前回の補足だけど、ではリハのときに考えもなしに要求を言うのはタブーなのか?
と思う方もいるかも知れないが、それは違う。
逆にどんどん言ったり、聞いたりしてほしい。その方がこちらも伝えやすいし、
どこまで理解しているのか、あるいはどう解釈しているのかわかるので、
こっちとしても話がしやすいからだ。
例えば色んな音を返し過ぎてわからなくなってしまったときは普通に素直に
「やっぱり聞こえづらくなったので下げてください」と言ってもらえれば大丈夫。
それでも例えば初めに「ギターの音が欲しい」と言っていた場合などは、「じゃ、ギターの
音は控えめにして、ドラムは返すのをやめようか」とか、ギターアンプの向きを変えて
対処してみようか、とかコミニュケーションが取りやすい。
あと、「このモニターからは何が返っていますか?」って言うのも、いい環境にするためには
なかなか有効だよ。ハコによってはあらかじめたくさんの音が返っている場合もあるからね。
前も話したけど俺はセンターにいて歌とベース担当の場合は(極端に広くなければ)、
「センターモニターは自分の声のみでOK」とあらかじめ言う。ギターもドラムもいらん。
ってか生音で聞こえる。キーボードも軽く聞こえてればOK。ベースも聞きたいが、自分の
ボーカルの方が優先する。ベースはなんとかアンプから直接聞く。(ま、ケースバイケースで
返してもらうときもあるけど)結構その辺を勘違いしてる人も多いんじゃないかなあ。
客席でバンドを聞いているわけじゃないんで、腹に響く気持ちいいバスドラとか
綺麗なリバーブがかかったコーラスとか、キーボードの全パートとか、んなもん
期待しちゃダメだ。演奏が出来る必要最低限は必ず確保して、それ以上イケそうだったら、
要求する・・くらいのスタンスが望ましい。そして前述したが、もしモニター環境に失敗したら、
素直に「やっぱりわけわかんなくなったのでスッキリでお願いします」でOK!
大体その<演奏が出来る最小限の環境>でさえ、難しいハコもあるからねえ(苦笑)。
音が反響しすぎる・・低域がボワーって言いすぎる・・・って場合が多いかな。
コーラスを取る人は「ボーカルの声は小さめでお願いします」も有効だよ。それでもボーカルの声は
センターモニターから聞こえてるからまるっきり聞こえないことはない。俺はリードボーカルで
無い場合は自分専用のモニターからはリードボーカルを完全に切る。あるいはボーカリストに
支障が出そうなら小さめにしてもらう。これで自分のコーラスが歌いやすくなる。
何度も言うが、客席で聞いてるわけではないので、リスナーの音場を要求しちゃダメだ。
こっちは演奏してる側だから。ドラマーも「キック返してください」って人がたまにいるけど、
あれ、自分が気持ちいいからってだけでしょう?あげくベースも・・・歌も・・・ギターも・・って
際限なくなるよね(苦笑)。と言うか気持ちいい音場に持っていくのはいいんだけど、モニター
スピーカーはPAスピーカーほど大きくない場合も多いので場所によっては無理があるよって
こと。T☆ROCKSもある程度は大丈夫だけど、ドラム全般は生音と同じくらいかなあ。
大体自分のバスドラの音が横から聞こえてきて気持ち悪くないのかな?
あと、リバーブも返してくれって人もたまにいるけど、バラードやアコースティックの場合は
いいと思うね。やっぱり歌いやすいでしょう。ただ普通のロック、ポップス系のバンド演奏の
ときはリバーブ成分なんて聞こえやしないってのが正直なところだろうな。
PA側からいうとリバーブは不必要なハウリングの元になるので出来ればステージ側へは
返したくないのが本音。もちろん客席側へはしっかりかかっている。
センターで歌う人は多分両サイドからギターやベースが聞こえているだろうし、ドラムは
特に気にしなくてもよく聞こえるだろう。この場合、自分の声をしっかり聴きたい場合は
弦楽器はセンターモニターからは返さない方が得策だろうね。アンプからの直接の音で十分。
T☆ROCKSくらいの大きさの場合ね。まず普通のライブハウスだとこれがベストだろう。
ただ、たまに奥行きがあまりにもないハコもある。自分の後ろに人が通れるスペースもないほど
すぐ後ろににバスドラがあって、ギターアンプやベースアンプが真横に近い位置にある場合。
この場合は聞こえづらいと思ったら返してもらってもいいだろう。
あるいは自分の声に自信があって、楽器の音が大きいほうが気持ちよく歌えるって人は
モニターから返したり、アンプ自体の音をある程度上げていっても構わない。
その辺は経験でわかってくると思うので、実験的に何回か試してみるしかない。
で、もし例えばギターアンプの音をもう少し上げて欲しいなって場合は、一応PAさんに
アンプの音を上げていいですかって聞くとベストである。<音場を作り上げたあと>で
アンプの音をいじられるとやはり多少は困るからである。
まあ、そんなわけで、歌や、演奏しやすいモニター環境は自分で工夫して作っていくのが
望ましいし、頭を使って考えてやるのがベター。モニターは万能ではないということも
頭に入れておこう。例えば3人ほど固まった立ち位置でコーラス隊がいるとして、個人の
声だけ大きく返すってことは難しい。どうしても立ち位置からして同じ系統のモニターを共有する
可能性が高いので、声が一番大きい人が勝つ(笑)。
ま、ワンマンならなんとかするけどね。通常ブッキングではそこまでモニターを変更できない
もので・・・。