蕃神義雄 部族民通信

レヴィストロース著作悲しき熱帯、神話学4部作を紹介している。

食事作法の起源L’Origine des manière de table 10 周期、自然と文化 下 

2024年03月25日 | 小説
(2024年3月25日)「レヴィストロースはこの神話=M479 les Oiseaux -Tonnerres et leur nièce=は社会と自然の整合訴えている」が前回の最終行。さっそくその意味を考えてみよう。
ヒロインは「少女が一人眠りこけていた。精神は空っぽ。目が覚める、面倒を見る親はいない、生きていることのみをしった」。この少女は未成熟の女。これまでの神話では女は「成熟」した娘を語っている。成熟した女とは周期性(月経)を体現している。周期律の確立(転がる首神話)及び月の嫁神話(24年2月26日、3月4日にYoutube投稿)では、月の起源と月経との関連を通して、成熟した娘の行動を描いている。
さて、精神が空っぽの少女は目覚め旅に立つ、雷鳥の館にたどり着いて「養姪」として居着く。月の嫁に限らず多く神話では娘は「嫁」に迎えられるはずだが、姪に遇されるとは。

レヴィストロースは
« Les frères en font une nièce adoptive, « relation la plus hautement considérée et honorée ». En vérité, elle n’atteindra jamais l'adolescence, car elle sera transformée en grenouille, annonciatrice des pluies et du contour du printemps. La carence de l’héroïne permet ainsi le passage de la périodicité physiologique à la périodicité saisonnière » (294頁) 兄弟たちは彼女を養姪にすると決めた。考え抜かれ、特に名誉な間柄である。実際には彼女は成熟しない、いずれカエルに変身する。役割は雨と春の訪れを予告する。ヒロインとして不足する能力が身体の周期性を捨て季節の周期性を身に持つに至った。
このあと特異点は10であるにも関わらず、序列数詞は5しか用意されていない事実を伝える。
長兄をMûdjêkiwisと名付ける。その意味は « frère de tonnerre » 雷の兄弟、5番目は末子に扱われる « Pêpkitcise » 腹の大きなちびっこの意味。ほか3名にも数詞が記されるが割愛。

新大陸の用法とは10番目の末弟にはmédiateur(仲介者)なる神聖性格が被さる。10をして「plénitude, puissance, saturation充満、力、飽和」の意味を持つのに対して、Menomini族は5で止める。この意味をレヴィストロースは季節の交代と関連付ける。
Menomini族は冬の到来を告げる「山陵の積雪」(M475cで人食い9姉妹の髪に畳み込まれる雪玉)をみて、冬ごもり(hivernage)に移る。夏の住まいから南下する。そこでこの先住民は夏と冬、それぞれを5の節句に分けた。
(Menomini族が居住する(今の)ミシガン、イリノイ州。都市で言えばミルウォーキー、シカゴが知られる、冬の寒さは想像を超える。昨年(2023年)12月には寒波が襲いシカゴでマイナス40度を記録のニュースに接した。近郊の戸建住宅には必ず巨大な暖房機を置いた「地下室」が用意される。用途は厳寒期に避難するためだそうだ。以上は渡来部から仕入れた)。
« Pour chaque saison, le nombre de mois lunaires est égal à celui des doigts. La décade connote la plénitude : 10 mois font deux saisons et une année » (282頁) 各々の季節の月数は指の数に合致する。10になって充満する、すなわち10月が2季節、一年を意味する。5の兄弟の二組とは夏の5人と冬の5人。雷鳥と毛深蛇それぞれが2組の5人を形成し、一組5人には序列数詞が与えられる。
これが対立ではない周回2重螺旋意味と読める。


本書297頁挿図の解説


レヴィストロースはサラリと本章(Balance égale数合わせ)の結論を述べる。その一句は :
« Au sein même des mythes, la réflexion, prise en main par une dialectique péremptoire, s'élève de la parenté aux fonctions sociales, des rythmes biologiques au rythme cosmique, des occupations techniques et économiques aux gestes de la vie religieuse. Dans cet univers, c'est surtout la périodicité saisonnière qui retient notre attention, car ce motif, introduit par les 2 derniers mythes nemomini, permettra de résoudre le problème des décades » (295頁)これら引用神話の思想を探り手にすると(レヴィストロースがお披露目した解析手法のこと)、それは疑いもなく弁証法の論証を用いていると理解できる。すなわち親族を社会機能に進展させ(10人兄弟をして行動し、社会を変える)、生体の律動を宇宙の振動に(指の数が季節月の数、女と月など)、就業技術などをして信仰、儀礼に(=北米先住民、戦士と狩猟者、の執りしきる太陽ダンスの祭り、本投稿では説明を省いている)昇華させている。
この弁証法宇宙の中で最も注視するのは季節の周期性であろう。Nemomini族の2神話(M478と479、山陵の雪とカエルの鳴き声で季節を知る)が10の特異性を見事に説明するからである。

