蕃神義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

親族の基本構造ヴェイユの証明2部 の予告、PDF投稿

2021年11月30日 | 小説
表題は本年11月5日から17日に連続6回投稿した記事。明12月1日から第2部(一般化+限定交換)を投稿します。これに先立ち第一部で用いたパワーポイント図を取りまとめてホームサイトに投稿した。
Blogではパワーポイント(マイクロソフトOfficeのアプリケーション)は投稿できないのでJpeg(画像)を指しはさんでいたが、分裂感は否めない。サイトでは一気掲載で通し読みできる。(全体30+スライドあります)

接近は
http://tribesman.net/MurunginWmodel1.pdf

ないし
http://tribesman.net/ あるいは検索語「部族民通信」で。


この様なめんどくさいスライドが30+枚。作成する方よりも読むほうがシンドイと存じますが、よろしく接近してください(蕃神)



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

親族の基本構造第一部の補遺ヴェイユの証明 6

2021年11月17日 | 小説
(2021年11月17日)

前回(11月15日)にヴェイユが数式で解明した交差いとこ婚の仕組みを系統図に再現した。


本章の結論が下のスライドです。左図は交差いとこ婚の成立、数式とともに仕組みを展開図で示しています。図では兄が水平で嫁を貰えば、妹はたすき掛けで嫁に出る。この兄妹の婚姻形体の差異が交差いとこ婚の条件となります。それをヴェイユは右図(写真)で説明する。A(a1,a2)が条件I(並行婚姻)で嫁を取れば、B(b1,b2)はII(たすき掛け婚)で嫁を取る。a1の兄妹を視点にすると、兄は平行婚、妹はたすき掛け婚ーの仕組みを説明する。左の展開図を式で説明する。



さて若干のサンチマン(sentiment)を籠めたスライドです。運命の見えない赤い紐伝承は東アジアに広域に伝わる。妾(わらわ)は誰と結びつくかなど生まれた瞬間に決まっている。それが見えないだけ、年頃娘の思い込みでもあるのです。しかしなんと!ヴェイユがこの運命を紐解いた、f[f(Mi)]=g[g(mi)]の数式は古代の交差いとこ婚に起源が遡れるノダ。


ここで部族民(蕃神)の解釈。レヴィストロースは決して全周が一般化交換の部族社会を想定してはいなかった。4の階層がヴェイユモデルでは形成できない。

これが全周16回の一般化交換、ヴェイユモデル(既出)。

Murngin族の親族体系(の章)では4の階層(classe)に言及している。階層は「子の交換を限定にして」連結を強める支族と解釈します。するとヴェイユモデルから離れる限定+一般化交換の体系が浮かび出てくる。

上スライド(既掲載)は隣接のAranda族体系を展開図におとした。婿を一般化交換、子を限定交換の4支族モデルです。Aranda モデルを起点にしてMurngin 族体系を再考するシリーズを近々にBlog上梓します。

最後のスライドはオマケ。作成したが一葉では煩雑になった。なぜ「子が(息子娘とも)親と同じあるいは逆=条件i)とii)の婚姻形体に分かれると、交差いとこ婚が発生しないかを解説している。お時間に余裕(といっても2~3分読んだらすぐに完璧に分かる)お方に向けて張っておきます。


親族の基本構造第一部の補遺ヴェイユの証明 6(最終) の了
予告:ヴェイユの証明を本月後半から2として再開する。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

親族の基本構造第一部の補遺ヴェイユの証明 5

2021年11月15日 | 小説
(2021年11月15日)
前回(11月12日)にヴェイユ計算式に基づいて、2通りの周回交換の展開図を掲載した。



上スライドの2の図をあわせた展開図が下。

黒の①b1がa1に嫁を出すを起点にして子の帰属計算式を当てはめると、子はc2に贈られc2で成長した娘はd2に(ヴェイユ条件のiv)。成長した息子はd1から嫁をもらう。この流れで①~⑧が終結する。青の①はその逆の流れ(a1に嫁出ししたb1がa2から嫁を貰う)を起点にして青①~⑧を周回する。

8回の交換の二通りの意味合いを下スライドで説明する。

結論は4 16回交換にて全てサブセクションが「娘を贈り嫁を貰い」「子を贈り子を貰う」に参加する。一のサブセクションが欠落すると周回交換が途切れる。分割できない社会=Société irréductibleの形成につながる。

スライドで「ヴェイユ数式交差いとこ婚f[f(Mi)]=g(Mi)を検証する」

婚姻権の数式(原語はfonction函数)、女はg(Mi)= g(a+1,b+1,a+,c+d+1,d+1) a,b,c,dは母のM(a,b,c,d)、dは嫁入り経路(d=0水平,d=1たすき)
例: a1の兄妹;a1男がb1から嫁,その婚姻M(b1=0,1,0,0):その子はc2に移動。成長した娘の婚姻権利g(0+1,1+1,0+0+0+1, 0+1)= g(1,0,1,1)。c2(1,0,1)からたすき掛けで嫁に出る権利。
男側の婚姻権はf(a+1,b,a+c+1,d)の数式。スライド展開図をなぞると交差いとこがc2とd1に帰属しc2娘の婚姻権とd1男のそれが合致する。二人は結婚する。
下スライドでいとこ婚を再確認。C2の兄妹がどのように結婚するか、それら子がどのように帰属するかを展開し、交差いとこ婚の数式が展開図でも当てはまるを確認した。


下はヴェイユ数式を系統図で確認した。


親族の基本構造第一部の補遺ヴェイユの証明 5の了
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

親族の基本構造第一部の補遺ヴェイユの証明 4 

2021年11月12日 | 小説
(2021年11月12日)スライドは婚姻の形体をどのように定めるかの4候補。


(前回掲載)
1は子は必ず親の形式(水平かたすき掛け)を選ぶ、2は親と対立する形式。これらは交換相手が限定されるから(=限定交換)社会の中でréductible集団を生む。故に除外。3と4は娘と息子を入れ替えただけ。ヴェイユは4の娘は親の...を選択する。娘が嫁に出る形式なので娘は母親のそれを選び、息子は実家(養子先)に残り嫁をたすき掛け方向から選ぶ事になる。

ヴェイユが選んだ条件iv)


ヴェイユ式数値化の手順を上スライドが説明する。
1 サブセクション座標を決める(a,b,c)。各記号は0か1。a1は(0,0,0)...など。
2 婚姻M(nx)の数値化。dなるパラメータを追加する。0は水平婚、1はたすき掛け婚。図ではb1から水平で嫁がでる婚姻。出る側(嫁)が実家座標を持ち込みdn=d0を加えM(0,1,0,0)の数値を取る。
3 M(nx)で生まれた子は他部族に贈られる。(a+1,b+1,a+c+d+1)。ヴェイユの条件にこのパラメータの根拠が見つかる。娘(息子)婚姻相手は一人、親の婚姻形式で決定、社会を分割する閉鎖性を持たない-である。別スライドでヴェイユ自身の説明を取り上げる。
4 子の婚姻権。群論で「機能=fonction」とするらしいが、婚姻権と訳した。養子先で成長した娘息子がどのように婚姻するかを定める式。究極に;
f[f(mi)]=g[g(mi)]が成立し交差いとこ婚を証明する。


上スライドはサブセクション座標の定め方。 a0とa1の区別は子の境界線。bの区別は半族境界。


上スライドは子の送り先。M(mi)は娘が半族境界を超えて嫁入する。子は子の境界を越して贈られるからa=a+1,b=b+1はその理屈。cn(0か1)の決め方(a+c+d+1)はサブセク座標(a,b,c)でa+cが0となる組と1となる組に分かれる(0+1=1+0=1、0+0=1+1=0)。a+c=0のb1が水平(d=0)で嫁に出ると0+0+0となるが+1項が加わりa+c=1の組(c2)に転換される。子がc2に贈られる式である。このd+1を加えたヴェイユの事情は分割できない社会、完全な一般化交換を実現するため。このあたりはレヴィストロースが説く「4の階層」とは離れる。この点は後述する。


ヴェイユ条件4(婚姻形体の選び方)と子の贈り先を決めるヴェイユ式をM(b1=0,1,0,0)を起点に探った展開図。嫁と子の周回交換8の過程が一般化交換で実行されている。このスライドでは各サブセクションは「嫁と子の贈り手順」が片務的だった。嫁を贈れば子を貰う、子を貰うと嫁を贈る周回である。嫁と子を贈り貰う充足過程を形成するためにc2がb1に嫁をたすき掛けで贈るを起点とする周回を展開した下スライドである。


親族の基本構造第一部の補遺ヴェイユの証明 4 の了(2021年11月12日)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

親族の基本構造第一部の補遺ヴェイユの証明 3

2021年11月10日 | 小説
(2021年11月10日)


上スライドは前回(11月8日)に掲載。
婿の交換の形式を矢印で示した。これだけで一般化交換を形成するが、子の交換も重ねる必要がある。Murngin族はアボリジニの慣習通りに、生まれた子を他集団に贈る(養子に出す)。その贈り貰いも規則化される。婿交換は垂直線(半族の境界)を超えて実行される。ただし水平線(子交換の境)を超えない。A(1,2)はB(1,2)と交換する。その逆のメカニズムが子の交換で、垂直線を越さず水平線を越しての交換となる。2の交換を合わせて族民の社会が出来上がる。


レヴィストロースは部族の社会骨格を想定した(上スライド)。1の8サブセクションはこの通り。4の階層に多少の引っかかりが残る。これをA,B,C,Dとするならセクション(section)と名付ければよいはず。しかしclasseとしている。部族民(蕃神)はこれを「子の限定交換を通じて形成される系統」と理解する、その系統集団はここでは見えていない。ヴェイユはこの考えを取らない。3は交換財(婿)を周回させるに当たり、短絡が発生すると周回に参加できない「村外し」が残ってしまう。制度にそれが起こらない仕組みがあるはずで、それを、たすき掛けの交換は風変わり(Webb等)と切り捨てず、仕組みをあからさまにするのが民族学者。一般化交換の原則である。


ヴェイユが捉える親族構造の基本。Bの「性別と親の婚姻形体」とは。親が婚姻相手を選ぶ先は2しかない。A(1,2)はBの1か2を選ぶ。水平婚化たすき掛け婚かの選択で、その婚姻で生まれる子の婿入り嫁ぎ先が決まる。


上スライドは本論文のプロット骨格を説明している。上記「子の婿入り嫁ぎ先」とした意味は数式でf(mi)、これを婚姻権とした。その発展にf[f(mi)]が出てきて、交差いとこ婚が成立するとの証明に結びつく。


子が選択できる4の婚姻形体を示す。しかしすべてが「ヴェイユの条件société irréductible(分断できない社会)」に適合するわけではない。



i)は除外、数値としてii)が成立しない証明をしている。後述する。


親族の基本構造第一部の補遺ヴェイユの証明 3 の了
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

親族の基本構造第一部の補遺ヴェイユの証明 2

2021年11月08日 | 小説
(2021年11月8 日)AとB, CとDが限定交換で子をやり取りする流れも考えられる。ヴェイユはこうした限定交換は全体から離脱する(réductible)集団として、モデル形成から排除している。しかしここでレヴィストロースとヴェイユの基本姿勢が幾分異なる姿勢が見えている。レヴィストロースは人類学者として、モデルを実際に近づける努力を取り、ヴェイユは1のモデルを代数学から検証する。この差ではないだろうか。
レヴィストロースは限定交換を含む交換の手順での部族モデルを考えている。このこの差異は後述する。


上スライド;婿(嫁)も移動は隣接支族に、子の移動はその一つ先(2の先の支族)。4の支族なので展開図の上下と左右の支族は「子を贈り子を貰う」限定交換を実施している。アボリジニの交換は限定が一般的なので、こちらの方が(婿と子を周回させる一般化よりも)多い(と聞く)。ヴェイユは「限定交換」を社会の分割として(モデル形成で)排除するが、レヴィストロースは取り入れている。


murngin族。スライドの左写真を右に展開する。ABCD4の支族(階層)、それぞれがN1,N2とわかれ8のサブセクションで構成される。


垂直線で分断される半族(moitié)。婿の交換は子の線を跨いで、かつ水平線(オレンジ色、原写真に加筆)を超すことはない。このオレンジ線は子の交換の境界線でもある。子は必ず水平線を跨いで半族の内側で交換される。A1とA2が子交換することはなく、A1が半族線を超えてBnと交換することもない。
この仕組で婿と子を交換すると斜め集団が男系半族となる。(=嫁の交換の場合は斜めが女系半族)。


上スライドは参考。本年7月に作成、ブログ投稿した。Murngin族の社会構成は2の半族(男系、女系)と2の内婚集団に分かれると示す。婚姻と子の交換制度を通しての構造です。


同族の婚姻はA1とB1の組み合わせで水平に婿をやり取りする。A1がB1に婿を贈ったら、B1はA1に婿を贈る。限定交換。しかし調査者(Webbなど)はB2がA1に婿を出す「風変わり」な慣習が時たま見分されると報告する。レヴィストロースはこの風変わりを例外とせず、normal(水平交換)とoptionel(たすき掛け交換)で交代する(alterné)交換と定義した。特異性を力点に紹介されていたMurngin族も、婿の交換で一般化を制度としているアボリジニの習俗に還元する鍵と捉えた。


水平交換とたすき掛け交換の混在(交代)の展開図です。

親族の基本構造第一部の補遺ヴェイユの証明 2の了(11月8日)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

親族の基本構造第一部の補遺2 ヴェイユの証明 1

2021年11月05日 | 小説
Arandaモデル 4支族2階層
(2021年11月5日)すべて個人は支族、階層、サブセクションの座標を持ち、その仕組のなかで分類される、ここをWeilが注目した。
<les individus, hommes et femmes, sont répartis en classes, la classe de chacun étant déterminée, d’après certaines règles, par celles de ses parents ; et les règles du mariage indiquent, suivant les classes…> 男も女も個人は階層に分かれている。それぞれの階層は幾つかの規則によって定義され、特に両親の決まり方の規則が重要で、婚姻の規則にもこの階層が影響する(同)。
「両親の決まり方...」は奇妙な訳だがこれはMurngin族などオーストラリア先住民では生まれた子は実の両親に属さず、他の集団に預けられる「養子制度」を言い換えている。養子先の決め方には規則が設けられ、これが階層を形成する基準になる。規定に沿って、実親が所属する集団からは「養子先」が決定され、親は粛々と子を預ける。この過程が「両親の決まり方」となる。
その決まり方で子が生きる座標が決まる。子の座標は実親のそれを受け継がず、帰属する養子先の数値を持つことになる。
<la totalité des mariages possibles peut donc se répartir en un certain nombre de types distincts>婚姻可能の総体は、幾つかの分別可能な形式に集約される。親の婚姻の仕組み、その子が仕向けられる養子先の割当で子の婚姻が決まる。
婚姻を分別する条件(conditions)を2(A,B)に分ける。
A) Pour tout individu, homme ou femme, il y a un type de mariage et un seule qu’il (ou elle) a le droit de contracter.
B) Pour tout individu, le type de mariage qu’il (ou elle) est susceptible de contracter dépend uniquement de son sexe et du type de mariage dont il (ou elle) est issu. (267頁)
A : 男女を問わず婚姻は一つの決まり
B : 婚姻の決まりは個の性と彼(彼女)の父母がどのような婚姻形態を経たか、で決まる
婚姻をMとし、Mi(1,2,3…n)とする。
とある数学重鎮が断った「心が絡む」を一切排除して規則で婚姻を決める、すると最も合理的な制度の創造に向かう…ヴェイユの智の有様が理解できる訳です。Aranda族のモデルを用い一の部族に4階層を設定する。写真は258頁から。
Aが男をBに贈る(婿にやる)、BはCに、以下矢印の進みです。
女Bが男Aを婿にして子を生む。その子はCに移る。Cに養子になった男は成人してDに婿に出る(M3)、女CはCに残り、成人ののちBから婿を貰う。Dにて生まれる子はAに養子(M4)。以下この規則で子を婿が矢印に沿って周回交換される。女子は養女にとどまり1周回遅れてBに養子に出された男子を婿にとる。この男子はA女が生んだ子で、女子には母の兄弟の息子。交差いとこである。男子は養子と婿で周回2の先で女を嫁とする(4階層で社会を形成するAranda族などアボリジニ多くのの規則)。
Weil数式でこの子と婿の周回交換を
婚姻の形式=M1 M2 M3 M4
男子の婚姻形式 f(Mi)=M3 M4 M1 M2
女子の婚姻形式 g(Mi)=M2 M3 M4 M1
となる。これをパワーポイントで図式化した。

(参考図、前回掲載、4階層を婿と子(男女)が順に隣接支族に移動する様(一般化交換)が理解出来るかと)
第3の条件を提示する
(C)Tout homme doit pouvoir épouser la fille de sa mère.(男は母の兄弟の娘と婚姻を結ぶ)
Miから派生するf(Mi)とg(Mi)は周回が同様なので以下の式が成立する。
f[g(Mi)]=g[f(Mi)]
これを男子の方式と女子のそれは「一回遅れながら同じ周回の様を見せる」と単純に(勝手に)解釈します。数学での意味合いを知る方は異なる理解かと想像します。


(上の図は参考、前回掲載、交換の様を展開した)


上の上の図ではf[g(Mi)]=g[f(Mi)]が理解しにくいかと。そこで計算式の仕組みを上図に解説した。図の説明通りで婚姻M(a,b)で生まれる子の帰属先を(a+1,b+1)と決める。その数値がABCDの各アドレスと整合する。
そこで生まれた子の婚姻権(fonction)は男はf(a+c+1,b+c,c+1)、女はg(a,b,c)となる。cはその子がどのようにして貰われたか(水平は1、たすきは0)。f[g(Mi)]の意味合いはg母親の権利を息子fがどのように引き継ぐかの数字。g[f(Mi)]はf父親の権利を娘に。それらが合致=すれば交差いとこ婚が成立する。
階層あるいはセクションのアドレスを振り、婚姻Mを数字(a,b,c)での特定し、子の配属を計算式で決める。その子の婚姻権を同じく数値で決めて、男女を替える。すると父親の娘、母親の息子の婚姻権が数値化される。それが同等ならそのアドレスで婚姻する(男の婿行の地と女の婿とり地がおなじになる)。これがヴェイユ式の思想です。
今回例として4支族を取り上げたが、ヴェイユは8サブセクションで展開する。お楽しみを。

親族の基本構造第一部の補遺2 ヴェイユの証明 1 (2021年11月5日)了
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

親族の基本構造第一部の補遺ヴェイユの証明1 前文 

2021年11月03日 | 小説
APPENDICE A LA PREMIERE PARTIE
Sur l’étude algébrique de certains types de lois de mariage (婚姻規則についての考察、Murngin族の体系)
Par André Weilアンドレ・ヴェイユ
(2021年12月3 日)前文として :
数学者A.Weilアンドレ・ヴェイユが婚姻の仕組みを数式化した経緯を語ります。

パワーポイントで図表を作成した。本投稿においても活用する

章題の頁、André Weilの名が見える。
冒頭:
<En ces quelques pages, écrites à la prière de C. Lévi-Strauss, je me propose d’indiquer comment des lois de mariage d’un certain type peuvent être soumises au calcul algébrique, et comment l’algèbre et la théorie des groupes de substitutions peuvent en faciliter l’étude et la classification. (257頁)
訳:レヴィストロース氏の求めを請け幾頁かにしたためた本文において、私はとある一部族の婚姻規則が、代数計算を用いて説明できるか、そして代数学は代替する集団の法則をして、それらの分類と解析に如何に役立つかを試みた。
「代替する集団」と訳したが婚姻を通して個々の成員を交換する仕組みと見る。この仕組を持って(アボリジニの)婚姻の制度と理解する。ここでの部族はMurngin族に他ならない。


本書第一部は限定交換(L’échange restreint)、この部の最終章に数学者A.Weilが親族構造を代数学の手法を用い数値化し解析に成功している(本書257~265頁)。Weilに関してはスライドを作成したので参照あれ。

高等師範学校に入学するにはリセを卒業しなければ、多くは18歳(以上)、飛び級16歳は早熟天才を物語る。半ズボンで登校したのはリセ気分が残っていたからか、暑ければ半ズボンでとの合理性なのか。

紹介文末の「フェルマーの最終定理」とは350年間数学者を悩ませていた「予測」。この難問は「志村谷山Weil」の予測(1955年に公表)を解き明かせば、解決にいたると世のあまねく数学者に膾炙され1994年に解決に至った(英国ワイズ)。(Weilは志村谷山予測の価値を欧米の数学界に紹介した功績なので「志村谷山」予測とする場合も)。
Weilがなぜ親族構造に取り組んだのか。「親族の基本構造」にては論文を本人書名で掲載している。レヴィストロースは別著作で経緯を明らかにしている。婚姻の仕組みを「数学を用いて解析できないか」当時(1950年代)数学重鎮(カルタンと記憶)に相談を入れた。大御所は「心が絡む人の行動は数学で解き明かせない」と断った。Weilの知遇を得て打診し快諾を得た。以上を大まかながら記憶している次第です。Weilはアルザス出身のユダヤ系祖父を持つ。レヴィストロース祖父はヴェルサイのシナゴグの長老を務めるが出身はアルザス。地縁と人種のよしみが見事なコラボが生んだ背景かもしれない。

部族民(蕃神)は文系教育を受け数学は門外漢。今、生きるにして四則なる加減乗除をもっぱらとする算数原始で息を吸い込み吐いている。本補遺は大数学者の頭脳の結集としるからに、読みたしと思へど「執筆したのはフェルマー解決だぜ、分かる筈がない」忌避していた。
令和が3年は8月9月、武漢コロナの猖獗。首都圏緊急事態の宣言に怯えて自室に逼塞。朝から晩までヒマだった。目すら落としていないこの補遺を、眠気どころかあくびを殺し頁をめる。すると、代数学の論文にして数式が見当たらない。全9頁を流れるは文章のみ、慣れ親しんだフランス語、これには驚いた。その日一日、文章の字面は追いかけられたが中身を理解できない。翌朝はつとに、脳幹自爆の覚悟を決め、メモを脇に用意して机に向かった。数値を図式に落とし込んでみるとなんと驚き、理解できた気になった。
Weilは本書「親族の...」読者層は文系であると見抜き、数式羅列に乾燥する学術論文の様式を避け、もっぱら文言にて解説せむとの工夫が読み取れた。そうした気配りを感じてしまう文の優しさです。


手始めに4支族構成のモデルを想定した。これは本書で「Aranda 族モデル」とされます。子を隣接支族にわたす。その子が成長して男は婿として更に隣接に出る。女は自身が生まれた支族から婿を貰う。その婿も更に隣接からの養子。子と男が一方向で周回する。

数式f[g(mi)]=g[f(mi)] について。g(mi)は女が持つ婚姻権、その意味する処は「女は常に特定miの男を婿にできる」。f[g(mi)は男の婚姻権で男(婿)は特定の女のところに婿に出る。上図では女は養家に留まり男が一つ進む。f[g(mi)]は女の権利を男が代用、g[f(mi)]はその逆。それら両者は=であるとの指摘です。図式で見るとその仕掛けは一目瞭然。この機械仕掛け的婚姻の仕組みを8のサブセクションに展開するのが、本論文の骨組みです。



上図は既発表。展開を円にして子と男の周回交換を図式にした。

親族の基本構造第一部の補遺ヴェイユの証明1 前文の了
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

親族の基本構造の結語章11 心理学による近親婚禁止の批判4

2021年11月01日 | 小説
(2021年11月1日) 一方でフロイトには前向きの評価も与えている。
<Freud a parfois suggéré que certains phénomènes de base trouvaient leur explications dans la structure permanente de l’esprit humain, plutôt que dans son histoire ainsi, l’état d’angoisse…(563頁)
訳:時にフロイトは基礎的な「内象」を精神の基本部分から発生すると示唆する。例えば不安は…
この文の後に「自身が対処できる方策」と「状況が押し付ける圧迫」との拮抗から不安が発生する、乳児は状況への対応にあまりに無力なので不安を持つ(泣く)と続く。<L’anxiété apparaitrait donc avant la naissance de super-ego.故に、思いやりは超自我の生まれる以前に備わる(超自我はフロイトが主張した自然に芽生える道徳観念)。
<Comme l’a supposé Freud, la chose s’expliquerait les inhibitions entendues au sens plus large ( dégoût, honte, exigences morales, esthétiques ), pouvait être < organiquement déterminées, et occasionnellement produites, sans le secours de l’éducation>(564頁)
訳:フロイトが想定したとおりで、心の踏みとどまりの拡大版(嫌悪、恥、道徳、審美)は教育を受ける以前に生態的に規定され、時宜を得て発現するかと思う。
以上の引用例は心理の中で系統発生の環境で発生したものと、レヴィストロースが示唆している。それなりに人の心は「系統発生」を秘めているーと理解する。

一方で文化環境での心理形成にも言及する。
<Il y aurait deux formes de sublimation, l’une issue de l’éducation et purement culturelle, l’autre < forme inferieure >, procédant réaction autonome, et dont l’apparition se placerait au début de la période de latence ; >(同)
訳:精神の昇華には2の形体があるはずだ。その一つは教育の賜物で文化の範疇である。もう一つは「内部」に隠れ、それが深層に潜む初期から、自律反応として現れる。
<Ces audaces par rapport à la thèse de Totem and tabou, et les hésitations qui les accom-pagnent , sont révélatrices : elles montrent un science sociale comme psychanalyse – car c’en est une – encore flottante entre la tradition d’une sociologie historique cherchant, comme l’a fait Rivers, dans un passe la raison d’être d’une situation actuelle, et une attitude plus moderne et scientifiquement plus solide, qui attend, de l’analyse du présent, la connaissance de son avenir et de son passé. >(同)
訳:トーテムタブーの主題と比べると大胆な取り掛かりながら、ふと戸惑いに迷い、結果は裏切るものとなってしまった。Riversが展開した歴史学的論法は(空想の)過去を採り上げ、現在状況を解釈する進め方で、これをフロイトが踏襲したから、より近代的かつ確固とした姿勢で今の状況を分析しかつ未来過去にも論を及ぼす、この社会科学の主流との間を、精神分析は、これも一つの科学である、さ迷う様を見せてしまったのだ。

教育(文化)の成果の部分と人に自然に生まれてくる部分、それらの複層構造が心理とする指摘は、フロイトの説に向けられている。この考え方と、レヴィストロースの唱える婚姻制度は系統(自然)と同盟(文化)の峻別から端を発する、この教えは極めて似通う。しかしフロイトはその説を発展させていない。近親婚の禁止においてはRiversが採った歴史の観点から説明を進め、また精神全般ではontogénèse説を彷彿させる決定論に傾いている。

本投稿の冒頭<Totem et tabouの失敗は著者がその説を託した筋書きには程遠く、むしろ展開するに戸惑いを感じている事が起因である>とは複層構造の精神分析に一貫しなかったフロイトのéchec失敗を悔やむ一文として理解したい

親族の基本構造の結語章11 心理学による近親婚禁止の批判4(最終) の了 (2021年11月1日) 

お知らせ:先に本日(11月1日)にA.Weilアンドレ・ヴェイユによる「婚姻構造の数値分析」を数回に分けて紹介すると予告したが11月3日からとします。


婚姻の仕組みを数学で解き明かしたアンドレヴェイユ。フェルマーの最終定理を導く「志村谷山予想」を正しく評価したなどで著名。写真はネットから。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする