらんでいる場合があるから、要求する相手には必ず伝わる手段で、
また、自分で用意できるものは自前の方が安全ではないかってことを今一度、
考えてみて欲しいってお話。