2神話は10の特異点に加え 1指の数と季節 2序列数詞(1~5)を重ねる数合わせの論理 3対極して抗争にもつれる(M475、10人の人食い姉妹)神話に比べると、退いた側(雷鳥が冬ごもりするなど)には別組の5を用意して、再度の席巻(カエルが啼いたら戻る)を待つ、破滅に至らず鋭意を養う周回の思想を取り入れている。 
食事作法の起源L’Origine des manière de table 10 周期、自然と文化 了 (3月25日)

補遺:一年は12ヶ月、10月は年をなさない。残る2月には季節代わりの闘争(雷鳥対蛇)が境目ごとに1月続くのだろう(レヴィストロースは消えた2月について何も語らない)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

食事作法の起源L’Origine des manière de table 10 周期、自然と文化 上

2024年03月22日 | 小説
(2024年3月22日)前回(3月20日)投稿で紹介した2の神話は10の特異点(バイソン婦人では12が特異点)に達した集団が外部に行動を起こし、世界を変える様を表す。同書挿図(297頁)の10の2集団の対立として図式化されている。こうした対峙をレヴィストロースは « polaire » 対極として必ず抗争を招くとしている。
神話学第2巻 « Du miel aux cendres » 蜜から灰へ 3 カエルの饗宴 (Warrau族伝承) でカエルが兄弟に伝授した秘術 « au lieu de viser l’animal, il tirait sa flèche vers le ciel et c’est en tombant qu’elle se plantait dans le dos du gibier » 獲物を狙うのではない、彼は矢を空にはなつ。放物を描いて獲物の背を抜くのだ。翌日から兄弟は獲物多数を担ぎ戻る(Blog掲載は2023年12月9日)。自然との対立を回避する « circulaire » 周回の弓箭術である。
同じ思想が北米先住民にも認められる。

M479 les Oiseaux -Tonnerres et leur nièce 雷鳥とその姪 Menomini族伝承

« Une petite fille endormie et dont l'esprit était complètement vide. Soudain, la conscience lui vint. Elle n'avait jamais eu de parents et sut seulement qu'elle était vivante. Elle se leva, regarda, s’étonna, parti à l'aventure. En apercevant une rivière, elle comprit dans quel sens coulait celle-ci et choisie de la remonter. Elle pensait que, quelque part, d'autres êtres devaient exister » 少女が一人眠りこけていた。精神は空っぽ。目が覚める、面倒を見る親はいない、生きていることのみをしった。起き上がり周囲を見回す。ともかく行動しよう。川を見た、水が流れる、上流に向かう。何処かにきっと誰かが住むはずだ。

« Un sentier la conduisit jusqu'à une longue cabane où un garçonnet l'invita à entrer et l'adopta pour sa nièce. Il expliqua qu'il était le plus jeune de dix frères, ses aînés allaient bientôt revenir de la chasse. Ils entreraient dans la cabane, l’un après l'autre, du plus âgé au plus jeune. Les frères firent bon accueil à la jeune fille et après avoir délibéré, ils décidèrent de la confirmer dans son statut de nièce adoptive, ils lui ordinèrent de se cacher la tête sous une couverture pendant qu'ils prenaient leur repas. Elle regarda la dérobée et vit que, pour manger, ils se transformaient en grands oiseaux au bec cuivré » 小道を辿ると細長い小屋に行き着いた。少年に歓迎され屋内に入った。ボクの姪にしてあげる。10人兄弟の末、兄たちは狩に出ていて直に戻ると伝えた。すると小屋に9人がまず長兄、次兄の歳の順に入ってきた。彼らも少女を歓迎し、一時話し合ってのち養姪として迎えた。食事を摂るときは頭を布で覆って見てはならぬと命じたが、少女は隙間から除く。兄弟皆は褐色のクチバシを持つ巨鳥に変身していた。

« L'automne arriva et les frères décidèrent de partir avant les froids. Mais qui prendrait soin de leur nièce pendant d'hivernage ? Ils récusèrent successivement le corbeau et la buse d’hiver, et acceptèrent l'offre de la mésange, qui était à cette époque un gros oiseau. Car la mésange est véridique, elle a une demeure bien chaude, elle amasse les brebis de viande et de graisse que les chasseurs abandonnent quand ils dépouillent le gibier » 秋が深まった、兄弟は寒気が訪れる前、すぐに出発すると決めた。しかし冬ごもりの姪子を誰が面倒見るのか。カラス、ノスリなどに声をかけて、四十雀が快諾してくれた。今でこそ小振りだが、かつては大きな胴と羽を持っていた。その巣は暖かく、少女に肉、脂身の破片を持ってきた。それらは兄弟たちが獲物を捌くときに剥がされた残りだった。

四十雀の巣には歓迎されない訪問者が訪ねる。決して言葉をかわしてならぬと少女は言い含められたが、まだ意識が固まっていないまま、うっかり一言を返してしまった。少女は気を失い「毛生えヘビ」に拐われた。

 « Le serpent velu, lui fit perdre connaissant et l’entraîna dans les profondeurs de la terre. Quand elle retrouva ses esprits, elle se vit dans une cabane allongée, assise entre un vieux et une vieille qu’entouraient leur dix fils les Serpents velus, qui s’apprêtaient à la manger » 少女は地下深くの洞穴に連れられた。そこで機を取り戻し(雷鳥屋と同様の)細長い小屋にいると知った。老人と老女の間に挟まり、10の「毛生えヘビ」に囲まれていた。彼らは少女を食べると構えていた。

« Pendant plusieurs jours, la vieille réussit à protéger la prisonnière, car elle avait peur des oncles de celle-ci. Enfin la jeune fille se rappela que les Oiseaux-Tonnerres lui avait promis de venir à son secours quand elle les appelait. Elle proféra les incantations sacrées, ses oncles l'entendirent et se mirent en route. Ils attaquaient avec la foudre la montagne rocheuse qui la gardait prisonnière. Nef serpents périrent ; seuls furent épargnés les vieux parents, et un de leurs fils qui avait fait preuve de compassion » 少女は老人には怖れを抱く、面倒を見ていたのは老女で、ヘビの攻撃からも守っていた。突然、雷鳥たちの言葉「危険が迫ったら助けを呼ぶのだ」を思い出した。変身の秘蹟を実行し雷鳥兄弟たちを呼んだ。助けに戻った兄弟たちは、少女を閉じ込めていた山の岩を持ち上げ、ヘビは撃ち払われた。老人老女はかろうじて逃げた。ヘビの末子は恭順の姿勢を見せた。
少女はアマガエルに変身した。


10と10が対抗していない周回の関係(本書279頁挿図)

こちらは10と10が対極して抗争する図。

これまで紹介した神話とこの神話の違いは ; 10と10の対極ではない、抗争はなかった。雷鳥が仕掛けたのは少女の救出であって、Hidasta族神話(バイソン婦人)などに見られる覇権の争いとは異なる。前出神話は社会の周期(成人兄弟が10人揃えば世の中が替わる)。本神話は季節の周期性と10の特異点を整合させている。

レヴィストロースはこの社会と自然の整合を295~298頁で論じている。次回にご期待を。

食事作法の起源L’Origine des manière de table 10 周期、自然と文化 上 了 (3月22日)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

食事作法の起源L’Origine des manière de table 9 数え方と周期性 番外

2024年03月20日 | 小説
(2024年3月20日)序列数詞の周期性を伝える2の神話を紹介;
M475 東の空の女たち les femmes du ciel oriental, Memomini族伝承 286頁
10人姉妹が空に住んでいた。それらは地上に降り、男をたぶらかしては心臓を食う悪習を続けていた。女の兄弟9人は餌食になっていた。
« Il y avait une Indienne seul au monde avec son petit frère, elle prenait soin de lui, et quand il parvint à l'âge de la puberté, elle l’isola soigneusement pour que les femmes cannibales ne puissent l'enlever. Mais les femmes arrivèrent, suivies par neuf amants captifs qui grelottaient de froid et mourraient presque de faim, tant leur maîtresse les mal-traitaient » 地上には女が一人、弟と住んでいた。その少年が年頃になってからは空の人食い女が拐かさないよう、気を配っていた。しかし女達は降りてきた。その後ろに9人の犠牲者が従うが、彼らは寒さに震え女主人の仕打ちに厳しさから死なんばかりだった。
末子は拐われる。妻に醜い女を選んだ。実はこの女は(最後に残ったのだから)最も若く美しかった。その上 « la plus compatissante » 思いやりに長けていた。末子は9人の男たちの蘇生に成功した。人食い女たちは男たちの心臓を居屋に隠していた。末子は妻からその秘密を聞き、取り戻し9人の男に返した。
« Le héros et sa jeune femme s'enfuirent. Les sœurs leur donnèrent la chasse. Il réussit à les distancer en cachant la jambe de l'aînée. Il retourna alors à la cabane et rassembla les neuf hommes, qui était frères » 末子夫婦は逃げる。姉達は許すまじ、追いかけた。しかし末子は(先頭で追う)長姉の脚を折って脱落させた。二人は居屋に戻って9人を集めた。実は男達と末子は兄弟だった。ここで10が揃った。
« Ils gravirent une paroi rocheuse au pied de laquelle ils contemplèrent les ossements entassés des précédentes victimes et parvinrent chez la mère des ogresses où celles-ci les avaient devancés » 兄弟は断崖に向かった。そこの穴には前の犠牲者の骨が残っていた。人食い女たちの母親を探し出すと、母親は前の犠牲者の心臓を差し出した。
人食い10姉妹の脅威は、末子の機転と妻の思いやり、さらに兄弟が10人揃ったので消えた。神話では「末子は兄たちに星となれと命じた」。男は西の星、女9人は東の空に移ったーで終わる。


昨夜みた夢の中でボクは線路に捨てられた、向かってくる電車をよけようと涙混じりに叫んでた~(谷川俊太郎風)。東の空を向く踏切夜景(日野市平山)。



M465 Hidatsa族 les bisons secourables 救いのバイソン(270頁)
あらすじ:ある日、村に小太りで醜い風体の男がふらり現れ、賭を挑発した。村人は受けて立つが負け続ける。バイソン婦人(la Bisonne)がこっそり「あの小男は太陽神の化け姿、武器をすべて巻き上げてから、手下の部族どもが村を攻撃に来て村の男すべてを殺す手はず」(村の長に)告げた。「乗っ取られる」頭を抱える村人に婦人は「一つだけ手がある」。やり方とは;若者達がすべての神(les dieux)を招待しふんだんな料理で饗応し、さらに彼らの若妻を伽に出すと。
早速、神々が呼ばれた。若者達はバイソン婦人に宴の執りしきりを願うが、婦人は表には出ず「一番の別嬪を与えるから」約束をとりきめ、企ての共犯に月を呼び寄せた。部族あげての神々への饗応が始まった、婦人は太陽に宴に入り込むよう、月を通し誘うが、疑いを払いきれない太陽は断る。宴もたけなわ3夜目、月が「お前に当てられる筈の新妻は別の神に渡されるぞ」と太陽をせかす。宴の館に近づき中を覗くも、太陽は入らない。
4夜目、太陽は館に入った。バイソン婦人が近づいて甘い言葉で誘う、お前と寝たいと « la Bisonne l’entraîna aussitôt en lui disant des paroles charmeuses. Elle voulait coucher lui, n’était-il pas le plus grand des dieux ? 尻込みするのか、お前は神々の中でも最も有力なのだろう。
« Soleil se sentit floué, car la Bisonne avait déjà été sa maîtresse. Mais, en ces circonstances, on n’a pas le droit de refuser. Et il s’exécuta, bien que ce retour aux anciens errements ne lui plût guère »(270頁)
「騙された」と太陽は気づいた。なぜならバイソン婦人はかつての愛人だったからだ。でもこんな状況、周囲は宴の真最中で宴はMandan族が神々に約束した「新妻夜伽の饗応」、昨夜に盗み見た状景とは私に回るはずの美形が月に抱かれじゃないか、に陥ったら突き進むしかない。
上引用中のerrementsは常日頃の(新味ない)やり方、間違ったやり方。否定的に用いられる。「腐れ縁」は強すぎて昔の「縒り」では弱いきらいが残る。「飽いた仲」。
バイソン婦人の甘い誘いを拒絶する手だてなどない、実行してしまった。焼け棒くいは拾わねば、据え膳食わねば。昔なじみの浮いた肌しみる入る汗の香が慣れし懐かし。腐れ縁の再現に喜びも籠もった。この気の緩みが太陽の大失敗。
« Et voici l’effet du coït : le pouvoir surnaturel de Soleil passerait aux Indiens » 婦人との交渉を通じて太陽が持つ超自然の力はインディアンに移った。
12の敵部族が太陽の息子に率いられMandan村に攻め入ったが、もはや太陽ご加護の神通力は無くなった。村人の反撃に屈した太陽息子、彼に率いられた12部族長が首は狩られた。バイソン婦人の機転がMandanを救った。
Hidatsa族は12の数字に特異点を感じている。12まとまれば強力となり、近隣に覇権を打ち立てられる。その強力を具現しているのが「小男の太陽」であり、彼が勢威を振るっている間は特異点の12の威力は消えない。バイソン婦人が小男太陽を誘ったのは、彼が秘める12の力を抜き取る手はずだった。
食事作法の起源L’Origine des manière de table 9 数え方と周期性 番外 了(3月20日)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

食事作法の起源L’Origine des manière de table 9 数え方と周期性 番外

2024年03月18日 | 小説
(2024年3月2月18日)昨日の投稿(神話学食事作法の起源L’Origine des manière de table 9 数え方と周期性 下、17日投稿)の一節 : 北米民族は多くが « décimaux » 十進法で数える。そこでは10が特異点。 神話は序列数詞で世界が語られる。長男長女…の呼称で10番目までを表す。本書では兄弟姉妹など特定列の序列数詞は紹介されていない(民族誌の原典にはこれら呼称が記載されているかもしれない)。
としたが特定列の序列数詞が引用されていた。その行は :
Les enfants menomini portaient ces titres par ordre de naissance. Le fils aîné avait droit au nom Mûdjêkiwis qui signifie « Frère des Tonnerres » et le dernier-né au nom Pêpakicise, « petit Gros -Ventre ». Mais ― et ceci est capital ― il n’existait que 5 termes ordinaux pour garçon (3 pour filles), soit, dans l’ordre : « Frère des Tonnerre », « Apres-lui », « Apres celui-ci », « Au milieu », « Petit-gros-Ventre » (295頁)
Menomini族の子は生まれの順番でそれらの称号を持つ。一番子はMûdjêkiwis、意味は雷の兄弟、最終子はPêpakiciseちびのデカ腹。そしてここが重要だが、5の序列用語のみを持つ(娘は3)。それらは雷の兄弟、その次、そのまた次、真ん中、そしてちびのデカ腹。
同族は10進法なので10の語列で起点(第一子)から10番目(末子)を命名しなければ基本数詞と序列数詞の整合が計れない。レヴィストロースは「10の特定語は多すぎるので、5にまとめそれを二回重ねて10の特異点を表した」。これは5進10進法(quinaire-décimaux)の手法で人体構成(両手の指の分布と総計)と整合する。また「チュウチュウタコカイナ」がなぜ5の掛け声(序列)で10を分離する仕組みとも整合する。


レヴィストロースは自然の周期を序列数詞の数進法で説明する。この番外投稿のあとにこの行(205~207頁)の解説を試みます(蕃神ハカミ)


我々日本人は10進法を加減乗除の基盤としている。これは1~10から10~20、100、1000~と延伸する。これは数量を求める数進体系である。しかし先住民は延伸ではなく累層、10を数えるに5+5、20を表すに10+10とする(根拠はないがそうした報告を多く目にする)。
レヴィストロースは序列数進法と10進法の関連を(彼一流の形而上手法で解説している205~208頁)その節に掲載される挿図をデジカメした。
またアイヌの数進法は「アイヌ語には、1,2,3,4,5を表す独立の数詞だけがあって、6,7,8,9,10を表す独立の数詞はない。アイヌ語の数詞体系は20進法(vigesimal system)と独特の5進法(quinary system)とからなり、メラネシア語の一部の数詞体系との類似は否定できないのではあるまいか。ネット数学の泉出典、坪谷」 番外の了

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

食事作法の起源L’Origine des manière de table 9 数え方と周期性 下

2024年03月17日 | 小説
(2024年3月17日)本章の主題(周期性)を語るに欠かせない「数進法」について。
 « On (Salzman) a proposé de classer les systèmes numériques en fonction de trois critères » (page277) ザルツマン氏(wikiで検索出来ず)は世界中の数進法を3の基準に設け、分類した。
1 constitution基本数進法。これは数を示す用語が還元 (termes irréductibles) できない部分と、派生(dérivés)される(還元できる)部を識別する進法である。すなわち10進法では1~10までは(還元できない)固有の語(イチニィサンシ…)がまずあって、10を超してから派生するジュウイチ(10+1)ジュウニ(10+2)が出てくる。単数詞を分化し還元できる。こうした数進法である。
2 サイクル。特定の数字が「折り返し点」となり、またも1から始める仕組み。イチニィ…は10で一くぐり。11~20と進む。日本語では11をジュウイチと云う、これは10+1に還元できる。フランス語では11をディス10(dix)アン1(un)とはせずonze(オンズ)と言う。onはun 、zeはdixの短縮に他ならない。以下12douzeはdeux+dix、13treize…、10を折り返しにして還元できる数詞が出てくる(Robertあたりの孫引き)。20になれば30に向かう、こうして理論として無限に数量が表示できる。1000兆円の国債発行残高とは1000兆円の「お金」が市中に出回っている意味です。 
3 オペレーションメカニズム。ニジュウニなる意味が実は20+2を表す意味を持つ。22番目の数字であるし数量として22(個、人、匹など)であることを保証する仕組み。足し算の原理をして序列を数量に移し替えたと理解すればよろしい。10進法に生きている我らは1~3を理解できる。
しかしこの説は « D’autres auteurs ont objecté que cette réforme laissait encore trop de champ aux interprétations subjectives » この立て直し作業(Salzman説)は主観的解釈の影響を残す(西洋思想の数理論)と幾人かの研究者(レヴィストロースも含む)からの反論を呼んだ。
« Dans le domaine de numérologie comme ailleurs, il faut déterminer l’esprit de chaque système sans introduire les catégories de l’observateur » 数進法においては、観察者の持つ定義づけを導入せずに、それぞれ(先住民の)システムについての「理念」を解明すべきだ。レヴィストロースは人類学の観察、報告を持ち込んで数進法を形而上的に、個が埋没する文化から離脱し、普遍性をもたせる数進法哲学を展開する。すると数字とは「概念と意味」の数列なのだ!となります; 


タコ娘のイメージ写真(ネットから採取)

1 数え方には2通りある。一は基本数詞(nombre cardinal)。これは「内包される概念concepts」による数え方、1からはじめて2、3、4へと進む。概念なる理由は数詞が数列に位置する順番と併せて数量「=概念」が含まれるから。2と言えば二番目であると同時に2個、2匹やら2枚との概念が含まれる。数列からその数を取り出しても概念は残る。5個、5匹などと数量を内包する。
2 もう一方は序列数詞(nombre ordinal)。この数詞は数量概念を持たないが、意味significationを内包する。ここでの「意味」を理解するに日本語に照らすと、序列数詞の「長男、次男」には兄弟一番め、2番めの意味が取り付く。特定序列の中でのみ位置(順番)の属性が帯びる。別の序列、例えばりんごの場合、最初の摘果個体を「長男」と云わない。またあくまで順番だから数量として一人(個)2人を言い表してはいない。「仕事が立て込んでいる=次男分=頭数を揃えてくれ」では通じない「二人分」の頭数と言うべき処です。
3 北米民族は多くが « décimaux » 十進法で数える。そこでは10が特異点。 神話は序列数詞で世界が語られる。長男長女…の呼称で10番目までを表す。本書では兄弟姉妹など特定列の序列数詞は紹介されていない(民族誌の原典にはこれら呼称が記載されているかもしれない)。人々は10の特異点を追求する。10番目をBenjamin(末子)として表す。成人した兄弟(姉妹)が10人に到達して、行動し世界が変わる(多くが消滅する)。別の世代が次の10を求める。この繰り返しが「数あわせ」となり、宇宙の周期を説明している(=前出)。
北米先住民の数え方にquaternaire四進法、quinaires5進法、dodécimaux 12進法、vigésimaux20進法など報告され、これらの数え方とSalzman説の食い違いを指摘する(エスキモの数進法)が、本投稿では10進法のみとする。
序列数詞をさらに詳しく ; 仏語辞典では例えば10 « dix » は基本数詞、10番目 « dixième » を序列数詞としている(前出)。日本語にもこの用法はありうるから基本と序列数詞の遣い分けをしていることになる。一方でこうした基本数詞の「形容詞化」を序列数詞と呼ばない(という説に接した)。北米神話で採り上げる10の数詞は「兄弟10人」「姉妹10人」など。原文(民族誌)では、特定の数列それぞれに固有数詞、日本語の長男(長女)、次男(次女)…末子(末娘)など序列数詞が1~10用意されていると聞く。


3人だからタコ娘と言うのは概念と意味の取り違え。

本書では長兄を « le plus ainé » と造句で表し、末子をBenjaminとする。(西洋では)この語は兄弟姉妹の末子を意味する。男女を区別せずに末子(末娘)。北米先住民は日本人と同様に、兄弟と姉妹を分ける。ゆえに本書でのBenjamin は10人兄弟の末子の意味。また姉妹の末娘にはBenjamineとせずla plus jeuneと造句を当てている、原典では末子と末娘の用語の違いがあったからと推測する。
かつて(3~40年前)日本にはチュウ、チュウ、タコ、カイ、ナの数取りが遣われていた。一の発声で2個体を摘み、最終ナで10を母体から分離する。20を分離したければ再度試みる。このチュウ...は序列数詞と言える。なぜならチュウ、タコなどは数の概念はない、順番の意味のみを持つ。数列から分離したら意味をなさない。リンゴをチュウ個くださいは買い物にならない。美人タコ姉妹など名指したら叱られる(美人三姉妹としっかり伝えるべきです)。
次回は数詞と周期を伝える神話を紹介する。

食事作法の起源L’Origine des manière de table 9 数え方と周期性 了 (3月17日)

追記 : そこでは10が特異点。 神話は序列数詞で世界が語られる。長男長女…の呼称で10番目までを表す。本書では兄弟姉妹など特定列の序列数詞は紹介されていない(民族誌の原典にはこれら呼称が記載されているかもしれない)。
としたが特定列の序列数詞が引用されていた。その行は :
Les enfants menomini portaient ces titres par ordre de naissance. Le fils aîné avait droit au nom Mûdjêkiwis qui signifie « Frère des Tonnerres » et le dernier-né au nom Pêpakicise, « petit Gros -Ventre ». Mais ― et ceci est capital ― il n’existait que 5 termes ordinaux pour garçon (3 pour filles), soit, dans l’ordre : « Frère des Tonnerre », « Apres-lui », « Apres celui-ci », « Au milieu », « Petit-gros-Ventre » (295頁)
(詳しくは2024年3月18日投稿の番外を参照)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

食事作法の起源L’Origine des manière de table 9 数え方と周期性 上

2024年03月15日 | 小説
(2024年3月15日)レヴィストロース « Mythologique » 神話学第三巻
食事作法の起源L’origine des manières de tableの紹介をYoutubeに投稿しています。最新は3月4日投稿の「La femme de Lune月の嫁」。ここでは食事作法が語られますが、同時に周期性を意識した物語となっています。第6部Balance Égale「数あわせ」(267~310頁)に移り、「数え方と周期性」の神話群が紹介されます。神話学紹介ではYoutubeにまず動画投稿の順番でしたが、今回から部族民通信の原点とも言えるGooBlogに投稿してのち、動画を作成すると換えました。
「数あわせ」神話群の共通主題は:序列と数量の特異点 « Plénitude » (意味は充満、達成だが特異点と訳す)を人々が目指す。10進法であれば10番目と10の数量(兄弟であり姉妹、族民の集合体など)。この10とは « la notion décade suggère la plénitude » 10の概念は特異点を示唆する288頁。これを達成し世界を変える先住民の意欲を神話に託しています。そして10に到達すると何らかの行動に入る。必ず「破滅」を伴いその族民は消えゆく。そして別の民が再び10を目指す。この繰り返しが周期性を生む。
代表的神話を引用:
M476 10の兄弟10の花嫁Fox族の伝承;
Le Benjamin de 10 frères part à la recherche d'une flèche perdue. Il reste 10 jours en chemin et reçoit chaque nuit l'hospitalité d'une famille qui lui offre une fille en mariage. « D'accord, répond-il, mais je n'ai pas le temps. Je passerais la prendre au retour » Il met ainsi une réserve, d'abord une femme, puis 2, puit 3. Jusqu'à 9. Parvenu au terme du voyage, il en obtient une 10e qu'il emmène. En revenant sur ses pas. Il lui joint successivement. la 9, la 8, etc. (289頁)


Fox族とされる人々(画)、ネットから採取

Benjamin (10人兄弟の末弟) に課された義務は「失われた魔法の矢」探し出し戻ること。探査に10日、帰還に10日の期限が認められた。一日探して近くの村に宿を借りる、宿先では主人に見込まれ「娘の婿に」を申し入れられる。Benjaminの答えは必ず「かたじけないお申し出、しかるにそれがし今は流浪の身、魔法の矢を探し出さねばならぬ、探し見つけた暁の帰り道には必ずや立ち寄ろう」これを10夜繰り返し、ついに魔法の矢を見つけ出し、帰り路は行きの逆で10掛けて10の嫁を引き連れて村に凱旋した。
引用神話では「10」が繰り返し出現する。10人兄弟、探索に10日帰還に10日、10人の娘、10人の夫婦。いずれの10も達成した後、世界を変える行動に出る。末子が成人して9が10の兄弟になって、10日を掛けて矢を探し10日で戻る。その間に10人の花嫁を連れて戻る。人々は10を見極め、その次に求める数は11、12に進まない。もう一つの10を目標にする。10と10との邂逅ではかならず闘争に陥る。引用神話では兄弟間の闘争、(皆は嫁をもらって家族になったはずだが)内輪もめで10の家族が崩壊する。
なぜ末子は他9人の恨みを買ったのか?


Fox族の居住地。5大湖の近く、今のシカゴ近辺だろうか(図はブリタニカ百科事典、ネット採取)

10の娘を10の兄弟にただ振り分ける作業では10 対10が成立しない。娘たちは出自家族がバラバラなので10人揃えても10の単位(特異点)を形成できない。このところをレヴィストロースは « paraître l’un après l’autre, et être présentes en même temps » 順々に現れるだけでなく、同時期に共にいなければーが10人組を形成しない。そこで末子が嫁に迎え彼女らを « totalisation » 10の単位に統合して後、兄弟で分ける。バラけている10を10人一組に集合化しなければ10兄弟と対抗できない « Elles ont d’abord été totalisées par un des frères, qui procède plus tard à leur détotalisassions » 。長兄には最も年上の老嬢(demoiselle trop âgéeドゥモアゼルトロパジェ) を与え、次兄にはその次と嫁を振り分け, 自身にはもっとも若く見目の良い娘(belle fille charmanteベルフィーユシャルマント)を残した。この采配は10単位の通則=序列の原則=、これが10と10の邂逅そのものだが、結局は兄達に嫉妬を引き起こす。長兄に率いられた9兄弟は末子を殺した。
これで ; 9という数字は不完全で、10を希求する。末子がようやく成人し兄弟10人が揃い « plénitude » 充満の特異を迎え、10人嫁が揃い新たな世界が発生した。にもかかわらず序列則(序列数字=後述)の理が災いして世界が崩壊した。10は永遠を保証せず破滅する。そして新たな10が生まれる。これを「数合わせ」Balance Egaleによる周期性とレヴィストロースが指摘する。
次回は本章の主題(周期性)を語るに欠かせない「数進法」に入ります。
食事作法の起源L’Origine des manière de table 9 数え方と周期性 上 の了 (3月15日)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

食事作法の起源4 Arapaho娘月に嫁入りYoutube 投稿

2024年03月04日 | 小説

レヴィストロース神話学の第三巻食事作法の起源L'Origine des manières de tableの4回目では舞台が北アメリカに移り、中西部の有力部族(だった)Arapaho族の伝承、「月の嫁」を採り上げます。


仲人はヤマアラシ、Arapaho族の居住域(左)


あらすじ:太陽と月は兄弟、そろそろ身を固めきちんとした生活(周期を保つ天空の回遊)に入ろうと相談。まずは嫁探し。太陽はカエルを求め月は人の娘を探しに地上に降りる。Arapaho娘を見初め、ヤマアラシに変装して娘を天空に誘く。嫁になるにはカエルとの食い競争に勝たねばならない。これに大勝利して(ポリポリの噛み音)無事に月の嫁の座を勝ち取った。本神話は天空と地上生活での周期性を語ります。食事作法の重要さ(食べるときの音立ての可否)を絡ませる秀逸かつ楽しい神話です(2024年3月4日)。


Arapoho娘 写真はネットから

動画の紹介資料(パワーポイントのPDF化)は部族民通信ホームサイト

WWW.tribesman.netで検索できます。

動画リンク
https://youtu.be/mHHnTJmIpZY


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする