朝日新聞の連載小説「また会う日まで」が2020年8月から始まっています。
第14章 東京から笠岡へ
が10月1日から10月31日まで30回の連載で終わった。
3月10日の未明、空襲警報で目が覚めた。
B-29が次々に飛来するのだがずいぶん低いところを飛んでいる。下から探照灯の光で
銀色の翼やふっくらした胴体がよく見える。敵は爆撃の戦法を変えたのだろうか。
こちらも高射砲を撃ってはいるのだが一向に当たらない。迎撃する戦闘機は見たかぎり
一機もなかった。
「あの焼夷弾というのは始末の悪いものですな」と防空警戒隊の男は言った。「小っこい
のがばらばらたくさん降ってきて、一本ずつが炎を吹いて四方八方にまき散らす。バケツの
水でもホースの水でもとてもぜんぶは消せません」「中身はゼリーにしたガソリンだよ。
それに点火した上で飛び散るように作ってある」「一本だけ不発の奴を見つけました。
長さ一尺半くらいの六角形の棒でした」
☆東京大空襲の詳細が記述していました。